
第97回米アカデミー賞で短編アニメーション賞にノミネートされた「あめだま」(西尾大介監督、英題:Magic Candies)を製作した、東映アニメーションの鷲尾天プロデューサーが4日帰国し、羽田空港でノミネート記念帰国取材会を開いた。
日本映画の同部門のノミネートは、02年「頭山」(山村浩二監督)、日本映画として同賞を初受賞した08年「つみきのいえ」(加藤久仁生監督)、14年のオムニバス映画「SHORT PEACE」の1篇「九十九(つくも)」(森田修平監督)に続いて4本目だった。イランの「イトスギの影の中で」(ホセイン・モラエミ、シリン・ソハニ監督)に受賞こそ譲ったが、鷲尾プロデューサーは「東映アニメーションの作品としては『ドラゴンボール』など、たくさんありますが、会社名としては浸透していないかもしれない。短編で取り上げられることで、世界に出て行けば新しい世界が広がるのではないか? と作らせていただいた。アカデミー賞のノミネートまでくることができた。良かったと思う」と意義を強調した。
そして、2日(日本時間3日)に米ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われた授賞式を振り返り「レッドカーペットを歩くと興奮する。自分が歩くと思っていなかった。フォーマルな格好をして歩き、エキサイティング異な感じだった」と熱っぽく語った。その上で「向こうの関係者から刺激を受けた。東映アニメーションの関係者は、もっと感じ取ってほしい。刺激を受けて、もっと世界の展開を考えていくべき」とも口にした。「具体的にこれは? というのは決まっていない。現地で、いろいろな方と話した。ノミネートされた作品、関係者の捉え方が重いんだと感じた。次、何やるんだ? と聞かれ…ビジネスにつながること含めやっていきたい」と今後に意欲を見せた。
「あめだま」は、児童文学界のノーベル賞とも称されるアストリッド・リンドグレーン賞を受賞した韓国を代表する絵本作家ペク・ヒナ氏の同名作品をアニメ化。コミュニケーションをとるのが苦手な少年・ドンドンが、不思議なあめだまを通じて心の声が聞けるようになり、初めて他人の心を理解し、自身の気持ちを伝えることができるようになる過程を描いた短編作品。
これまで、東映アニメーションは、人気漫画のアニメ化作品で米国をはじめ世界で人気を集めてきたが、そうした作品群と「あめだま」は一線を画す。
質疑応答で、これまで世界で作品が評価されてきた過去の積み重ねと、アカデミー賞の舞台に立ったことで感じた違いは? と質問が出た。鷲尾プロデューサーは「(海外で)評価いただいているのは、ありがたいし、ビジネスに結び付いている」と口にした上で「長い年月、続いている作品が多い。次の世代に、アニメを見る習慣を引き継ぐ。見て楽しい、新しいと思ってもらえる作品を作るのが挑戦」と今後目指すべき方向性を示した。そして「世界に、どう打って出るかは未知数。やらせていただいたことは、果たして見てもらえるか、のチャレンジ。次につなげるのが重要」と訴えた。
次世代の作り手の育成も、課題と挑戦すべきポイントに挙げた。「ネットワークと作品の知名度はあり、送り出した作品は世界で評価されている。そこをベースに、どうチャレンジしていくか、信用の上に進めていく」とした上で「イメージを持った方が、世界に出て行けるように一緒に作っていくことを考えていいのでは?」と語った。