2024年度の第29回「新藤兼人賞」授賞式が6日、都内の如水会館で行われ、河合優実(23)が主演した「ナミビアの砂漠」の山中瑶子監督(27)が金賞を受賞した。同監督は自ら脚本も手がけたが「私は、脚本が書けない。脚本を書いた新藤兼人さんの名前の賞はふさわしくないかもしれないけど、脚本部屋で書いた。新藤兼人さんは戦争を絶対に許さず、人間とは何なのだと考えて取った。私にはその気概が足りないので精進したい」と、ウイットの効いたスピーチで場内を沸かせた。
「ナミビアの砂漠」は、19歳で撮影した初監督作「あみこ」(17年)が、ぴあフィルムフェスティバル観客賞を受賞し、ベルリン国際映画祭(ドイツ)フォーラム部門に史上最年少で招待された、山中監督の最新作で本格的な長編第1作。主演の河合優実(23)演じる、世の中も人生も全部つまらない。やり場のない感情を抱いたまま毎日を生きている21歳のカナが自分の居場所を探していく物語。5月に世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(フランス)と併設して開催されたフランス監督協会主催の独立部門・監督週間に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞した。
山中監督は受賞について「とても光栄で、うれしく思います。今日は、プロデューサーに感謝したいと思います。今までお世話になったり、私が逃げたりしたプロデューサーの顔もチラホラ見える」と笑いつつ、感謝。「みんなで一丸となって映画絵を作るのが好きじゃないけど、バラバラでも作れるんだという、豊かなスタッフを集めてくださった」と、独特の言い回しで感謝を繰り返した。
新藤兼人賞は、日本映画の独立プロ57社によって組織される協同組合日本映画製作者協会が、本年度公開作品の中から将来性のある新人監督と、優秀な作品の完成に貢献を果たしたプロデューサーや企画者を選出し、授与する。
2024年度は、215作品が選考対象となった。受賞者には、正賞の新藤兼人監督デザインのオリジナルトロフィーと、副賞として金賞には賞金50万円とUDCast賞、銀賞には賞金25万円が贈られる。UDCast賞は、最新映画の字幕や音声ガイドを映画館で楽しめる無料アプリUDCastと、金賞受賞作のバリアフリー版制作が提供される。既に受賞作がバリアフリー化されている場合は、金賞受賞監督の次回作に提供。UDCastは、場面の説明をする音声ガイドやセリフや音の情報を入れた字幕など視覚、聴覚に障がいがある観客をサポートするアプリだ。山中監督は「あみこ」のバリアフリー化を希望した。