劇場アニメ『機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY』(監督:松尾衡)前夜祭舞台あいさつが24日深夜、東京・新宿ピカデリーで開かれ松尾監督、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』原作者の太田垣康男氏、音楽を担当した菊地成孔、小形尚弘プロデューサーが登壇した。
本作は2015年12月より有料配信されている『機動戦士ガンダム サンダーボルト』全4話に新作カットを加えたディレクターズカット版。『機動戦士ガンダム』の宇宙世紀0079に起こった暗礁宙域での地球連邦軍のイオ・フレミングとジオン公国軍のダリル・ローレンツを軸とした死闘が描かれる。
太田垣氏は『機動戦士ガンダム サンダーボルト』を描き始めた当時、劇場公開などは考えていなかったそうで、「こういう形になると思ってませんでした。きょうも1人感動してウルウルしていました。漫画の勉強をするのに映画をいっぱい観たんです。それが、こんなに大きなスクリーンで観れると思っていなかった」と、感慨深げ。
一方、劇中の音楽を担当した菊地氏は、2012年にTVアニメ『LUPIN the Third -峰不二子という女-』以来のアニメ業界から声がかかったということへ、「まさか俺になんでアニメの仕事が来るのかと思ったんです。でも、よく考えたらルパンはジャズベースなんで大丈夫かなと思って。それで数年経ってガンダムの話が来て。最初、ガンダムはいくらなんでもジャズベースじゃないだろうなと思ったんです。原作になんかの事情で、必要だから指名がきたんだと思いました」と、振り返る。
原作でジャズを入れたことについて太田垣氏は、「漫画を書くときに心情とかをセリフで言えないので、歌の歌詞だったりでキャラクターの心情を表現しようと思ったんです。それで、イオが先に決まって、ロックじゃないなと思ったんです。単純な発想でジャズになって、それに対比する形でダリルの方にはポップスを当てたんです。ジャズの曲名は読者でも知っている名前を使いたいと思ったんです」と、制作秘話を話す。
ただし、原作でイオが聴いていたジャズについては、菊地氏からアニメ化に当たりプレゼンをしたそうで、「相当に激しい戦闘だと思ったんです。その戦闘に見合うにはスイミーな感じだと合わないかなと思って、イオのジャズは原作にあるのはやめてフリージャズという戦争に合った凶暴な、皆殺しに似合うジャズもあるので、そういうのどうですかと松尾監督とかに聴いてもらったんです」と、勧めてみたそう。松尾監督も、「僕も原作ではジョン・コルトレーンと言われたんですけど、『これで戦闘シーンか』と、かなり不安だったんです。そのプレゼンでたくさんのCDを聴かせてもらって、ダリルとのコントラストが生きるからと思いましたね」と、菊地氏と思いが合致したそうだ。
そんな菊地氏へ松尾監督はオファーしたことへ、「ジャズの公演があったんですけど、先にあれを観ていたら、頼むのをちゅうちょするぐらいでした(苦笑)。厚顔無恥に頼んで良かったなって」と、敷居が高く圧倒されるものだったようだが、菊地氏は本作の話を受けた理由について、「本当は素敵な主人公が出てきて、マニアじゃないと分からない人間関係とかがあってと思っていたんです。でも、サンダーボルトにかんしては、私が昔から思っていた、戦争と音楽という問題とガッツリ違っていたんです。ですから、モチベーションは全然違いましたね」と、根底に流れるものに共感があったそうだ。
ほかにも、菊地氏は、「ジャズ業界はクールジャパンと触れる機会が少なくて、ルパンもガンダムもそうなんですが、普通のアルバムを作った時より200倍くらい取材の話が来るんです。普段ならアルバムを作っても、専門のジャズマガジン2冊に乗って終わりなんですけど(笑)」と、反響を語ることも。
最後に太田垣氏から、「観客のみなさんも、薄々もうお察し頂いているかもしれませんけど、あれで、この続きがないというのは絶対おかしいですよね?そうはいっても、ファンのみなさまの後押しがなければ、われわれがいくら作りたいと思っていても実現しません。みんなでこの祭りをさらに広げていくために、応援よろしくお願いします!」と、続編への期待と応援を呼びかけていた。
劇場アニメ『機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY』は25日より全国15館で2週間限定で上映!