【前編杉山潔プロデューサー ガルパン劇場版は夢の対決で「戦車映画のスパロボ」より】
監修話は続き、二宮茂幸氏が監修したというC-5Mスーパーギャラクシーについて杉山プロデューサーは、「監修のためにC-5のマニュアルをわざわざアメリカから買ったそうです。コンソールに表示されているものも忠実になっています」と熱の入ったものだそうだが、モデリングもほぼ完成したところで足りないパーツがあることが分かり、「ダメ元で(3DCG映像製作をしている会社の)グラフィニカに言ったら、直してくれた」のだとか。齋木氏は「グラフィニカは指示以上のクオリティアップを図りますよね(笑)」と、作り手の情熱が伝わってくるようなコメントも。
しかも、C-5Mスーパーギャラクシーに大洗女子学園の戦車が全部一気に乗るのかについて、杉山プロデューサーは「サイズ的には一応入るんです」とのことで、離陸できるのかへは、「計算したらしいんですが、燃料満載すると最大離陸重量を超えるらしいんですが、燃料満載しなければ離陸できると。空中給油機があればなんとかなる」と、現実に可能という結論も話していた。
劇中、継続高校が使っていた普段あまり見たことのないようなトラックが出てくるがこれにもネタがあるのだとか。中継車かなにかに見えたが、齋木氏によると、「戦時中1944年ごろにフィンランドのヘルシンキの路面電車の会社が使っていたトラックなんです。ゴンドラがついているのは、路面電車の架線を直すためのものなんです。民間のものです」とのこと。水島監督が写真を持っていて劇中に出したいという要望が鈴木氏にもあり調べることになったそうだが、齋木氏は「フィンランド人の方にも調べてもらって、フィンランドのインターネットサイトで“捜索願”みたいなのも出したらしいです」と、スタッフの本気度エピソードに観客は大爆笑だった。
本作に出て来る戦車はテレビアニメ版にも出てきたものも数多くあるが、画像素材がそのまま流用されたのかと思いきや、鈴木氏によると「全部作り直してますからねぇ。再監修してくださいって話が来ましたから」と、明かす。杉山プロデューサーによると「八九式のリベットの形状がテレビシリーズのときは五角形だったんです。五角形にした意味というのはレンダリング速度を稼ぐためなんです。一面増えるだけで、それだけレンダリング速度が落ちるので。それが劇場版ではちゃんと六角形に戻っているんです」と細かい部分まで手が入ったそうで、鈴木氏は「リベット増えてますよね!」と、ツッコミを入れていた。
さらに、杉山プロデューサーをシャーマン ファイアフライの作り込みに納得したという話があったり、チハと九五式の迷彩へのこだわりがあったという流れで、鈴木氏は「水島監督、知波単学園が好きなのか、気がついたらかなりの人数に名前ついてましたね。黒森峰を始めライバルチームもまだ名前ついてない子もいるのに」と、ぼやく一幕も。
トーク終盤には、作品のここはやりすぎではないかというテーマで展開。鈴木氏は「ありすぎますよね。1カット1カットにネタを仕込んでる。遊園地のシーンなんかは監督の夢が詰まってる」というと、杉山プロデューサーも「“作戦司令室”のシーンにはエニグマが置いてあるし」といい、吉川氏は「僕は背景に『杉山郵便局』があるのを見ましたよ」とのこと。
岡部氏からは「戦車マニアが話すようなことを実際映画でやっちゃうっていうのはずるいです(笑)」と言うと、本作の脚本を担当した吉田玲子氏のことにまで話が及ぶことになり、鈴木氏は「シナリオ会議の際、我々が話すようなミリタリー関連の話を吉田さんはずっと聞いてて、おいしいところだけをつまんでいくんです(苦笑)。」と、吉田氏の様子を話し、吉川氏が「結果として戦車マニアの夢になっていくんです」と、まとめる。
そんな吉川氏は、「戦車の動きが見ての通り素晴らしいんですが、とくにチハの突撃シーンでゴルフ場の坂を上がって行く時に、履帯だけじゃなくて、全部の転輪が微妙に動きながらしかも水平コイルスプリングが移動しているんです。テレビだと分からないかもしれないけれど、大きいスクリーンならはっきり分かる。あれを観ただけで、ただもんではないなとヒシヒシと伝わりましたよ」と、うなっていたそうだ。
ほかにも齋木氏が継続高校のミカが弾いていたフィンランドの民族楽器・カンテレを会場に持参し、『雪の進軍』の2小節を弾くなど盛りだくさんのイベントとなった。
いよいよ時間いっぱいになったが、4人の話題は尽きないようで、吉川氏は「もう少し監修したところについて話したかった」といえば、齋木氏も「上陸用シートの話をまだしてない」と、未練たっぷり。
最後に齋木氏は「ガルパンには人生に大事なことが詰まってます」と総括し、吉川氏は「こうやってガルパンにかかわらせて頂いたことがすごくありがたい。それだけ素晴らしい作品です」と、感謝を。岡部氏は「センチュリオンMk.1は強いし、ローズヒップはおバカだし、すごい楽しい映画でした」と感想を話し、鈴木氏は「スタッフのみなさんと、ファンのみなさんのおかげです。本当にありがとうございました!」と、お礼の言葉で締めていた。
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