
株式会社アクティオは5月29日、AKTIO Rensulting Studioにて「重機遠隔操作システムに関する記者発表会」を開催した。
同社は、建設業界の人材不足や高齢化問題が深刻化していること、働き方改革に伴う「建設業の2025年問題」への対応が求められている今、生産性向上と環境改善を図るために「重機遠隔操作システム」を開発。これにより、現場での作業効率の向上、危険な地域や立ち入り困難な場所での作業の安全性の向上を可能とした。

同システムの説明は、技術部の春原和宏課長が担当した。遠隔操作に使用した重機は、バックホーとキャリアダンプの2台で、山間部やトンネル内での作業を可能にするために、バックホーは0.14㎥、キャリアダンプは積載量2.5tのものを使用。特徴は「バックホーとキャリアダンプを切り替えて運転することが可能で、オペレーター1人で2台の重機を動かせます。これにより、施工性を高めています。そして、重機からの直接操作、遠隔操作の両方が可能です。この2操作を可能にする方法には『重機後方に油圧バルブを増設する』『ジョイスティックを動かせるロボットを座席に搭載する』。この2パターンです。油圧バルブの設置には手間がかかりますが、耐震、衝撃性に優れていることから採用しました」とした。

そして、今回のシステムの中では、通信と映像を最も重要視したとのこと。遠隔操作は、現地で直接見て施工することができないため、成り立たせるためには高速度での通信が必要不可欠だ。これを実現するために、衛生通信サービス「Starlink Business」を導入したと言い、「衛星通信なので、県外エリアでもインターネット環境が構築でき、これまで通信が難しかった山岳部でも遠隔操作が可能になります。
この点を見込み、採用しました」と説明した。この「Starlink Business」と、ソフトバンクが提供するSD-WAN(企業のネットワークをソフトウェアで管理し、運用を効率化する技術)を連携させることで「品質とセキュリティを確保したうえで、低遅延な通信網を確率することができました」と示した。

次に、映像システム。カメラは、ぶれ補正付きの同社製品を使用し、伝送にはジザイエ社の高圧縮映像伝送技術を使用。リアルタイムで高圧縮した映像をクラウドに送信する同技術により「低遅延で高画質な動画のやり取りができます」と解説した。さらに、遠隔操作席のモニターに映像を一画面で表示するのには、ジザイエ社が提供するリアルタイム遠隔就労支援プラットフォーム「JIZAIPAD」を用いていた。

実際に、直線距離956kmにもなる東京日本橋のアクティオ本社と、鹿児島姶良市にある同社の九州テクノパーク統括工場をつなぎ、重機遠隔操作実験を行ったそうで、結果については「低遅延の遠隔操作を実証しました」と明示した。
また、発表会では、千葉県市原市にあるアクティオ プラント営業課と中継をつなげ「重機遠隔操作システム」のデモンストレーションを行った。アクティオ本社から中継先までは約60kmだというが、バックホーを遠隔操作して木材やタイヤを掴み、車の荷台までスムーズに移動させていた。