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やさしい竹あかりが社会問題を考えるきっかけに 玉川学園×町田市の連携でイルミネーションイベントを開催


2023年12月2日から4日、東京都町田市の玉川学園において、イルミネーションイベント『竹あかりが息づく気づきの丘』が開催されました。このイベントは、放置竹林問題に関心を高める目的で行われ、伐採した竹を利用して制作された240本の竹筒が美しくライトアップされました。イベントを企画した玉川大学の田中敬一特別研究員は、竹筒内のLEDライトを使用し、少ない光量で幻想的な効果を生み出すよう工夫しました。また、イベントでは竹筒の制作を通じて学生にも環境問題への意識を促しました。町田市もこの活動に協力し、将来的な木材活用プロジェクトとの連携を期待しています。参加者は幻想的な竹あかりに見入り、イベントを通じて環境問題への関心を新たにしました。

12月2日から4日の3日間、玉川学園(東京都町田市)のキャンパス内で、イルミネーション点灯イベント『竹あかりが息づく気づきの丘』が開催されました。玉川学園への通学者や関係者に限らず、一般の方も自由に見学できる催しです。

240本の竹筒の光が彩るイルミネーション

キャンパス内の芝生広場に設置されたのは、240本の竹筒。夕暮れが近づく午後4時、穏やかな音楽が流れるとともに、それぞれの竹筒に明かりが灯り始めました。正面にはロウソクの炎が揺らめく映像が映し出され、竹筒の明かりもその映像と呼応するようにゆらゆらと揺れています。幻想的な光景に、前を通りかかった人たちも思わず足を止めて見入っていました。

本イベントは、近年様々な自治体で課題となっている放置竹林問題に着目し、玉川学園と町田市の連携によって開催されたものです。もともとはタケノコなどの栽培目的で植えられた竹が管理されずに放置されると、際限なく成長した竹の根元が腐って倒れたり、土砂災害を引き起こしたりするリスクがあります。

玉川学園の敷地内にも管理の行き届かなくなった竹林があり、伸びすぎた竹が遊歩道をふさいでしまうといった課題を抱えていました。「伐採した竹を利活用するとともに、放置竹林問題について学生や生徒にも考えてもらうきっかけにしてほしい」、そんな思いから、イルミネーションという形で展示イベントの開催に至ったといいます。

玉川学園 Tamagawa Mokurin Project と 玉川大学学術研究所(田中敬一特別研究員)は、社会問題化している放置竹林による災害に着目し、竹の植生をテーマにしたイルミネーション演出を企画。

竹あかりの演出を考案し、企画、制作、運用の指揮を執ったのは、玉川大学学術研究所の田中敬一特別研究員です。レーザーアーティスト、光・環境造形作家といった肩書きも持つ田中先生のもとへは、今年に入って学内からイルミネーション展示の相談、放置竹林問題の相談が同時期に寄せられており、2つを掛け合わせて展示する案を思いついたといいます。

「ちょうどその頃、町田市の農業振興課の方が市内の伐採された木材・竹材を活用するプロジェクトを実施しているという話をうかがいました。町田市と連携することで注目度も高まり、我々の活動の幅も広がると考え、協力を依頼しています」(玉川大学学術研究所の田中敬一特別研究員)

町田市では、2024年春から市内の里山の整備や道路の維持管理により伐採した木材・竹材を処分せずに活用する『「まちだの木」活用プロジェクト』という取り組みを実施中。特に今年は竹林の多い小野路地域の整備計画に力を入れているということから、田中先生と玉川大学工学部の学生、大学職員らも市職員と共に山に入り、放置竹林の竹の一部を伐採し、輪切りにする活動に参加。

一方、玉川学園の「Tamagawa Mokurin Project」では学園の敷地内で伐採された竹を工学部1年生が竹あかり用に加工する労作を行いました。工学部の学生延べ180人が参加し、竹筒を製作したそうです。設置された数本には小さな穴が開いて優しい光が溢れています。これは、玉川学園中学部の美術部Lab班が穴あけ作業をしたそうです。

イベントに参加していた町田市農業振興課の担当者は、「放置竹林という課題に対して、町田市内には竹の利活用を楽しみながら活動されている市民団体もいらっしゃいます。そういった団体や玉川学園と町田市が連携することで、たとえば学生さん発信のアイデアが生まれたり、新たな活動につながったりするのではと期待しています」と、今回のイベントを『「まちだの木」活用プロジェクト』の活性化につなげたいと意気込んでいました。

光害問題に配慮し玉川大学のミツバチ研究にも着目

午後6時ごろになると周囲はすっかり暗くなり、竹あかりのイルミネーションもさらにくっきりと浮かび上がって見えます。光源は竹筒の内側に一つ一つ設置したLEDライトですが、思わず目を細めてしまうような眩しさは感じられません。実はここにも、田中先生の工夫が詰まっています。照明の過剰な設置や配光によって周辺環境に悪影響を与える光害(ひかりがい)の問題についても考えてもらうべく、竹筒の中のLEDライトは、すべて下向きに設置しているそうです。

「LEDライトを上に向けて設置すればもっと明るくなりますが、極力上空には光を漏らさず、竹筒の中で完結するようにしています。240個という数も、一般的なテーマパークのイルミネーションで使用される何十万個ものライトに比べてかなり少量。いかに少ない光で人々に感動を与えられるか、ということも目標にした展示になっています」(田中特別研究員)

さらに驚いたのが、LEDライトの明滅とBGMが、映像の中のロウソクの炎と連動しているということです。田中先生は玉川大学が力を入れているミツバチの研究にも着目し、ミツバチの巣からとれるミツロウで作ったロウソクを赤外線カメラで撮影。その炎の明るさと音楽の信号を変換してLEDライトとつなげることで、炎・音楽・LEDライトを完全に同期させているのだといいます。

「一般的なロウソクは石油由来のため、火を灯しても炎の動きは安定しています。一方、ミツロウで作ったロウソクの炎は不規則に揺れる『1/f(エフぶんのいち)ゆらぎ』を有しているため、見る人への癒し効果を発揮することも期待できるのです。これは普段からミツバチの研究に力を注ぎ、ミツロウづくりにも取り組んでいる玉川学園ならではの演出ではないでしょうか。

私の専門は、環境問題や理科学的な分野ではなく、造形や芸術などのアートの分野です。一般の方に馴染みのない環境問題などの課題をデザインやアートで翻訳をするのが私の役目だと思っています。今回の竹あかりも、見た人が『わあ、きれい!』『これは何だろう?』と興味を持ち、立ち止まってもらうのが目的です。作品に興味を示した人が、その背景にある課題、事実にも目を向ける。そういう仕組みづくりをこれからも続けていきたいですね」(田中特別研究員)

イベント当日、学生や生徒、保護者の方が竹あかりの前を通りかかると「何これ、きれいだね!」と足を止める人が続々。写真を撮ったり、プロジェクトについて説明する学生の話に耳を傾けたりする姿があちらこちらで見られました。この展示をきっかけに、放置竹林問題を初めて知る人も多いのかもしれません。

一般公開は3日間で終了していますが、玉川学園に通学する学生や生徒の皆さん、先生方は年末までこのイルミネーションを楽しむことができるといいます。竹筒から漏れるやさしい灯りが、冬の寒さをほんのひととき忘れさせてくれそうです。

関連リンク:Tamagawa Mokurin Project

木の輪と人の輪をつなぎ、拡げることで未来の地球環境保全に貢献していきます。
https://www.tamagawa.jp/sdgs/article/detail_010.html

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