日本気候リーダーズ・パートナーシップ(以下、JCLP)は12月3日、気候変動による影響、日本の適切な「温室効果ガス排出削減目標(以下、NDC)」に関する緊急記者会見を12月4日、都内にて開催。
「『今、声をあげなければ』1.5度目標のための記者会見」と題された同会見。JCLP事務局長の松尾 雄介氏は「臨時国会が始まって、2035年の削減目標次第で、日本の脱炭素の方向性が決まってくる。非常に重要な目標です。トランプ政権が生まれることとなり、G7の中で日本語どのような方向性を出しえるか、世界が注目しています」と現状説明をし、「正直JCLPは、今の政策の決め方については改善が必要だと思っています。さまざまなステークホルダーの意見をしっかり聞くこと。残念ながらそこがまだ足りていない」と課題を示した。
この日は、建設業や漁業、農業、さらには保護者、アスリートなど気候変動の影響を受けている当事者が参加し、パネルディスカッションを行った。
戸田建設株式会社 代表取締役会長の今井雅則氏は、建設現場で着用する空調服にヘルメットを被って登壇。「今はイチョウが黄色くなって暑さを忘れがちですが、非常に熱中症が増えています。今年はこれ(空調服)を着ていても熱中症が発生して、死亡者が出ているという現実があります。夏場の暑いときは作業できないとなると、経済が止まってしまう」と話し、「自分たちの仕事をしながら、命も守らないといけない。(気候変動の)原因が何かわかっているんですから、みんなで行動していかないといけない。ぜひ現状わかっていただいて、皆さん応援をお願いしたいと思います」と呼びかけた。
神奈川県三浦半島・葉山で漁師をする長久保晶氏は、約10年前と現在の海の状況を熱弁。10年前はカジメやアラメなど海藻に頭を入れて漁をしていたというが、現在は冬場になっても水温が下がらない影響から水中生物の食欲が下がらず「食害」が起きているという。すぐに気候変動が収まったとしても「水温は温まりやすく冷めにくい」とのことで、「影響はどんどん出てくる。このままだと、わかめやひじきは相模湾からなくなるんじゃないかってくらい、本当に水温が高くて、本当に取れない状況です」と深刻な表情を見せた。
山梨県北杜市で農家をしている株式会社ファーマン代表取締の井上能孝氏は、気候変動により白菜に軟腐病、大根に空洞症が発生しているといい「農業を始めたのは2000年ごろで、23年農業に携わってきました。有機栽培で野菜を育てており、農薬や化学肥料に頼らずとも軟腐病を見かけることはありませんでしたが、これが初めて確認されました。大根は外側からは(空洞症の)判断がつかない。こういったものが、畑全体の2割に発生したら出荷を取りやめるんです。収益に直接影響が出てきます」と語った。
Jリーグ サステナビリティ部 部長を務める入江知子氏は、この日は2児の母という立場で出席。暑さの影響により、子どもたちは満足な外遊びができておらず、スポーツの現場でも暑さによる被害が出ているそうで「子どもがスポーツに夢中になったり、自由に遊べる場所が本当に少なくなっています。こういった現場を少しでも知っていただければと思います」と述べた。東京科学大学教授で医師の藤原武男氏は「気候変動は子どもの健康を脅かすものであると認識いただきたい」とし、「2100年くらいには4度上昇してしまい、そうなると日本の喘息で入院する子どもの数は推定で4倍になるということがわかりました。こうなると、コロナで経験した医療崩壊です。残念ながら命を落とされる方もいます。こうした事例を踏まえて、自分ごととして認識していただきたい」と言葉に力を込めた。
長野県野沢温泉村出身でプロスキーヤーの河野健児氏は、野沢温泉スキー場の現状を「30年以上、毎年雪の上に立ち続けていますが、ここ10年くらいは、顕著に雪が減っているなと。2020年はハイシーズンだけどメインゲレンデに雪がつかなくてスキーができないってこともありました。野沢温泉の合言葉は『スキー場が潰れたら村が潰れる』。それくらい雪に依存しています。雪がなくなることで我々の生活に多大な影響があります」と説明。
野沢温泉観光協会会長の立場から、この問題にどのように向かっていくか聞かれた河野氏は「水資源が豊富なので、2025年4月から水力発電で野沢スキー場メインステーションの電気を補う」と答え、さらに「北海道新聞と長野の信濃毎日新聞に『雪がなくなったら全員負け』という広告を出しました。スキー選手だけじゃなくて、そこで暮らす人達が生活できなくなってしまうっていう危機感があるので、こういった形で発信させていただきました」と取り組みを口にしていた。