
『鉄コン筋クリート』(06年)『海獣の子供』(19年)『映画 えんとつ町のプペル』(20年)など、これまで数々の名作を世に送り出してきたSTUDIO4℃の最新作『ChaO』が絶賛上映中です。
最新作で描かれるのは【種族と⽂化を超えた恋と奇跡の物語】。オリジナルアニメーションとなる本作では、絵を1枚1枚描く⼿描きアニメーションにこだわり、圧倒的な作画量と斬新な処理の背景美術で、瑞々しくもかわいく⼈間と⼈⿂の恋模様を描きます。
本作でシー社長を演じた山里亮太さん、ネプトゥーヌス国王を演じた三宅健太さんにお話を伺いました!
——『ChaO』楽しく拝見いたしました!とても独特でカラフルな世界観ですが、収録前にはどの様な準備をしていましたか?
三宅:最初に台本をいただいた後は、「ここの演技はこういう方針です」といった資料をもらいながら収録していました。
山里:僕もまずは台本をいただいて、シー社長というキャラクターをやらせていただくことは後で知ったのですが、やはり声優さんはそうやって演技プランなどを渡されるのですね。僕にはもうそんなプランの様なものはありませんでしたので。
三宅:いきなり雑談を入れてしまいますが、僕たち同い年なんですよね。
山里:1977年生まれで全く一緒なんです! 僕にはこんな(三宅さんの様な)威厳なんて出せないので憧れます。
三宅:いや、実は僕は山里さんが羨ましいんです。山里さんのシー社長の声を聞いた時に、上手すぎて感動しました。
山里:ええっ!嬉しいです。
三宅:資料の段階で、「アニメキャラクターへの(芝居の)当て方よりも生身の人間のお芝居をして欲しい」というオファーがあって。我々って長らく声優の声のアプローチから入っている身なので、アニメならではセリフの節みたいなものがどうしても出ちゃうんですね。そこを抑えてリアルに演じて欲しいということで悩んだのですが、完成した作品を観て、山里さんのシー社長の声を聴いたら「これが正解なんだ」とビックリしました。
山里:もう、本当に恐れ多いです。三宅さんは作り込むことが出来る人だからこそ、作り込むか作り込まないかという選択肢が出てくると思うんですよね。僕は今回こんな素敵な作品に呼んでいただいて光栄なのですが、上手に出来ない劣等感もあって。アニメーションのお仕事をやらせていただくと、「アフレコって命を吹き込むことなんだな」と声優さんに毎回教えてもらうんですね。本当にそのキャラクターが生きている様に声をあてられているので。なので、僕の場合はとにかく邪魔したくないっていう。せっかく面白い作品なので邪魔したくない一心ですね。
三宅:僕は、こうして様々なお仕事の方とご一緒する時は新鮮なものを吸収したいという想いでいます。山里さんは、“間”をすごく熟知されているわけじゃないですか。とても面白いトーンで良い間で入ってくるので、勉強になるなあと思っていました。
山里:ツッコミ的な要素だったら、入れるタイミングとか、ここはこのぐらいのボリュームにしようということは学ぶ機会が多いので、唯一、外部から来た人間のお役に立てる所かなと思いますね。すみません、何か同い年のおじさん同士で褒め合っちゃって(笑)。
三宅:すみません(笑)。僕は声に特徴がある方ですが、だからこそ嘘臭く聞こえる瞬間もあるんですよね。デフォルメではなくて、でもしっかりキャラだちさせるということが難しいんですよね。自然な声に人生観がそのまま乗るって、実はすごいことなんですよ。以前洋画の吹き替えでご一緒した加藤浩二さんにも驚きましたが、山里さんも本当に素晴らしかったです。


——皆さんのお芝居で個性がさらに際立ったキャラクターたちが、美しいアニメーションによって動いていきますが、完成した作品をご覧になっていかがでしたか?
山里:アフレコしている状態から、空白の時間がありつつも、ワクワクする映像が広がっていて。完成したらどんな作品になるのだろうとドキドキしていました。観たことの無い世界がずっと続いていって、飽きる時間が無いんですよね。
三宅:画の作り方自体も予測がつかないんですよね。デザインも独特ですし。アニメーション作品であり、すごく映画しているなという印象でした。
山里:絵本とかのカラフル感にも近い部分があって、大人たちは次々出てくる個性的なキャラクターにビックリすると思うのですが、子供たちは案外スッと入っていく世界観なのかもなと思いました。
——STUDIO4℃の映像技術が素晴らしく出ている作品だなと思いました。
三宅:以前『ベルセルク』(2012-2013、三部作)という作品でSTUDIO4℃さんとご一緒したのですが、映像も音楽も本当にクオリティが高くて。そしてアフレコではすごく自由にやらせていただいた印象がありました。意外と、ここまで自由にやらせていただくことって少ないんですね。でも、ヴィジュアル面をすごくこだわられているから、絵の通りのディフォルメを効かせるとかえって合わない。絵だけで説得力があるので、「なぜこの表情に行き着いたか」というバックボーンをしっかり考えないと、くどくなったりテンポが悪くなってしまうんです。とても楽しい現場なのですが、油断出来ないという部分もありますね。
山里:僕が言うと少し意味が変わってくるかもしれませんが、『鉄コン筋クリート』(2006)がすごく好きで。「演じていてすごく楽しいスタジオさんだった」というお話を元々聞いていたんです。スタッフの皆さんが作品を愛していて、たくさんのこだわりを持ってお仕事をしている中で、良い声が当てられた時の達成感がものすごいと。「自分たちの作るものに対してものすごく愛があるチームだから、アフレコに呼んでもらって関われることってすごく幸せなことだよ」と言われて送り出されました。僕はアフレコのスキルが無いから心配な部分もありましたが、「あまり聞いたことが無い声だから大丈夫だよ」と言ってもらえて、少し安心しました。

——たくさんの方の愛が、キャラクターの愛らしさにも滲みでていますよね。
三宅:シー社長ってすごく根がイケメンなんだろうなって思いましたし、好きなキャラクターです。そして、我が娘のチャオが本当に可愛くて。ステファンを驚かせるシーンとか、表情の可愛さが素晴らしいんです。ちょいちょい面白いアドリブが入っている様に感じられましたし、よくこんなに良い子に育ったなあと思っていました(笑)。
山里:チャオとステファンのデートの援護射撃をするシー社長は、僕が演じさせていただいた身ですが、良いキャラクターだなあと思いました。
三宅:バラエティで見る山里さんのリアルを見ているようで面白かったです。裏回しを頑張っている山里さんみたいな感じで。ぜひ、また山里さんの声のお芝居を拝見したいですね。ちょっと古い映画になりますが、『ブルース・ブラザーズ』(1980)の吹き替えとかピッタリだろうなって。
山里:いえいえいえ、もう本当恐れ多いです!でも嬉しいです。姿が出る方の芝居はもう諦めていて。昔、大根仁さんに「芸人は演技が上手いか下手か真っ二つに分かれる。お前はダメな方だな」と言われたことがあって(笑)。また声のお仕事をやらせていただくことがあれば、今日三宅さんに褒めていただいたことを思い出して頑張ります。
——今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!
撮影:たむらとも
(C)2025「ChaO」製作委員会