
旅先でお手伝い(短期アルバイト)をするというマッチングサービス「おてつたび」をご存知でしょうか?
旅先の地域事業者は人手不足解消に、旅行者はお手伝いで得るアルバイト代を旅行費用に充当と、スポットワークの旅版として注目を集める株式会社おてつたびの広報、園田稚彩さんに詳しい話を聞いてみました。

ーーおてつたびというサービスの仕組みを簡単にご説明いただけますか?
園田:「おてつたび」は「お手伝い(短期アルバイト)」と「旅」を組み合わせた人材マッチングサービスです。人手不足に悩む地域事業者と、働きながら旅を楽しみたい旅行者をマッチングしています。
旅行者は、現地までの交通費は自己負担となりますが、旅先で働くことで報酬を得られるため、旅行の経済的負担が軽減できます。また、地域の人々との交流を通じて、より深く地域の文化や暮らしを楽しむことができます。
地域事業者は、全国各地からの働き手を集めることができ、働き手が休日や空き時間に地域を観光し、SNSなどで魅力を発信することで、地域経済の活性化と新たな関係人口の創出も期待できます。
こうした多様な働き方へのニーズの高まりとともに、近年では短期・単発の働き方「スポットワーク」への関心も急上昇。デジタルプラットフォームの進化によって、必要なときにすぐ仕事と人材をマッチングできる環境が整い、企業にとっても柔軟な人材確保手段として浸透しつつあります。
おてつたびは、こうした流れの中でスポットワークの「旅版」として、単なる人材マッチングにとどまらず、地域に人が流れ、文化が交わり、新たな価値が生まれる仕組みを提供しています。

ーーおてつたびを利用している登録者はどういう人が多いのでしょうか?
園田:2021年に5000人だった登録者数は、2025年7月29日現在で8万2000人に増加しています。参加者の約半数は10代~20代のZ世代ですが、近年では早期退職者や子育てを終えた主婦など、シニア層の利用も拡大しています。
その背景には、物価高騰などによる旅費負担の増加で、より低コストで旅行を楽しみたいと考える人が増えていることや、テレワークやワーケーションの普及により、働き方や住む場所の選択肢が広がったこと、加えて、地方移住への関心が高まり、お試し移住として利用する人も増えていることが、利用者の拡大につながってると考えられます。
人生100年時代と言われる中、新しい働き方や生き方を模索する中高年層の増加や、経済的自由を得て早期リタイアを目指すFIRE(Financial Independence, Retire Earlyの略語)への関心の高まりも後押しし、おてつたびの利用者層は若年層にとどまらず、シニア世代へも広がりを見せています。

ーーおてつたびで人材募集している事業者はどういったところが多いのでしょうか?
園田:登録事業者数は2000件を突破し、ホテルや旅館などの宿泊業や、農業・漁業などの一次産業が中心ですが、最近ではカフェや飲食店、キャンプ場、酒造会社、水産加工など、多様な業種に広がっています。特に地方は、都市部よりも人手不足が深刻化しています。
おてつたびでは「旅の価値」を訴求し、時給だけでなく地域ならではの体験を付加価値として提供することで著名ではない地方(中山間地域)でも応募が集まります。
地方では都市部ほどの時給を提示できない課題がありますが、「募集の背景」や「地域のおすすめスポット」を掲載し、地域独自の魅力を伝えることで人材確保を可能にしています。
また、相互レビュー機能を導入し、参加者と受入事業者が互いに評価を行うことで信頼を担保。地域外の人に仕事を頼む心理的ハードルを下げ、マッチング精度を向上させています。
登録事業者数の多い都道府県は、1位が長野県(185事業者)、2位が静岡県(130事業者)、3位が北海道(125事業者)ですが、地域というよりも「期間が短い」「レビューの評価が高い」「賄いが出る」などの条件に当てはまる募集が人気です。
ーーおてつたびでお金を稼ぎながら旅から旅へと渡り歩く登録者もいたりするのでしょうか?
園田:はい。キャンピングカーで車中泊をしながら、全国でおてつたびをしているご夫婦もいらっしゃいます。休学中に日本一周したいと利用する学生もいらっしゃいます。
ーー登録者と事業者の間でトラブルになることは?
園田:繫忙期や人手不足で困っている地域の方のお仕事をお手伝いしながら旅をするのがおてつたびです。忙しい時期のお仕事のお手伝いは大変なことも多いです。遊び半分ではなく、お金をいただいての仕事である点を肝に銘じて参加いただくことが大切です。
マッチングしてから「思っていたのと違った」でトラブルにならないよう、募集要項や体験者レビューはきちんと読んで把握しておくことも重要です。
人と人なので、人間関係でそりが合わないといったこともあるかもしれませんが、地域や事業者の文化や考え方もあるので、柔軟な姿勢も必要になります。
ーー登録者と事業者双方から寄せられる不平・不満は?
園田:求人情報をしっかりと確認せずに申し込みをしたことでミスマッチになることが過去にありました。
事業者からの不満の声として、参加者が観光気分で参加してしまい、事業者にとって十分な成果・働きをしていただけなかったということも過去にございました。そのため、サービス申し込み時に「仕事である」ことや「労働条件の確認」をお伝えしております。
ただ、こういった事例は少なく、84%以上の事業者様には「人手不足を解消できた」と高評価をいただいております。
ーーどうもありがとうございました。

園田さんは「日本は今後ますます人口減少が進み、とくに地方は人手不足が深刻になります。地域産業を持続させていくためには、人・お金・想いの循環が不可欠です。おてつたびは、旅をきっかけに人が地域を訪れ、交流し、その地にお金や関心、愛着が生まれる社会を目指しています」
「ただ働きに行くだけではなく、地域の人とふれあい、暮らしに触れるという体験が、訪れた人の心に残り、やがて”関係人口(特定の地域に継続的に関わる人々のこと)”となって地域に帰ってくる。そんな新しい旅のカタチを、私たちはこれからも広げていきたいと考えています」と、最後まで熱く語ってくれました。
おてつたび公式サイト
https://otetsutabi.com/[リンク]
※画像提供:株式会社おてつたび
(執筆者: 6PAC)