世界で初の長編アニメーション中⼼の映画祭として、また多岐にわたるプログラムとアジア最大のアニメーション映画祭として、漫画・アニメの クリエイターを数多く輩出してきた“アニメーション首都”新潟にて⾏われる新潟国際アニメーション映画祭。 第3回新潟国際アニメーション映画祭が2025年3月15日（土）より開催されます。
第2回では前回を大きく上回る延べ2万4000人が参加、早くも大きな成長を遂げました。世界から注⽬されるなかでスタートした長編に(スペース詰め)フォーカスした国際長編コンペティション部門は、アニメーションのトレンドを先取りした作品ばかりです。 第1回に押井守審査委員長のもとグランプリとなった『めくらやなぎと眠る⼥』は、2024年6月に日本公開され大変な話題になりました。 第2回ではアイルランドの著名なスタジオ、カートゥーン・サルーンからノラ・トゥーミー監督が審査員長として初来日するなど、世界から多くの映画人が集結。
第3回も世界と日本、そして制作者とファンをつなぐことを⽬指した充実のラインナップとなっています。本映画祭の見どころを、フェスティバル・ディレクター 井上伸一郎さんと、プログラムディレクターの数土直志さんに伺いました！
――いよいよ開幕が近いですが、まずはどんなところに注目していただきたいですか？
数土：コンペティション作品が12本あるのですが、その中から10人の監督の登壇を予定しています。他の2作品の監督も本当に来たかったけど残念ながら叶わずでした。映画を観た後に、その映画を作った人が制作秘話について話してくれて、Q&Aで質問も出来るということは映画祭の醍醐味ですので楽しみにしていただきたいです。
井上：昨年も、上映後に劇場内にあるスペースで、監督やプロデューサーと観客がやりとりしている光景をたくさん見ました。そういう意味でとてもフレンドリーな映画祭だと思いますので、他では出来ない体験をしていただきたいです。
――コンペティションも各国から個性豊かな作品が集まりましたね。
井上：どの作品もとても楽しみにしているのですが、ドミニカ共和国の『オリビアと雲』はどの様な作品になっているのか気になりますね。
数土：今、世界中で長編アニメを作り始めているのですが、長編アニメに特化した映画祭はなかなか無いんですよね。先日エジプトに行ったのですが、中東で長編アニメは歴代で8本しか作られていないと言われました。映画祭で『サリーム』というヨルダンの作品を上映しますが、それがそのうちの1本なのかもしれません。
意外だったのは台湾でもアニメの長編映画は年に1,2本しか作られないそうです。その代わり短編作品で素晴らしいものが多いので、ぜひ日本の学生さんに観ていただきたい！『魅力の島：台湾の民間伝承と神話に基づく短編たち：台中国際アニメーショ映画祭特集』という特集もありますので、ぜひお越しください。
井上：コンペについては、作品選びの段階で皆さん熱い議論を交わされて。泣く泣く選ばれなかった作品もたくさんありますし、そのぐらいレベルの高い作品が多いということですね。1つ意識したのは、色々な地域の作品をバランス良く取り入れることです。日本からもすでに評価のある作品がコンペに出ていただいたのは大変嬉しいことですよね。
――とても豪華なトークショーも予定されていますよね。
井上：『イノセンス』が公開から20年ということで、Production I.G の石川光久社長とセッションをやらせていただきます。『イノセンス』は当時の3DCGの最先端の表現をされていて、そこから現在の20年間の進化を石川さんがどうご覧になっているのがかすごく聞いてみたいです。『イノセンス』公開当時は「3DCGでアニメーションを作る」というだけでニュースになっていましたからね。
数土：アニメーターの川元利浩さんとトークがあるのですが、僕は元々大ファンなんです。今回『カウボーイビバップ 天国の扉』、『Bones 25_ Dreaming Forwards』の上映もありますので依頼させていただき、実現して本当に嬉しいです。作品を語るというよりは、「アニメーターってとっても楽しい、魅力的な仕事なんだよ」ということが観客に伝わるトークにしていただきたいとお願いしたんですね。
井上：それは素晴らしいですね。
数土：人の手からこんなに素晴らしいクリエイティブが生まれるんだ！という感動を感じでていただけたら嬉しいです。
――レトロスペクティブ 【今 敏監督 特集上映】もとても楽しみですが、お2人と今 敏監督の関わりをお聞きしても良いでしょうか。
井上：最初に観たのは『パーフェクトブルー』（1997）で、拝見した時にすごくビックリしました。当時最高の作画というか、今ではアイドルグループのステージ表現はかなり進化していますが、当時は「歌って踊る表現をこう描くんだ」と驚きました。本編も、映像的叙情トリックで素晴らしいのですが、まずはアニメーション表現に驚きましたね。
数土：今さんの作品はどれも好きなのですが、あえて一つ挙げるとすると『東京ゴッドファーザーズ』（2003）には逆の意味で驚きがありました。今までの今作品はすごく凝った作りをしているものが多かったと思うのですが、『東京ゴッドファーザーズ』はストレートでとておも良い話で。こういうファンタジーなドラマを描くことまで出来るなんてと驚きました。
井上：演出が素晴らしいので、観た人が絶対に忘れることの出来ない映像を作ることの出来る唯一無二の作家さんだと思います。
数土：映画好きの方に人気ですよね。映画からのモチーフの引用が多かったり、逆に、洋画にも今さんのエッセンスが入っていたり、影響は大きいですね。
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【#レトロスペクティブ】
「今 敏」特集が決定！
＼今年は、夢と現実の境をたゆたうようなアニメーション表現で見るものを虜にし、今でもその作品が世界に大きな影響を与え続けている【今 敏】を特集！その業績と魅力を振り返ります。
▼ラインナップhttps://t.co/z00TCFF9y5#NIAFF2025pic.twitter.com/9D7zoUNmuH
—新潟国際アニメーション映画祭 #NIAFF (@NIAFF_animation) December 24, 2024
――本当にそう思います。そのほか、今回の映画祭ならではのオススメのポイントはありますか？
井上：個人的には、僕も以前編集長をしていた『月刊ニュータイプ』の40周年記念ステージです。何を話そうか今考えています。大まかにはアニメ映画をこの40年間どんな視点で見てきたのか、というトークになると思うのですが、こんなにアニメの存在感が大きくなって、年間売り上げ3兆円以上の産業になっていることに驚きます。国の基幹産業になるような時代が来るとは当時は思っていませんでした。「アニメファン」と堂々と名乗れる時代が来るなんて。自分の本（『メディアミックスの悪魔 井上伸一郎のおたく文化史』）にも書いたのですが、当時はアニメ好きという観点でインタビュー取材をさせて欲しくても、俳優さんに断られることが多かったですから。
数土：それこそ、今こうしてお仕事をさせてもらっている身で言うのもあれなのですが…僕は『月刊ニュータイプ』の読者で井上さんの存在も知っていましたから、すごく感慨深いです。どんなステージになるのかすごく楽しみにしています。
井上：映画も、トークもたくさん楽しんでいただいて、そして新潟ですから美味しいご飯も楽しんでください！あたたかい映画祭ですから、新しい仲間にも出会えるかもしれませんしね。
数土：劇場であったクリエイターさんに感想をお伝えしたり、一言声をかけてみるのも良いのではないでしょうか。意外と皆さんは直接感想を聞く機会って無いんですよね。
井上：昨年、富野由悠季さんがトークショーに出てくださいましたが、自分の作った作品を観ているファンを間近で見ることができれたことがとても嬉しかったそうです。「今日はとても自信をもらえました」とおっしゃっていました。間接的に感想を聞いたり、関係者の評価を聞くことはあっても、ファンの方と触れ合うことってなかなか無いですからね。そんな“近い”空間を楽しんでください。
――今日は素敵なお話をありがとうございました！
