劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』が10月25日より全国公開となります。
原作は、1995年に「坊っちゃん文学賞」大賞を受賞した傑作青春小説「がんばっていきまっしょい」(敷村良子)。 自然豊かな愛媛県松山市を舞台に、ボート部に青春をかけた女子高校生たちの成長や、等身大の心のゆらぎを瑞々しく描く物語は、 1998年に田中麗奈主演で実写映画化(制作:アルタミラピクチャーズ)されロングランヒットを遂げ、2005年にも鈴木杏、錦戸亮主演でドラマ化され、日本中に共感と感動を呼びました。
瑞々しく眩しい映像に載せた初の劇場アニメーションとして公開される『がんばっていきまっしょい』。寺尾梅子を演じた竹達彩奈さんに作品の魅力や収録の思い出などお話を伺いました。
――本作楽しく拝見させていただきました!キャスト解禁時のコメントで「梅子は演じていてすごく新鮮で、決まった時はビックリした」とおっしゃられていましたが、確かに梅子の様なキャラクターって珍しいですよね。
そうなんです!私自身もすごく新鮮でした。オーディションの時ほとんどのキャラクターを演じさせていただいて、どのキャラクターも楽しかったのですが、梅子は自分の中でも一番可能性が低いかな?と思っていたキャラクターでした。記念受験みたいな感じで。まさか梅子で合格をいただけて。なぜ梅子に決めていただいたのか、まだ監督に聞いていないのでいつか聞いてみたいと思います。
――そんな梅子を演じるにあたって、どの様な役作りをしましたか?
全く表情が出てこない子なので、台本を読んでいても難しいだろうなと思っていました。収録の際仮の映像を見ながらやらせていただいたのですが、全然笑っていなくて。完成した作品を観ても全く笑っていなかったんですけど(笑)。ミステリアスな子だから普通に喋っていると、誤解されてしまうなと思いました。梅子はただひたすら「ボートを頑張りたい」というアツい想いを抱えているだけなのですが、コミュニケーションが得意な方ではないので、「そこどいてもらえる?」とか思ったことをそのまま言ってしまう。それが、嫌な子に見えないといいなと思いながら演じさせていただきました。不器用な子というだけで、悪い子では無いということが伝わったら嬉しいです。
――ボートにかける想いが人一倍強いからこそなんですよね。
本当にそうなんです。周りからは分かりづらいけれど、心の奥に青い炎が灯っているタイプなのかなと思っています。彼女はずっとフラットで、「ライバルだから負けないぞ」と思っているだけで、敵に見ているわけでもないし、お互いの学校でベストな結果が出せたらいいね、お互いの世界で自分たちがやれることを頑張ろうみたいな。カッコいい子だと。
――人物描写が等身大で、リアリティも感じますよね。
梅子はクールで、みんなとワイワイするタイプではないけれど、友達や幼馴染みとか分かってくれている子が周りにいるから、安心出来るのだなと感じますよね。元気いっぱいで天真爛漫で、同じ夢を持って頑張っている子が近くにいて、素敵な関係性だなと思います。そういう存在がいるのといないのでは、運命の差というくらい大違いですから。友達って宝物だなということを作品を通して感じさせてもらいました。梅子の周り以外でも、徐々に絆が深まっていく感じもリアルな友情関係だなと思います。
――ボート部への印象やボート部員を演じてみていかがでしたか?
ボート部というものをこの作品で知りました。私は埼玉出身で、海の無い場所で育ってきたので、青い海を見るだけでもすごく新鮮に感じるんですけど、学校の部活にボート部があるんだということも驚きでした。みんなで声をかけあって息ぴったりに漕ぐ必要があるのでチームワークも大切ですし、すごくアツいスポーツですよね。私は海に入るのが怖いと思っちゃうタイプだから、日常の中で海に入ってボートに乗っているということがすごいなって。
――海の映像もすごく綺麗でしたよね。
キラキラしていて、観ているだけで癒されますよね。あと花火のシーンが印象的で。先ほど聞いたのですが、監督が愛媛まで実際の花火の音を撮りにいったと。私も花火のシーンを見ながら、アニメを見ているはずなのに、本物の花火を見ているような不思議な感覚になったので、監督の情熱が素敵なシーンを作っているのだなと感じました。みんなで花火を見ているのもすごく青春ですよね。
愛媛は行ったことが無くて、いつか実際に訪れてみたいです。私が行っている美容院のオーナーさんが愛媛出身の方で、いつもお家にミカンを送ってくださって。毎年本当に美味しいんですよ!「今年はちょっとハズレだけどごめんね」と言われる時もあるのですが、いや、全然レベルが違う美味しさです!って(笑)。毎年愛媛のミカンを楽しみにいただいています。
――竹達さんは高校生の頃からお仕事をされていますよね。
養成所に通いつつ、事務所からもらうオーディションを受ける日々でした。埼玉に住んでいたので、 片道2時間くらいかけて、東京の養成所でのレッスンに通っていて。養成所の学費もバイトで稼いでいたので毎日慌しかったですね。
お仕事で自分よりも大人の皆さんに囲まれていることが多くて、たくさん可愛がっていただきましたけれど、オーディションにたくさん落ちたり、悩んだり、学校の友達とは話が合わないということもありました。みんなが夢中になっていたメイク、ファッション、恋愛に私はあまり興味がなくて、マンガ、アニメ、お芝居がすごく好きだったので、周りから少し浮いていた部分もあったと思います。でも今思うと、そういう10代らしい遊びも大切だったよなとも感じていて、友達とカラオケとかは行っていましたけれど、全力で遊んでこなかったなというのもちょっと心残りではあるんです。声優になることに必死だったから、それはそれで青春だったとも思うんですけどね。
でも、「もしあの頃に戻れたら?」みたいな話になった時に、絶対戻りたくないんですよ!(笑)10代より20代の方が楽しいし、20代より30代の方が楽しいし、今が一番楽しいので。声優になるために駆け抜けてきた時期が今の糧になっているから後悔が無いんだなと思います。
――本作で梅子としてボート部として必死に頑張っている様に、声優さんは自分がしてこなかった世界を生きることが出来る素敵なお仕事ですよね。そして私の様な観客はその素晴らしい演技を見ることが出来ることが嬉しいです。
本当に!自分が実際に経験しなかった青春みたいなものを、こうして演じさせてもらえてすごく嬉しいです。こうやって何か一つのことに打ち込めるって素晴らしいことですよね。
毎回、色々な作品、色々な役柄との出会いがあって、今回の梅子の様に意外に思われるキャラクターについても認めてもらえたらすごく嬉しいですし、たくさん学ばせていただきました。私の役者人生の中の新しい引き出しを与えてくれた作品です。
――今日は素敵なお話をありがとうございました!
撮影:オサダコウジ