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映画『コットンテール』リリー・フランキー&木村多江インタビュー 16年ぶりの夫婦役に「“一緒に生きてきた感”が自然に出る、不思議な感覚」


パトリック・ディキンソン監督、リリー・フランキー主演による日英合作映画『コットンテール』を3月1日(金)より全国公開中です。

亡き妻の願いを叶えるために、東京からイギリスの湖水地方へ 家族の愛と再生の軌跡を紡ぎ上げた日英合作ロードムービー 東京と、イギリスで最も風光明媚なリゾート地でとして名高い、イングランド北西部に広がる湖水地方・ウィンダミアを舞台に、家族の愛と再生を紡ぎ上げたロードムービー仕立てのヒューマン・ドラマ『コットンテール』。

長年人生を共に歩んできた妻・明子(木村多江)に先立たれた兼三郎(リリー・フランキー)は、明子の「イギリスのウィンダミア湖に遺灰を撒いて欲しい」という最後の願いを叶えるため、長らく疎遠だった息子の慧(錦戸亮)とその妻・さつき(高梨臨)たちとイギリスへと旅立つ。しかし、互いに長年のわだかまりを抱えた兼三郎と慧はことあるごとに衝突してしまう。さらに兼三郎には、慧に言えない明子とのもう一つの約束があった――。

『ぐるりのこと。』(2008)以来の夫婦役となった、リリー・フランキーさんと木村多江さんにお話しを伺いました。

――本作とても楽しく拝見させていただきました。まずは本作の企画・脚本を読んだ時の感想をお聞かせください。

リリー・フランキー(以下、リリー):自分がどんどん年を重ねていく過程で、死を扱ったテーマというのが他人事じゃないなと思いました。イギリス人の方が監督・脚本をしているということも大きくて、「世界中の人が同じ問題に直面しているんだ」ということがすごく伝わりました。パトリックはとても誠実な人なので、ぜひ参加したいなと。

木村多江(以下、木村):普遍的な話であり、私の周りにはいらっしゃらないのですが、社会的なテーマだなと思います。世界中のどの国の人たちでも起こりうる話であり、人の悲しみを乗り越えるということは誰もが持っている人生の課題だなと。そういうことを丁寧に書かれた台本でしたので、本当に世界中の方が見て共感してくださるのではないかと思いました。素敵な愛のお話ですよね。

――お2人が演じられた兼三郎と明子という夫婦についてどう感じられましたか?

リリー:兼三郎っていわゆる昔ながらのお父さんという感じがしますね。仕事が忙しいことを詭弁に家族をないがしろにして、全部お母さんに任していて。先ほど錦戸(亮)くんと話していたのですが、慧と明子には絆があって、細かく描かれていなくても「慧は明子の子供なんだな」というところが分かる。そんな家族関係の中でちょっとヨーロッパ的だなと思ったのは、慧が兼三郎に「もっと話がしたかった」と詰めますよね。これは多くの日本人はあまり口にしない言葉だなと思って面白かったです。

そんな家庭の中で、木村さんだけがすごく明るいお母さんをやっている。そのお母さんが病気にかかってしまって、光を放っていた人がいなくなってしまうという。父さんは相変わらず葬式に行くにもグラグラしているけれど、徐々に最愛の人を亡くした後悔の念が出てくるという、変化をしていきますよね。家族をないがしろにしてきたおじさんの、無力感がすごい。

木村:兼三郎みたいな方いっぱいいそうなか気がしますよね。どういう形にしても、大切なものを失った時の乗り越え方って、多分女性よりも男性の方が辛いというか。一般的には、女性は現実的だから前に進む力も強かったり。もちろん悲しみは一緒だけど、この捉え方の違いを世界の皆さんがどう見てくださるのか楽しみですね。

リリー:後悔に突き動かされる感じっていうのも、世の中のお父さんの身勝手さが出ていますよね。この映画は刺激的なことを描いているわけではないのですが、家族の希望というか、「こうであったらいいな」という匂いがある。

木村:大切な人を失ったことってなかなか乗り越えられないけど、大切なことの一つが亡くなった方の命のバトンを受け取って、どうやって生きるかっていうことだと思うので、希望を感じられる終わり方が素晴らしいですよね。今悲しみを抱えている方たちにも刺さるんじゃないかなと思います。

――リリーさんと木村さんの夫婦役がまた観れた、というところが本当に嬉しい映画ファンも多いと思います。私もそうです。

リリー:『ぐるりのこと。』では最優秀主演女優賞や新人賞をいただいたので、日本人の監督だったら、あの夫婦のイメージが強すぎて、この2人ってキャスティングしづらいと思うんですよ。海外の監督だったからまた夫婦になることが出来て、そしてあの経験(『ぐるりのこと。』)がめちゃくちゃこの夫婦に活きている。前作も今作も、木村さんのことを看病する運命にあるんだなって(笑)。

木村:「一緒に生きてきた感」が自然に出る、不思議な感覚ですよね。

リリー:なんか続きを観ているような不思議な感じはあります。完成した映画を観て、病院帰りに喫茶店に寄るシーンとか、僕、自分で見ても、いいシーンだなと思って。めちゃくちゃ夫婦感がある。

木村:一緒にいても違和感がないし、映像でも違和感がなく、夫婦みたく映っていたから、 あ、良かったなって。

――木村さんはご自身で「このシーン好きだな」と思った部分はありますか?

木村:私は、明子が亡くなる時の2人の感じがすごく好きだなと思っていて。どういう選択をこの人(兼三郎)がするのか分からない空気と、明子は意識がないのに意識があるように訴えているように見える。あの空気の中に2人の想いがすごく溢れている感じが好きです。静かなのにみんなの感情が溢れそうになっていてドキドキしました。

監督が、「台本はガイドであって、その通りにしてくれっていうことではないので、自分たちの中で起こることを大切にしてほしい」とおっしゃっていて。監督は何も否定もしないし、全部受け入れてくれて。もちろん編集はありますけれど、その場で起こったことをそのままドキュメンタリーのように撮ってくださって。それが自然で良い映画になっているなと思います。

リリー:一方でとてもストイックな監督で、東京にも来て街中の撮影もたくさんした際、ロンドンでも1週間ぐらい色々なシーンを撮っているのですが、バッサリカットされていました(笑)。イギリスの湖水地方は本当に綺麗でしたね。ポスターに使われているこの写真、夕方には本当にこういう色になるんです。

木村:素晴らしいカメラマンさんと監督で、私たちにものすごく寄り添って、優しい方なんですけど。人を見つめる目が優しくて、それが映像にも表れているなと思います。私たちに余計な情報が無いまま、感情にフォーカスしてる感じがあったので、それも良かったし、リハーサルをすごくたくさんやってくださいましたよね。それでみんな同じ方向にむかうことが出来たんだなって。

リリー:僕らの若い時代を演じてくれた2人(工藤考生、恒松祐里)も、顔が似ているわけじゃ無いのに「あ、若い時の僕たち」だと思えてすごかった。

木村:恒松さんは私の若い時にしては綺麗すぎる気もしたんだけど(笑)。

リリー:2人ともすごく僕たちの癖を研究してくれていたみたいです。

――最後に作品とはちょっと離れた質問になります。2回ご夫婦役を演じれらて、お互いの出演している作品をつい観てしまう、みたいなことはありますか?

リリー:今回またね夫婦役やらしてもらったから、しばらく夫婦役はこなそうだね(笑)。なんか変な感覚で、「これは見ないでおこう」っていうのもあるんですよ。もうそこは身内感があるというか、家族のラブシーン見たくないみたいなことかな(笑)。

木村:リリーさんのお芝居を見るたびに嫉妬するっていうか、なんだろうこの感じ、と思います。リリーさんは自分の自我を捨てられる俳優さんで、それは私の理想でもあって。いかに木村多江を出さずにその役を生きるかっていうのはずっとテーマなのですが、やっぱり綺麗に見えたいとか、そういう自我が出ちゃう時があるんですね(笑)。

リリー:木村さんは自我を出す俳優さんじゃないと思いますけどね。

木村:もう完全に無くして挑みたいのだけれど、本作のパトリック監督の様に「自分たちの感情を大切にして」という方もいれば「こうしてほしい」という希望をいただく方が多いです。でも現場で「私の感情はそう動いて無いんだけどな…」と思いつつも、臨機応変に動いてしまうこともあるから。それが悪いということじゃないけれど、私が役者として目指すところは自我を捨てるっていうとこなので、それをリリーさんがいつもやられていて嫉妬しています。

リリー: 僕、なんかこのリリー・フランキーという名前で人前で喋った、写真撮られるのってすごく恥ずかしんですよ。でも役柄がついていたら何の抵抗も無く出来る。リリー・フランキーとしてケツを出すのは絶対嫌だけど役柄としてだったら全然出来ちゃう。それが自我を消しているということなのかもしれないけれど、自分ではよく分かっていないですね。

――今日は本当に素敵なお話をどうもありがとうございました!

撮影:たむらとも

『コットンテール』

【ストーリ】兼三郎(リリー・フランキー)は妻・明子(木村多江)の葬式でしばらく疎遠となっていた一人息子の慧(トシ) (錦戸亮)とその妻さつき(高梨臨)孫のエミに久しぶりに会う。酒に酔い、だらしない態度をとる喪主の兼三郎に、慧は苛立ちつつも気にかけていた。開封された明子の遺言状には、明子が子どもの頃に好きだった「ピーターラビット」の発祥地であり、夫婦で行きたいと思っていたイギリス湖水地方のウィンダミア湖に散骨して欲しいという内容が描かれていた。兼三郎と慧一家は、明子の願いをかなえるため、イギリス北部の湖水地方にあるウィンダミア湖へ旅立つ。

監督・脚本:パトリック・ディキンソン出演:リリー・フランキー 錦戸亮 木村多江 高梨臨 / 恒松祐里 工藤孝生 / イーファ・ハインズ and キア
ラン・ハインズ 配給:ロングライド 202 2年/イギリス・日本/日本語・英語/94分/2.39:1 /カラー/原題:COTTONTAIL
(C)2023 Magnolia Mae/ Office Shirous 公式サイト:https://longride.jp/cottontail.

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