加熱式たばこ「IQOS」を展開するフィリップ モリス ジャパン(PMJ)が、全国8か所で展開している「IQOSストア」。
IQOS製品各種を取り扱う店内では、加熱式たばこを経験したことのない20歳以上の喫煙者でも気軽にIQOSを体験できるだけでなく、店内に併設された「IQOS Signature Café」でIQOSとのマリアージュが楽しめるオリジナルのドリンクやスイーツを味わうこともできるのをご存知でしょうか(原宿店、名古屋店を除く)。
この「IQOS Signature Café」のコーヒーマリアージュ監修をおこなっているのが、かつて全国のコーヒー好きを魅了した銀座の喫茶店「銀六珈琲時・・(じてんてん)」(現在は閉店)の元店主、岩崎泰三さん。
現在は国際スペシャルティコーヒー鑑定士としてカフェのコンサルティングや希少な豆の買付などをおこない、自身もIQOSユーザーだという世界的バリスタに、IQOSとコーヒーの相性について話を聞きました。
――岩崎さんがIQOS Signature Caféの監修を務めるようになった経緯を教えてください。
岩崎泰三さん(以下、岩崎):(監修を務めるようになって)もう5年くらい経つと思います。もともと銀座で喫茶店をやっていて、再開発の影響で閉店してしまったんですけど、現在はフリーランスのコーヒーコンサルティングとして活動していて、その流れで声をかけていただきました。
当時は高品質な100円コーヒーの開発から、ウイスキーやワインと同じような感覚で楽しめる1杯2000円~3000円のプレミアムなスペシャリティコーヒーなどを提案する仕事をしていました。国際スペシャルティコーヒー鑑定士の資格を取得して、海外で豆を選んで直接買い付けることができる状況にあったのも、声をかけていただいた大きなポイントだったと思います。
――コーヒーに関して何か新しいチャレンジをしたい企業にとっては心強いパートナーだったわけですね。
岩崎:実は私が参画する以前に、IQOSストアのラウンジに世界最高のエスプレッソマシンを置きたいと考えたPMJの担当者がいらっしゃったんです。イタリアのマシンではなく、アメリカ西海岸のカリフォルニアで生まれたまったく新しい考え方を持つ「スレイヤー」というマシンでした。このマシンがIQOSストアに導入されたことで、IQOSとのマリアージュコーヒーに広がりが生まれたと感じています。私にとっても新しいチャレンジで、刺激的な環境でした。
――スレイヤーはどのような特徴を持ったエスプレッソマシンなのでしょうか。
岩崎:ハンドドリップのようにバリスタが自分の考えにあわせてレシピをその都度操作できる、メニューに応じてレシピを毎回変えられるのが大きな特徴です。IQOSが展開するたばこスティック一つひとつの味わいに合わせて、全く異なるコーヒーの味わいを同じエスプレッソマシンから生み出すことが可能なんです。そういう意味では、マリアージュコーヒーの企画はスレイヤーなしには成立しなかったと思います。
――最近手掛けられたものとして、今年11月に発売した「テリア ウォーム レギュラー」とのマリアージュを考えて開発された「クラシックシナモンラテ」について教えてください。
岩崎:ウォーム レギュラーは味わいが非常にやわらかくて、そのフレーバーがどこまでも広がっていく、輪郭がそれほどはっきりしていないのが魅力です。そのため、強いコーヒーをぶつけてしまうと、たばこ自体の味の広がりが感じられなくなってしまいます。とにかく、たばこの味わいを活かすことを前提にして組み立てました。
ドリンクの種類としては、カプチーノというイタリアの伝統的なラテの一種で、ミルクのフォームをふわふわにして、飲み物というよりは、食べ物に近いくらいやわらかくミルクを泡立てました。ウォーム レギュラーのやわらかい味わいを口の中に充満させた後にクラシックシナモンラテを口に含むと、泡立てたミルクのやわらかい質感だけが入って来るようになっています。コーヒーを下に沈めることで一口目はわざと味がしないように作っていて、飲み進めていくとだんだんとコーヒーが混ざってくるような仕掛けです。ミルクフォームの奥にはシナモンのパウダーを振っていて、鼻の中に抜けていく香りがウォーム レギュラーのウッディな香りとミックスされるように計算しています。
――これまで16種類のマリアージュコーヒーを開発したと聞きましたが、たばこスティックの味わいごとにマリアージュの考え方が異なるんですね。
岩崎:たばこの味わいに、あえて強いコーヒーをぶつけて部分的に消してしまう場合もあります。レギュラー系のたばこはスモーキーな力強さが全面に出てくるので、コーヒーの強さをぶつけてゼロにして、残った繊細な部分だけを感じてもらう。あるいは、たばことコーヒーのフレーバーが似ているものを合わせて、香りをミックスして拡大する、というアプローチもマリアージュの考え方のひとつです。
――そうすると、IQOSとのマリアージュから逆算しないと生まれないようなコーヒーの味わいが、ラウンジでは飲めるということですよね。
岩崎:その通りです。喫煙することで、時間と共にその人の感覚も変わっていくじゃないですか。コーヒーも一口目、二口目……と飲み進めていって、最後の一口に向かって味がどんどん変わっていくようにかなり計算して作っています。あえてストローで飲まないで欲しいとか、混ぜずに上から飲み進めて欲しいといったプレゼンテーションをお客様にしていただくよう、スタッフの皆さんにはお願いしています。
――IQOS会員の限定ラウンジという位置づけとはいえ、そういったこだわりの詰まったコーヒーが無料で飲めるのは驚きです。
岩崎:実は難しい面もあって、飲み手の方が心構えを作りにくいと言いますか、フリーのドリンクだからこんなもんだろう、みたいな気持ちがどこか芽生えてしまうんだと思います。だからこそ、ドリンクを持った時に普通とは違う期待感を持たせることができるように創意工夫を心がけています。
――かつて喫茶店をやられていたお立場から見て、昨今の喫煙を取り巻く環境の変化についてどのように受け止めていらっしゃいますか?
岩崎:コーヒー&シガレッツは切り離せない存在ですからね。コーヒーはアフリカの発祥で、たばこは中米から広まりましたけど、歴史的に見ても同じような用途で親しまれてきた嗜好品だと思います。気分を切り替えるためだったり、時にはリラックスするために、非日常の時間を作る役割を担ってきました。
昭和の喫茶店では深煎りコーヒーに紙巻たばこがセットされていた時代がありましたが、コーヒーに携わっている身からすると、煙の出ないIQOSというのは、浅煎りコーヒーに近い感覚だと捉えています。スペシャルティコーヒーで果実感や酸味を楽しむという時代にシフトしていく中で、たばこの素材感をしっかり引き出そうとするIQOSの考え方が、現代的なコーヒーの親しまれ方にマッチしていると思います。
近年たばこを吸える環境が減ってきていていますが、そういった意味ではこのIQOSストアのラウンジの存在は非常に素晴らしいものだと感じています。
――最後に、IQOSとコーヒーの相性について、自宅でも参考にできる知識があれば教えてください。
岩崎:先ほどお話した、あえて強いコーヒーをぶつけてたばこの味わいを部分的に消してしまう、あるいは香りをミックスして拡大する、といったアプローチ方法は、家庭でも比較的近いものが再現できるかと思います。まずは大まかに、カテゴリーをレギュラー系、メンソール系、フレーバー系と分けましょう。
まずレギュラー系のたばこに関してはラテが合います。ミルクが舌に膜を張るので、味わいが部分的に見えなくなるんです。かつての深煎りコーヒーが砂糖とミルクを入れがちだったのは苦味を隠す目的があって、レギュラー系のたばこはシンプルにたばこ葉の持つ味わいが出てくるので、苦みや重さ、渋みのような成分を部分的に消してしまうことで、繊細な味わいが感じやすくなる、ということが言えそうです。
メンソール系であれば、たばこ感とメンソール感の二つの味わいがミックスされているので、たばこ感の方にコーヒーらしさをガツンとぶつけるとメンソール感だけがキレイに残るんですね。いわゆるコーヒーらしいブラックコーヒーやエスプレッソなどが合うと思います。アイスコーヒーでもいいかもしれませんね。口の中の温度を下げることでひんやり感をブーストする効果があると思います。
フレーバー系にはスペシャルティコーヒーをおすすめします。いわゆるフルーティーなタイプの浅煎りコーヒーですね。スペシャルティコーヒーの世界は苦味やコクではなくて、どういった果実感を表現するかというのがトレンドになっていて、そういった素材由来の果実味にあえてフレーバー系をマリアージュすると世界が相当広がると思います。
――なかなかIQOSストアに足を運ぶ機会がないIQOSユーザーには是非試してもらいたいですね。貴重なお話ありがとうございました!