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不倫相手と一緒になりたくて“ある手段”を取った男─まさかの「重婚罪」で逮捕の哀しき顛末


どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

あなたは「重婚罪」というのは、どのような犯罪なのかを知っていますか?

“重婚”というのは、今現在すでに配偶者がいるにもかかわらず、他の異性と婚姻の関係を結んでしまうこと。これは、刑法184条という法律で禁止されている行為になり、罪になります。

これは自分が未婚者だったとしても、相手が既婚であることを知っていた場合は、その当人と婚姻届を出した時点で「重婚罪」にあたります。

重婚罪が成立する要件

重婚罪成立の要件というのは、《配偶者がいる=夫や妻がすでにいる》《重ねて婚姻=配偶者がいるという人が、重ねて法律上の婚姻手続きをすること。婚姻届提出で受理された段階で既遂》ということになるわけです。

ちなみに、婚姻届を提出し、法律上の婚姻関係がちゃんとあることが必要になります。内縁関係というものは含まないことが前提です。

日本では民法第732条で、重婚は禁止になっています。既婚者が別の異性と重なった状態で結婚しようとするならば、婚姻届受理はありえません。

ですから、戸籍係が間違って婚姻届を受理してしまった場合などであれば、重婚罪が成立しないものと考えられます。

さて、昨年にはこんなニュースがありました。

令和3年3月、山梨県富士吉田警察署は、重婚等の罪を犯した39歳の土木作業員の男を逮捕。男は、妻に内緒で離婚届を提出。同月にほかの女性と婚姻届を市役所に提出し、婚姻関係を成立させた疑いです。

このようなことをしてしまう男の気持ちはよくわかりませんが、今回は過去に重婚の罪で逮捕された乾隆史さん(仮名/41歳)に、その心情と逮捕に至った経緯について話を伺いました。

※記事中の写真はイメージです

可愛いキャバ嬢と知り合って……

丸野(以下、丸)「どうして重婚なんてことになったのですか?

乾さん「そうですね。もう3年前になりますか。重婚相手だったE美と出会ったのは彼女が勤めていたキャバクラでした。そのときの妻とは完全に夫婦の中が冷めきっていたので、同僚に誘われて遊びに行ったキャバクラに彼女がいたんです。23歳の彼女と会ったときに一目惚れしてしまいました

丸「ウチも妻とはひと回り歳が離れているからお気持ちわかりますが、今いる奥さんとの関係を断ってからというわけにはいかなかったんですか?

乾さん「ええ。子供ができてからというもの、私は給料を運んでくるだけの疎ましい存在になってしまったようで……。会話すらありません。ですから、E美に心のよりどころを求めたといいますか。彼女も私のことを意識していて、頻繁に外で会ってくれるようになりました。それからは大人の関係に……

丸「よくある話ですね」

妻は離婚を断固拒否

乾さん「E美もその気になって、一緒に人生を送っていってほしい、どうしても結婚したいと……。それから、私とE美は結婚することを約束。私は妻と離婚したかったんです

丸「奥さん本人に言えばいいじゃないですか」

乾さん「そのことを妻に話すと、“絶対にイヤだ”と拒否されました。生活の面倒を看るのは、夫として当然の義務。子供がハタチになるまでは離婚しないと言われました。子供はまだ5歳なので、15年間この女に縛られて吸い上げられて生活をしなくてはいけないのか……となるとまさに地獄です

丸「……なるほど。まぁ、結婚なんてそんなんことになるご夫婦も多いですからね」

重婚罪として刑事事件が成立してしまう

乾さん「どうかしていたのでしょう。切羽詰まった私は、仕方がないので妻の署名や印鑑を押捺して偽造した離婚届を役所に提出して受理。こんなに簡単にことが済むのか……と。それから、数週間後に彼女との婚姻届けを役所に提出しました

丸「戸籍課の職員は、受理したんですか?」

乾さん「ええ。離婚届が出ていて、ほとぼりが冷めていますから……。自宅で荷物をまとめて、彼女のマンションに転がり込んで数日が経ったころ、マンションに警察が訪ねてきました。妻が戸籍を確認して、役所に話をしたようで……。事情聴取のために任意同行を求められ、そのまま警察署に連行。配偶者がいる上で虚偽の離婚届を提出し、不正離婚した後に別の異性と再婚することは違法行為だと言われました。そのまま、取り調べが続き、留置場へ。数日後に逮捕令状を見せられ、そこには《刑法第184条『重婚罪』》とあり、逮捕となったわけですね

丸「重婚罪で逮捕ですか……」

乾さん「刑事さんからは、《公文書偽造罪》などが付く重婚罪でおそらくは懲役刑になるとそういわれました。“まったく何考えてるんだよ、あんた”とも

重婚罪の重さとは

丸「離婚自体が不正手段だった場合、離婚は無効になってしまうわけですよね

乾さん「そうですね。重婚が発覚してしまったときには、民法第744条で配偶者である妻、親族、検察官が後婚の取消請求ができるわけです。でも、さすがにバカだと思われたのか、取り消し請求をされてから、妻は本当に離婚届にサインをしてきました。さらに相手の弁護士から、慰謝料などの損害賠償請求付きで……。その相手も、その婚姻自体が重婚だったと知っていた場合は同じ処罰になるのですが、私は彼女には告げていなかった。それはよかったと思います」

23日間の最長拘留ののちに乾さんは逃亡の可能性がないと一旦釈放。その後の裁判で懲役1年執行猶予2年の刑に処されたそうです。若い彼女と一緒になりたいという気持ち一心で偽造した離婚届を提出し、新たな婚姻届けを提出したことで彼は会社をクビになり、元妻から莫大な慰謝料と養育費を請求され、有罪になり、せっかく知り合った彼女・E美にも去られたといいます。

ちなみに、国際結婚で生じる重婚というものもあります。海外では、宗教などの関係で配偶者の合意のもとであれば重婚が法律上認められるケースもあります。しかし、日本ですでに結婚している日本国籍の人が、重婚可能な国の異性と国際結婚した場合でも、それは重婚罪にあたり違法行為となります。双方の国で重婚が認められる場合のみ、可能というわけです。

さて乾さんですが、今回ばかりは色恋沙汰の度が過ぎました。軽い気持ちで勝手に公的な文書を偽造してしまうにはあまりに代償が大きすぎました。彼はもう一度人生をやり直そうと清掃会社の正社員をやりながら、懲りずにマッチングアプリで自分にピッタリの相手を見つけている最中だといいます。

(C)写真AC

(執筆者: 丸野裕行)

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