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傑作サスペンス『悪なき殺人』監督インタビュー「我々は偶然の犠牲者ではない。偶然からどんな行動をするかということが大切だ」


ある失踪事件を軸に思いもよらない形でつながっていく5人の男女の物語を描いたサスペンス『悪なき殺人』が現在公開中です。2019年・第32回東京国際映画祭コンペティション部門で最優秀女優賞と観客賞を受賞し、多くの映画ファンをうならせた本作。

【ストーリー】フランスの山中にある寒村で、一人の女性が失踪し殺された。疑われたのは農夫・ジョゼフ。
ジョゼフと不倫する女・アリス。妻のアリスに隠れてネット恋愛する夫・ミシェル。そして遠く離れたアフリカで詐欺を行うアルマン。
秘密を抱えた5人の男女がひとつの殺人事件を介して絡まり合っていく。
だが、我々はまだ知らない・・・この事件がフランスから5000kmも離れた場所から始まり、たったひとつの「偶然」が連鎖し、悪意なき人間が殺人者になることを。

同じ出来事を複数の人物の視点で語り直し、さらにそこから空間や時間を飛び越えたシークエンスが、まるでパズルを解くように、散りばめられた伏線がすべて回収されていく仕掛けが施されている本作。ドミニク・モル監督にお話を伺いました。

ーー本作、大変、大変楽しく拝見させていただきました。本作は2019年の「東京国際映画祭」でも話題を呼んでいたので、公開となり日本の映画ファンも喜んでいます。

「東京国際映画祭」では、最優秀女優賞と観客賞をいただくことが出来て、特に観客の皆さんが選んだ作品になれたということは本当に嬉しかったよ。そんな東京、日本で映画が公開されることはありがたいね。

ーー「ここが、こうつながっていくのか…!」という驚きの連続だったのですが、映画を作る上で大変ではありませんでしたか?

この映画には原作の小説があるので、その小説に基づいて展開しています。小説で一番気に入ったのが、登場人物それぞれの運命が偶然でつながっていくという展開を、遊び心のあるストーリーで描いている所だったんですね。映画にする上でチャレンジだった部分は、小説でも映画でも、チャプターに分かれていて、チャプターごとに主人公というか視点が変わっていく。そこでお客さんの関心を失わない様に描く部分でした。

1つのストーリーがそれぞれの視点で描かれていく中、微妙に話が違っていて、チャプターごとに新しい事実が分かっていく。時間も同じ時勢ではなくて、ちょっと遡ったり、ちょっと進んだりしている。そのことで観客の目を離させない、飽きずに見ることが出来る。観客も映画を観ながら点をつなげていく、受け身では無い参加型の構成になっている。それを映画にも踏襲しているよ。

ーーこの映画を象徴していると思うキャラクターはいますか?

普段の映画作りにおいては、中心人物の一人だったりをフォーカスすることになりますよね。でも、今回の映画は登場人物全てが重要な役割を持っている。それぞれの登場人物全員が何かを求め、愛を求め、時には間違った方法で進んでしまう。それが良い方向に転じる場合もあれば、悪い方向に転じることもあるのが、このお話の面白さだと思っています。

ーー登場人物たちは間違った決断をしてしまうこともあり、それが驚きでもあり、ユニークな設定だと思います。軽い表現になってしまいますが“憎めない”人物描写が素晴らしかったです。

おっしゃるとおり、すごく不器用な形で愛を求めているよね。私たちが彼らの行動を評価したり、判断するのはよくないと思っていて、彼らの人間らしさを見せることが大切だと思ったんですね。僕たちも完璧な人間では無いですし、彼らを評価する立場では無いのだと。観客がなぜか惹かれてしまう様なキャラクター描写をしたかったので、そういってもらえると嬉しいよ。

ーー「人間は偶然には勝てない」というフレーズがポスターにも使われているのですが、「偶然」について、監督が考えたことはありますか?

人生というのは偶然の連続であって、ただ、人生は偶然だけで作られているわけではないと思っています。偶然と出会った時に何をするか、どんな行動をするかで人生が動いていくのだと。将来のパートナーと出会ったのは偶然であっても、そこからパートナーになる、親密な関係になるかどうかは自分次第だと思います。映画の中で、ミシェルがヒッチハイクしている女性を見つけたのは偶然だけれど、その女性を自分がネットでやりとりしている女性だと思うことは、ミチェルの中で起きていることだから。我々は偶然の犠牲者であるわけではなくて、偶然から何を行動するかということが大切なのだと思う。

ーー「はっきりとした結末」が求められがちなエンターテイメントの世界において、本作の様に、余韻の中で観客があれこれ考えることの出来る作品は素敵だなと思いました。

人間の複雑さを見せたいし、見ていたいと思っています。映画を観終わった後に、観客に議論を呼びかける様な作品を作ることは心がけています。登場人物たちがあの後どの様な人生を送るのかは明確にしていないですよね。簡易化されたわかりやすいエンディングよりも、観客の皆さんそれぞれが考えるエンディングがあって良いと思いますし、想像力にまかせたいと思っています。

ーーありがとうございます。ちなみにお聞きしたいのですが、監督が最近ご覧になって好きな映画はありますか?

すぐに思い浮かんだ2本があります。日本のインタビューだからそう答えているわけではないのですが、『ドライブ・マイ・カー』と『ONODA 一万夜を越えて』は本当に素晴らしい映画でした。

ーー私もその2本は好きな作品ですので、嬉しいです。今日は素敵なお話をありがとうございました!

『悪なき殺人』絶賛公開中!

(C)2019 Haut et Court –Razor Films Produktion –France 3 Cinema visa n° 150 076
(C)Jean-Claude Lother

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