ディズニー&ピクサー最新作『2分の1の魔法』(8月21日公開)には、主人公であるイアンやバーリーのエルフ族のほか、サイクロプス、ゴブリン、ケンタウロス、マーメイドなど13の違った種族が登場。劇中では実に240ものキャラクターたちが描かれている。
ピクサー・アニメーション・スタジオのディレクティング・アニメーターのひとり、アリソン・ラトランド氏が、ファンタジーの世界で“リアル”に生きるキャラクターたちのこだわりを教えてくれた。
(※取材は新型コロナウイルス感染拡大前の今年1月に実施しました)
ケンタウロスが現代社会にどう適応したのか
「この映画にはおよそ85人のアニメーターがかかわっています。私たちの仕事は、キャラクターを動かし、演技をさせること。つまり。私たち自身が役者みたいなものなのです。私たちの作業過程で重要なのは、これらのキャラクターがどこから来て、なぜそのような動きをするのかを理解すること。『2分の1の魔法』に出てくるキャラクターは、モダンな世界に生きるファンタジーのキャラクターです。つまり、今の世の中に適応しているのですが、進化するにおいても、それらのキャラクターの歴史は影響してきます」。
例えば、ケンタウロスの警察官コルトというキャラクターがいる。イアンとバーリーの母親ローレルと恋愛関係にあるようだ。ケンタウロスは上半身が人間、下半身が馬の種族。野性的で荒々しいイメージを持たれており、コルトも自信に満ちた身のこなしをするが、イアンの家にいる時はいろんなものにぶつかっては落としたりしている。彼がどこか居心地の悪さを感じていることを、非言語的表現で示唆する手腕はさすがピクサーである。
「朝食のシーンで彼がどうふるまうのかを見るために、ダンは実際に馬が家の中にいる参考資料を探してくるようにと、アニメーターたちに言いました。もうひとつ、コルトが椅子に座るシーンがあります。あのシーンのために、アニメーターたちは、馬が椅子に座るのはどれほど難しいのかを知りたいと思い、奇妙にも、その参考資料を見つけることができました」。
そう言って、ラトランド氏は、アニメーターがネットで見つけたという、部屋の中を馬が歩いている動画や馬が椅子に座っている写真を見せてくれた。ケンタウロスが現代社会にどう適応したのか、ファンタジーの中にもリアルを大切にしながら作り上げていったわけだ。
スラックスだけで感情を表現する
描写するのが難しいキャラクターと言えば、魔法で下半身だけが蘇ったお父さんもそうだろう。
「私たちは顔がないキャラクターをアニメートしないといけなかったのです。パンツだけでも感情表現はできるものなのでしょうか? 私たちは、ファニーだったり、誠実だったりすることがわかるパパの動きを開発していかなければいけませんでした」。
初期にはグリーンスクリーンを使い、スラックスの動きがどのように見えるのかテストをおこなった。上半身をグリーンで覆ったダン・スキャンロン監督が自らカメラの前に立ち、腕を使わずに立ち上がるにはどうしたらよいのか、引っ張られたらどうなるのか、ハイタッチする時は? といった動作をいろいろと試していった。
「お父さんのデザインは、ただの枕である上半身も重要です。この部分は完全に受け身で、動きは下半身に左右されます。上半身は、アニメーションとシミュレーションのコラボレーションでした。どんな感じでだらりとしているのか、歩く時はどう揺れるのか、どんなファニーな動きを与えるのか、考えていきました」。
映画の中で、お父さんのキャラクターは多くのユーモアを提供する。見ることも聞くこともできないが、歩き方やタップの動作だけで、何を考えているのか自然と伝わってくる。この信ぴょう性をもったアニメーションのおかげで、イアンやバーリーとコミュニケーションを図るお父さんの姿に感動を覚えてしまうのだ。
『2分の1の魔法』2020年8月21日(金)全国ロードショー
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