アメリカで多くの子供たちにトラウマを与え、そして熱狂的に支持された“禁書”――「Scary Stories to tell in the dark」シリーズがギレルモ・デル・トロ製作で映画化。『スケアリーストーリーズ 怖い本』のタイトルで、2/28(金)よりいよいよ公開です。
ホラーが大好きな方にも、怖がりだけど気になっている方にも是非観ていただきたい本作。原作本は一体どんな本なのか? 映画版は一体どんなお話なのか? 映画を観る前に予習していきましょう!
“アメリカ版「学校の怪談」” 物議を醸した児童書
「Scary Stories to tell in the dark(以下、スケアリーストーリーズ 怖い本)」は、1981年に発刊された怪談本。作家でジャーナリストのアルビン・シュワルツが全米に広がる怖い話を集めた、シリーズ3冊全82話の短編集です。絶版にはなっていますが、かつて日本でも1987年に「だれかが墓地からやってくる」のタイトルで翻訳版が出版され、2020年に再び「スケアリーストーリーズ 怖い本」シリーズとして岩崎書店より刊行されています。それぞれのお話はテキストが1~2ページで完結してしまうようなごく短いものですが、想像力を掻き立てて強烈な印象を残すものばかり。
各地に伝わる怖い話を集めた児童向けの短編集――日本にも同じような本があります。のちに映画やアニメも製作された1990年発刊の小説「学校の怪談」です。“トイレの花子さん”や“口裂け女”、“人面犬”などの怪談――大人になっても覚えている方も少なくないはず。「スケアリーストーリーズ 怖い本」は、言わば“アメリカ版「学校の怪談」”といったところ。「学校の怪談」のように長きに渡って親しまれ、愛されてきた存在なのです。
しかしながら、本書はそのあまりの恐ろしさから論争の的となり、“禁書扱い”されていたということは特筆すべきポイントでしょう。その中身は、残虐でグロテスクなお話が多く、児童書らしい教訓や道徳的なオチがない上に、大人でもゾッとするような挿絵が添えられています。児童書なのに、全米図書館協会が定める“子供にふさわしくない本”に認定されてしまったというエピソードまであります。
挿絵を手掛けたのはスティーブン・ガンメル。奇妙で幻想的なタッチで描かれた物語の1シーンは、見てはいけない世界を覗き見てしまったかのような背徳感さえ感じさせます。
子供だましではない恐ろしすぎるこの挿絵も、本書が人気を博した一因。ガンメルの挿絵に大きな影響を受けたのが、映画監督のギレルモ・デル・トロ。『シェイプ・オブ・ウォーター』『パンズ・ラビリンス』『クリムゾン・ピーク』などで独創的なモンスターやゴーストを生み出し、唯一無二の世界観を築いてきたデル・トロにとって、この本は原点だったと言います。
禁書、だから読みたい!
はてさて、そんな怖すぎる本に対して大人が黙ってはいませんでした。実際の事件を彷彿とさせるような残酷な内容やおどろおどろしい挿絵に親や教師から苦情が相次ぎ、本書を学校の図書館に置くことを禁止する運動が巻き起こります。しかし、「図書館に置いてはいけない禁書」なんて聞いたら読んでみたくなるのが好奇心というもの。そういった運動が余計に本書への注目を集め、読みたがる子供や若者が相次ぎました。本を持っている子がガールスカウトなどのキャンプに持っていくと、羨望の眼差しを受けたとも言われています。また、読みたがる子供たちのために学校の図書館司書が本を買って学校の古本市で売った、なんて事例も。
容赦ない恐ろしさで好奇心旺盛な子供たちを魅了した本書は、読んだ子供たちが大きくなって親となり、次の世代へと語り継ぐことで、約40年という月日が経った今でもなお愛され続けています。
結果的に、シリーズは累計700万部を超えるベストセラーとなりました。ネットが普及した今では、各話のストーリーをランク付けするファンサイトも存在。“禁書扱い”は解けて学校の図書館にも普通に置かれるようになりましたが、未だに親からの苦情が届くそうです……。
映画版『スケアリーストーリーズ 怖い本』
論争を巻き起こすほどのインパクトを持ち、愛され続けてきたベストセラーがついに映画化! 生半可なものは作れません。本書を愛するギレルモ・デル・トロは、自ら名乗りを上げてプロデューサーに就任。デル・トロは、身元不明美女の奇妙な死体をめぐる新感覚ホラー『ジェーン・ドウの解剖』でカルト的な人気を誇るアンドレ・ウーヴレダルを監督に抜擢。ホラー好きには心躍るタッグが実現しました。
自分たちが“怖い話”の主人公に……
短編集を映画化した本作は一体どんなお話なのか? 映画版は、“怖い物語を自ら書いていく不思議な本”をめぐるお話として、いくつかのエピソードをひとつの物語に集約させています。
ホラーが大好きで作家志望の少女ステラは、友人らと忍び込んだ町外れの幽霊屋敷で、恐ろしいお話がいくつも書かれた“曰く付き”の本を見つけます。噂に聞いていたその本を、好奇心からこっそり持ち帰ってしまったステラ。彼女がワクワクしながら怖い話を読み進めていると、何もなかったはずのページに新しい物語が書かれていることに気付きます。それは、ステラの仲間たちを主人公に、彼らが“いちばん怖いもの”に襲われる物語でした。
さらに恐ろしいことに、物語に登場した仲間たちは現実世界でも物語と同じ運命をたどり、姿を消していくのです。本の持つ恐ろしい力を知ったステラは、仲間と協力して物語を止めることができるのでしょうか。そして、次の主人公は……?
ステラの仲間たちを主人公に書かれる“怖い物語”は、原作本「スケアリーストーリーズ 怖い本」から選びぬかれたとびきり怖いエピソードたち! 本を読んで震え上がった読者にとって、それらが映像化されるのはさぞ恐ろしかったことでしょう……。でもね、原作を知らなくても充分怖いです。
登場する若者は、家庭や人生に悩みを抱えていて、心の片隅に孤独を飼っている等身大のティーンエイジャーたち。この世界のどこにでもいるようなリアルな若者像が、恐怖と対峙するドラマをより血の通ったものにしています。
挿絵を完全再現! デル・トロこだわりのモンスター
本作のみどころは、なんといってもガンメルの挿絵を完全に再現したモンスター。平面で描かれたモンスターを、印象を変えずに立体としてデザインし直すのは決して簡単なことではありません。ましてやガンメルの挿絵は、原作の読者が愛してやまない要素であり、別のイラストレーターの絵に差し替えて本が発行された際には抗議が殺到したほど。挿絵の雰囲気を壊さないことは、本作の命題でもあったわけです。
CGではなく“本物”をそこに立たせることにこだわったデル・トロは、『シェイプ・オブ・ウォーター』での造形も手掛けたマイク・ヒル、デル・トロ版の『ヘルボーイ』を担当したノーマン・カブレラといった、業界トップクラスのクリエイターを集結させました。できあがったモンスターの写真をご覧いただければその完成度がお分かりいただけるでしょう! これがまた、動いてるシーンを観ると背筋が凍る恐ろしさ。ぜひ本編でお確かめ下さい。
怖いけど、楽しいんです!
映画『スケアリーストーリーズ 怖い本』は、アメリカで公開初日に1位を獲得したほか、イギリス、フランス、スペインなど30以上の国や地域でトップ10に入るなど、全世界で大ヒットを記録しました。原作への愛とリスペクトを込めて製作され、原作同様に愛されることとなったこの映画は、「怖い」と同時にとても「楽しい」映画でもあります。書かれた物語が一体どんな形で現実化するのか、観る者の想像を掻き立てながら、それを上回る形でスクリーンに描き出していきます。「怖い怖い」と思って観ていても、次第に恐怖が期待に変わってくるはず。だからこそ、「怖いのは苦手だけど気になる」という方にも是非挑戦してみてほしいのです。かつて原作本を怖いもの見たさで読んだ子供たちも、今はその経験が宝物になっているはずですから。
『スケアリーストーリーズ 怖い本』
2月28日(金)新宿バルト9ほか全国公開
監督:アンドレ・ウーヴレダル(『ジェーン・ドゥの解剖』)
ストーリー原案・製作:ギレルモ・デル・トロ
原作:アルビン・シュワルツ編「スケアリーストーリーズ 怖い本」シリーズ(岩崎書店刊)
出演:ゾーイ・コレッティ、マイケル・ガーザ、ガブリエル・ラッシュ、オースティン・エイブラムズ、ディーン・ノリス、ギル・ベローズ、ロレイン・トゥーサント
2019/アメリカ/英語/108分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/原題:Scary Stories to tell in the dark/字幕翻訳:金関いな
配給:クロックワークス
公式サイト:scarystories.jp 公式ツイッター&インスタグラム:@scarystoriesjp
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