1月5日から19日にかけて東京、大阪、名古屋、福岡の6会場で開催されている「沢田研二 正月LIVE・2020・名福東阪阪東・寡黙なROCKER」。毎年のライブツアーとは別に長く恒例だった沢田研二さんの正月LIVEだが、2017年から2018年にかけての50周年記念ライブツアーの影響もあり、今回3年ぶりに開催された。筆者は1月15日の大阪フェスティバルホール(大阪市)公演に足を運んだ。
2018年9月、さいたまスーパーアリーナ(さいたま市)公演を当日になってキャンセルしたことが話題になってから早1年と4か月。その後の沢田さんの活動は驚くほど順調なようだ。2019年3月にリリースされたシングル「SHOUT!」はオリコン週間ランキングで最高40位と、前年にリリースされた「OLD GUYS ROCK」(62位)を大きく上回る注目度。同年5月から11月にかけて開催された50本近い大規模なライブツアーもおおむね上々の客入りだった。
15日の大阪フェスティバルホールも3階席の後ろまで超満員。曲目は1990年代以降にリリースされた反戦、反原発のメッセージソングが中心だが、「お前にチェックイン」(1982年)、「ダーリング」(1978年)、「危険なふたり」(1973年)など往年のヒット曲も随所にちりばめ、カルロス・ゴーン被告や大相撲の白鵬関に関するクスっと笑える時事ネタMCも披露するなどユニークな構成。特にアンコールで白の和服姿で「サムライ」(1978年)を熱唱する姿は圧巻だった。
沢田さんは変わったアーティストだ。1967年のデビュー以来、アイドルを経て大歌手として地位を築き歌謡界のメインストリームにいたはずが、いつの間にかそこから距離を置き、ロッカーとして独自の路線を貫いている。同年代の歌謡歌手たちのように若作りすることはなく、新曲もヒット性を無視した作風のものがほとんど、歌唱法も往時とは異なるシャウトを多用したものに変わっている。しかも2018年からはバック演奏はギター1本のみという常識外れの編成だ。商業的な目線で考えるとなぜ今も大勢のファンに支持され続けているのかはっきり言って不思議。今の沢田さんの魅力とは一体なんなのだろうか。今回の正月LIVEに参加した各年代のファンからコメントを寄せていただいた。
公子さん(65歳 女性)
「どんな曲でもイントロや演奏が頭の中に入っているから、ギターの後ろにドラムやキーボードは確かに聴こえるような気もするが、幻ではないバンド演奏も聴きたいと思う。贅沢な希望かもしれないけれど。これからのステージを一つ一つ大切に聴いていきたいと思う」こまろさん(50歳 女性)
「今回のライブはヒット曲をを少し増やしていたので、初めてジュリーのライブに誘った友達も喜んでいました。しかしマニア枠はこのまま残して置いて欲しいです。今回は「PEARL HARBOR LOVE STORY」(※1997年にリリースされた反戦歌)が本当に絶品で目頭熱くなります。夏のツアーでも歌って欲しいな~!とにかく71歳にして進化し続けるジュリーを追いかけて行きたいです」ぢゅんこさん(46歳 女性)
「復活した正月LIVEは、暗黒の1990年代~2000年代を支えたファンへのご褒美セットリストだった。一所懸命さとナルシシズムとファンサービスが突き抜けている人。1994年ツアーから欠かすことなくライブを観てきたが、今回特に“ああ、おじいちゃんになったね”って思った。でもここまで来たらフィナーレまで見届けるよ」ローズさん(28歳 女性)
「YouTubeで『ダーリング』を歌う昔のジュリーを見て綺麗さにハマりました。ライブでは今の年取ったジュリーを見て驚いたけど、すごくパワフルで若い時とは別の魅力を感じてさらにハマりました。今回の正月LIVEは知ってる曲は半分くらいだったけど、これからもっとジュリーを知っていきたいと思っています」片桐大貴さん(19歳 男性)
「僕は1970年代のジュリーが好きだから昔の曲を歌ってくれると乗ってしまう。すると周りのお客さんの反応が違うことに気付いた。前のお客さんはただ座っている。左隣のお客さんは立って一緒に歌ったり踊ったりしている。右隣のお客さんは涙を流している。後ろのお客さんは延々“ジュリー”と叫んでいてびっくりした。いろんなスキャンダルがあっても離れず、ジュリーと一緒に歳を取りファンで居続けた人たち。ジュリーは人を虜にする何かがあるのかもしれない」仙台のKENTさん(17歳 男性)
「昨年、最前列でジュリーからグーサインをもらいました(嬉泣)。イヤーモニターも返しのスピーカーも使わず、走り動き跳ぶ凄さ。そして何より本当に声がイイ!祖父より年上なジュリー、カッコよすぎる!!僕は一生あなたの大ファンです。」
10代から60代まで、さまざまな背景を持ったファンの方からコメントをいただくことができた。現在の沢田さんに思うことはそれぞれのようだが、共通して言えるのはみな現在の沢田さんの人間性に魅かれているということだ。“人間・沢田研二”として自分なりのパフォーマンスを追求する頑なさ。それこそが失われたものを補って余りある現在の沢田さんの魅力になっているということだろうか。
「沢田研二 正月LIVE・2020・名福東阪阪東・寡黙なROCKER」は1月19日のNHKホール(東京都)公演が千秋楽。5月からは新たなライブツアーも予定されているということだ。50年以上の長きに渡って日本の音楽シーンを彩ってきた老ロッカーはこれからどんな新しい感動を見せてくれるだろうか。今後も沢田さんの活動から目が離せない。
※一部画像を沢田研二オフィシャルサイト検索(リンク)から引用しました
(執筆者: 中将タカノリ)
―― 表現する人、つくる人応援メディア 『ガジェット通信(GetNews)』