映画『男はつらいよ』の主役、寅次郎を演じた渥美清さんが亡くなり、20年以上が経過しました。この20年間で社会の様相や価値観は大きく変化しました。令和になり、昭和をまったく知らない世代も成人を迎えている今日この頃。
「昭和に戻りたい」「昭和はどんな時代か知りたい」そのようなリクエストに応えてくれるのが『寅さんの列車旅2 寅次郎旅人情篇』(天夢人 刊 / 旅と鉄道編集部 編)です。本を片手にふらりと鉄道旅行をしてみませんか。
パンチの効いた第一章から寅次郎ワールド全開
本書は四章で構成されています。
第一章は寅次郎の名場面を振り返る「鉄路を旅する寅次郎 名迷場面集」。第二章「寅次郎が愛した柴又を歩く」では寅さんの故郷である東京柴又の名スポットを紹介。寅次郎の足跡をたどる第三章「寅次郎の足跡を探す旅」では北は青森県の五能線、南は讃岐路まで6つの鉄道旅行が楽しめます。第四章「鉄道ランク別男はつらいよ全作品」と題して、鉄道ファンの目線から『男はつらいよ』の全作品がコンパクトに解説されています。
とにかく第一章が強烈。寅次郎の名シーンが次々と美しい写真で紹介され、自然と映画のワンシーンが頭に浮かぶと思います。その後に続く、寅次郎との別れのシーンのセリフや人生教訓は味わい深い文章のオンパレード。希薄になりつつある昭和の人情や温かさがセリフから伝わってきます。第一章を読むだけでもじっくりと楽しめるのが本書の特徴といえるでしょう。
寅次郎を知らない読者は第二章から読もう
寅次郎の魅力を十二分に知っている方は素直に第一章から読み進めればいいと思いますが、映画を見たことがない方も多いと思います。そのような方は第二章にある「寅さんの愛した故郷・柴又の人々」で寅次郎周辺の人間関係をチェックしましょう。場合によってはインターネットにある人物関係を見ながら、読み進めるといいかもしれません。
人物関係をチェックしたら、第四章に飛びましょう。第四章ではポスターや写真を用いながら『男はつらいよ』の全作品が紹介されています。ポスターや写真を見るだけでも作品の魅力が感じられます。寅次郎の魅力をあらかた知った上で、第一章と第三章を読むと内容がスムーズに理解できると思います。
単なる懐古趣味では終わらない内容
本書のもうひとつの特徴は懐古趣味では終わらないことです。第三章では蒸気機関車で有名な静岡県の大井川鐵道の旅では現在の社員の奮闘ぶりも紹介。大阪から来た新入社員のミニインタビューや忘れ物が見つかったエピソードを読むと現代でも人情が残っていることがわかります。もちろん、道中ではロケ地や渥美清さんの貴重なエピソードもあります。現代と昭和時代を組み合わせた独特の世界観が読書を魅了させることでしょう。
『男はつらいよ』の誕生から50周年を記念した新作映画が、昨年末から上映されています。映画と共に本書を手に取って心温まる世界観に浸ってみてはいかがでしょうか。
『寅さんの列車旅2 寅次郎旅人情篇』
(天夢人)旅と鉄道編集部 編
紙版 本体1,800円+税
(執筆者: 天夢人(テムジン)のPRスタッフ)
―― 表現する人、つくる人応援メディア 『ガジェット通信(GetNews)』