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生理用ナプキン版『ミッション:インポッシブル』はいかにして誕生したのか?『パッドマン 5億人の女性を救った男』R・バールキ監督インタビュー 



△左から、ラクシュミ役アクシャイ・クマール、R・バールキ監督


2001年当時、インドの生理用ナプキン(パッド)の普及率はわずか12%にとどまり、多くの女性は不衛生な布を生理用品がわりに使っていたという。その理由は、生理用ナプキンが高額で販売されていたため。そして、生理が不浄なものとされ、語ることすら「恥」なものとされていたからである。社会活動家のアルナーチャラム・ムルガナンダム氏は、そんな状況を変えるべく奔走した人物。彼は、それまでの約3分の1の価格の清潔な生理用ナプキンを生み出し、ナプキン製造機まで開発。さらには、女性たちにナプキン製造機を購入してもらい、ナプキンを販売させるビジネスまで確立した。女性の経済的自立と社会進出にまで貢献し、2014年には米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれている。


12月7日公開の『パッドマン 5億人の女性を救った男』は、そんなムルガナンダム氏=パッドマンをモデルにした映画。妻の健康のため、清潔で安価な生理用ナプキンづくりに励む主人公・ラクシュミの姿を、エンタテインメントとして描いた作品だ。メガホンをとったR・バールキ氏は、これまで専業主夫とキャリアを求める妻の姿を描いた『キ&カ ~彼女と彼~』を監督。また、専業主婦が英語を学ぶことを通じて自己実現を成し遂げる『マダム・イン・ニューヨーク』(バールキ氏の妻=ガウリ・シンデー氏が監督)をプロデュースするなど、社会的なテーマをエンターテインメントとして送り出してきたクリエイターだ。そんなバールキ監督は、なぜ異色のヒーローともいうべき“パッドマン”を題材に選んだのか? そして、作品を通して何を訴えようとしたのか? インビューでじっくりと語ってもらった。


お金がないと人は正直になれるし、人生はシンプルになる



――映画化のきっかけを教えてください。


プロデューサーで原作者のティンクル・カンナーさんと、彼女の夫アクシャイ・クマール(主人公・ラクシュミ役の俳優)さん、この夫婦に話を持ち掛けられたのが始まりです。ただ、わたしは実在する人物の物語を映画化するのには抵抗があったので、「ムルガナンダムさん本人に会ってから決めたい」と話をしました。もちろん、お会いする前から彼のことは知っていたんですが、実際に会ってみると本当に素晴らしい方でした。「こんなにいい人が存在するのか!」と思うくらい、細かいところにまで感動しました。


――例えば?


南インドのコーヤンブットゥールいうところにある、ムルガナンダムさんの工場に行ったときのことなんですが……とても小さな工場で、従業員も数人の規模でした。すごく面白いと思ったのが、ムルガナンダムさんが支払いをするときに、金額を書かれていない、白紙の小切手を机の上に置いていたことです。なぜ金額を書かないのか訊いたら、彼は「みんな、ぼくがお金を持ってないと知っているから、自分たちで請求額を決めてくれるんです」と。お金がないと人は正直になれるし、人生はシンプルになるんですよ。


――なるほど。


ほかにも面白いエピソードがあります。あるとき、ムルガナンダムさんが大学で講演することになったので、わたしが車で送ろうとしたんです。ところが、いざ現地に向かおうとしたら、ムルガナンダムさんはとても汚れた服を着ていて。わたしは、「着替えなくていいんですか?」と聞くと、ムルガナンダムさんは、「みんな、ぼくが工場で働いているのを知ってるから、(服が汚れているのは)当たり前だとわかってますよ」と。シンプルで、とてもいいですよね。


――実業家っぽくない、気取らない方なんですね。


彼はビジネスマンではないので、お金を儲けようなんて考えていないんです。だから、工場の機械を高額で売ろうなんて考えたりません。



△パッドマンことアルナーチャラム・ムルガナンダム氏


――劇中でラクシュミを助ける女性・パリーは、実際のムルガナンダムさんの人生には存在しない架空の人物ですね。なぜ、このキャラクターを登場させたでしょうか?


映画の物語は、ほとんどが本当のことです。でも、物語を作り上げるうえで、「人生では、助けてもらうことが大切」ということを描きたかった。もう一つは、ラブストーリーの要素も入れたかったということもあります。そのうえで、現実的な話にしたかったんです。完成した映画を観て、ムルガナンダムさんは「なんで(助けてくれた女性がいたのを)知ってたの?」と驚いていました。ムルガナンダムさんの人生にも、全く同じような人ではないですが、助けてくれた女性がいたそうです。ロマンスはなかったそうですが(笑)。


――劇中では、「不浄だから」という理由で、生理中の女性が家の外で隔離されるシーンが何度も登場します。インドに本当にある慣習なのでしょうか?


都市部は現代化が進んでいるので、こういったことはないですが、田舎に行くといまだに観られる習慣です。わたし自身も、母が生理中に台所に絶対に入らないのを見ていました。


――劇中で、ラクシュミがナプキンを作っていることを知り、妻のガヤトリが「恥ずかしい。死んだほうがまし」と言うのがとても印象的でした。生理に限らず、インドでは「恥」が文化の中で重要視されているのでしょうか?


そうですね。インドでは、「恥」という考え方が、文化の中で非常に重いものとして扱われています。女性の生理のようなプライベートなことについては、特にその傾向が強いです。


――その文化に異議を唱えたかったのでしょうか?


特にそういうわけではなく、「生理について恥じることはない」ということを訴えたかったんです。ラクシュミが安価な生理用ナプキンを作ろうと思ったのも、妻への愛情から。どちらかと言えば、「恥じるよりも、助けてほしい」ということがテーマです。


『パッドマン』は男性の愛の物語であり、社会派の『ミッション:インポッシブル』である



――女性の生理と自立・労働問題が結び付いているとは思わなかったので、この映画を観て気づかされたことが沢山ありました。監督は、この映画を作ったことで、気づいたことはありますか?


とてもびっくりしたことが一つあります。それは、ムルガナンダムさんがとてもシンプルで、考え方がストレートだということです。物事を複雑に考えず、とにかく問題に対して最も単純な解決法を見つける。例えば、生理用ナプキンが高いなら、どうやったら安くできるかを考える。人々に教育が必要なら、その方法を考える。当時は、人が喜んだり、飛び上がったりする生理用ナプキンのCMが多かったんですが、ムルガナンダムさんはそれを見て、「なぜ清潔感をアピールしないのか?」と言うんです。そもそもの問題は、女性たちが生理用ナプキンではなく、不潔な布を使うことにあったからです。もともとわたしは広告会社の人間だったので、ムルガナンダムさんさんの言葉には、はっとさせられました。だから、P&Gやジョンソン&ジョンソンの人たちに、彼のアイデアを話しました。


――広告会社での経験が役に立つことは多いですか?


この映画だけではなく、全ての作品で広告会社での経験は活かされています。広告も映画もコミュニケーション……つまり、問題の解決法を考えて、それを伝えることが重要なので。


――ステレオタイプな夫と妻の役割を入れ替えた『キ&カ』も、専業主婦が英語を学んで自信を取り戻していく『マダム・イン・ニューヨーク』(R・バールキ氏がプロデュース)も、ジェンダーロールに関する作品でした。女性の権利や自立をテーマにしたい、あるいはしなければ、と考えていらっしゃるのでしょうか?


『キ&カ』は、実際にはジェンダーロールについてそれほど意識して作ってはいないんですよ。「女性はこうでなければならない」とか、「男性はこうでなければならない」とも考えていませんし、中立的に考えています。ただ、女性のほうが面白いし、美しいし、想像力豊かに表現できると思っているので、題材にすることが多いです。


『キ&カ ~彼女と彼~』海外版予告

篇(YouTube)


https://youtu.be/B2fxtycjf_I


『マダム・イン・ニューヨーク』予告

篇(YouTube)


https://youtu.be/GgWzX4NavoQ


――ここ最近、女性の自立や権利をテーマにしたインド映画が数多く製作されているような気がします。インドの映画業界で、そういったムーブメントが起こっているのでしょうか?


それはインドだけではなく、世界的な流れだと思いますよ。ただ、『パッドマン』に関しては、ジェンダーロールや女性の権利に関する話というよりも、ある男性の愛の物語として描いたつもりです。男性が、普通の女性よりも生理について考えて、女性のために行動する姿を描きたかったのです。


――なるほど。『パッドマン』のような、社会的な問題をエンタメとして描くときに、気を付けていることはありますか?


映画を作る上で一番大切なのは、やはり人を楽しませるということだと思うので、何か社会的なメッセージを伝えたい場合も、説教するような表現にならないようにはしています。特にわたしは、誰かの人生に魅了されて、それを映画化するというプロセスを常に大事にしています。『パッドマン』も、社会派の『ミッション:インポッシブル』のつもりなんですよ。スリラーであり、主人公が不可能なミッションを達成する、という意味で(笑)。


――(笑)ちなみに、今一番興味がある題材は何ですか?


いくつか興味のある題材はあるんですが、次は実在の人物ではなく、完全なフィクションで、もっとマッドな(狂った)ものを作りたいですね。


『パッドマン 5億人の女性を救った男』は12月7日(金) TOHOシネマズ シャンテ他 全国公開。


インタビュー・文=藤本 洋輔


映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』

(2018年/インド/2時間17分) 

監督・脚本:R.バールキ 出演:アクシャイ・クマール/ソーナム・カプール/ラーディカー・アープテー

公式サイト:http://www.padman.jp/site/


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