今回は舩田クラーセンさやかさんのブログ『Lifestyle&平和&アフリカ&教育&Others』からご寄稿いただきました。
ドイツで家族が寝たきりになった時の介護はどうなるのか?(1)(Lifestyle&平和&アフリカ&教育&Others)
ずい分サボってました。
が、息子の日本での写真展にご協力、ご来場、ご購入いただいた皆さま、心から感謝申し上げます。帰国したと思ったら、義母が突然の緊急入院で危篤状態になり、年末年始は病院と家の行き来でした。
さてツイッターで少し書いたら、すごい反響だったので、たぶん日本の皆さんは日本以外の介護の実態をあまり知らない、あるいは知りたいと思っているご様子なので、あくまでも個人の経験ということで少し紹介しておきます。
今各種の本の執筆と出版に向けた作業、翻訳・・・(社会活動は前提として)で大忙しでして、とにかく年が明けて、農繁期が目前に迫り、此の2ヶ月が勝負なので、、、政策や別事例を調べるのは多分来年になりそうです。どこかの新聞とか専門家がしっかり調べ、一般向けの発信をすべきと思いますので、どうぞ社会的関心が非常に高いということで、よろしくお願いいたします。
まず、昨日、以下のTWを送りました。
「危篤だった義母が奇跡的に退院見込みでケアマネとの面談。在宅介護を奨励のドイツでは、家に引き取ると、2日以内に電動ベット等必要物が届き、1日3度のカリタス専門家の訪問(排泄物処理・医療対応・風呂)、2千ユーロ(27万円)が家族に支給。すごいわ…。政策が現実に活きるって、そういうものよね」
その後、以下の訂正を入れているのでご確認下さい。
1)この2千ユーロ弱*正確には1995ユーロ(27万円〜28万円)は、介護サービスの提供組織に支払うために家族に支給される。家族の手元には残らない(残してはいけない)。
2)他方、介護サービスを受けずに家族が介護する場合、毎月900ユーロ(12万〜13万円)が家族に対して支給される。これは家族が好きに使っていいお金。
*おむつ代の補助などは未だ調べていません。
*換算レートは135円から140円(今円安です)。
その後の追加情報。
3)義母は退院時は要介護の6段階で最上級(5)となる見込みで、それを踏まえた計算。
4)以上の現金支給は介護保険からすべて出される。
5)介護保険は加入が義務づけられており、その介護負担額は、その人の所得に応じた負担。
6)義母は10月の入院前は要介護2(6段階で真ん中)で、緊急時ケア付きアパートに暮らしていたが、別居家族でも介護の支援を行う人には月315ユーロ(4万2千円〜5万弱)が支給されていた。
<ー家族らが話し合い、義母のアパートの家賃に充当していた。
ちなみにドイツの子ども手当は、2018年度は次のような数字だそうです。
以下のブロガーのサイトにあった数字なので、公式発表を皆さんでご確認下さい(今時間がなくすみません)。でも、大体そうじゃないかなという数字です。
「2017-2018年のドイツの児童手当と基礎控除」2016年10月15日『DJ-Finanz』
https://dj-finanz.de/post-5019/
1)一人目と二人目:194ユーロ、(2.5万円ぐらい)
2)三人目:200ユーロ(2万7千円ぐらい)
3)四人目:225ユーロ(3万2千円ぐらい)
つまり、4人いると、月額813ユーロ(10万円から12万円弱もらえます)
*ついでに、親一人当たり9000ユーロの税控除があるそうです。
*手当は18歳までだけれど、子どもが大学に行っていれば25歳まで受給可能だそう。(23歳だと思っていたのですが、これもまた調べて必要に応じて訂正入れます)
さて、いただいた反響の代表的なものが以下のもの。順不同。
1)羨ましい。
2)それなら在宅介護もできる。
3)日本じゃ無理。
4)税金高くてもこんな安心もらえるのなら是非。
5)日本の今の政権は弱者切り捨てで、逆の方向に邁進中。
6)日本では家族の責任にされる。
7)財源は?
8)高齢者が増えすぎたら?
さて、最後の二つの点は詳細についてはまた調べて紹介しますね。
でも今の時点でいえる重要なポイントは、すでにTWにも書きましたがこういうことです。
・人口動態は前もってわかること。
・国家・政府・政治の役割は未来予測を踏まえ、手(対策)を打つこと。
・当然少子高齢化が問題とわかったために、子ども手当を大幅に拡充し、子育て世代への支援に乗り出した。
・育休は3年が権利である。
(女性を子どもだけと家に閉じ込める制度になったために逆に少子化になった点もあり、子育て世代の選択肢を増やす方向に舵きりをした。東ドイツ出身のメルケル政権が誕生したこともあり、保育園の整備や制度の推進などが進められてきた。)
・とはいえ、急激には変化は期待できず、少子高齢は問題。そのため、EU域内からの移民の受け入れを積極的に行い、労働人口を増やしている。
(難民問題は複雑なので、ここでは取り上げないが、積極的受け入れを産業界や政権が行っている背景に少子高齢問題があることは否定できない)
あとは、根本的な考え方・アプローチの違いを指摘しておきたいと思います。
1)子育ても介護も、社会全体の課題。
2)家族がやって当然ではなく、それを支える家族を社会が支えようという発想。
(*ただし、子育ては母親が3歳まではすべきという強固な伝統概念がつい最近までは根強かった。が、少子化になって、この路線を変更し、父親の育児参加と保育制度の拡充、女性の社会進出を保障していくことが子どもが生まれると考えられるように)
3)この根っこには、国家と国民の直接的な契約関係(憲法)の意識あり。
4)つまり、主権在民。国家・政府・政治は、主権者である国民に奉仕するためにある。
5)介護や子どもの問題は個人の問題である以上に国家・政府・政治の問題。それを放棄するのは契約違反。
6)あとは、政治はこのようなニーズのためにあり、変えられる。
7)不満があれば、政治にぶつけ、政府や政策を変えればいい。
8)それもせずにただ政府に任せてて権利が獲得・守れるわけがない。おかしいことには声をあげる。あげ続ける。
最後に、働く理由が決定的に違っている気がしています。
・今働くのは生きるためであるが、休暇を愉しみ、年を取ってから休むため。
・働くために働くのではなく、会社のために働くのでもない。
・税金が高くても、将来の安心のためであり、その安心を全体で支えているため。
他方、ドイツにも問題が山積しています。
おかしなところもたくさんある。
政策的におかしなところも。
自動車産業との癒着による排ガス規制の見逃し問題!!
でも、日本みたいな税金の使い方はしていないのは事実ではあります。
例)高齢者がほとんどになるのに何兆円も使ってリニア新幹線を走らせようとか、原発事故起こしたのに政府保証や融資をつけて原発を海外輸出とか、国有財産をお友達に安売りとか、海外にじゃんじゃかバラマキとか・・・。そんなことしたら市民が黙っていない。なんせ、ストライキも普通に日常ですから。
また、煩い市民の目・チェック機能があちこちにある。
そして、心理的に全面的な降伏状態にある国民・・・はほとんどいない。
良くも悪くも皆さん一家言あり、投票に行ってます。
実はうちの町は、保守が強い地域で、CDUの建設会社の社長が一時的に市長をやって、とんでもない癒着・業界利する政治を行いました。それで借金が膨大になり、市民へのサービスを削らなければならない事態になった。
これは今日本でおきている現象と極めて似ています。
それでどうしたか?
30代のSDPの立候補者が、「汚職撲滅、クリーンな政治、住民のための市制刷新」を掲げて選挙に出て当選。
前市長が購入した何千万もするベンツを売り払い、自転車で市役所に通い、数々の財政再建政策を行うとともに、市を活気づかせるためのイベントを地域のミュージシャンやアーティストや住民組織とともに開催。年末には、旧市街にアイスリンクを設置し、そこで市制討論会(市長になんでもぶつけようの会)を開催しています。
現在、極めて高い支持率をもらい、再選が確実です。
このような若者を育て、支える土壌を、日本でもつくっていきたいですよね?
問題があるから無理だ・・・ではなく、問題があるから政治や政府があるのです。
問題がなければ、税金を払う必要はない。
税金はそのためにあるのであって、使途も含めて、その権限を市民が取り戻す必要があるのです。
日本は、すべてを自己責任・家族の責任に押し付けて、政府は本来の仕事を放棄し、税金の使途や政治のあり方にフリーパスを手にしようとしています。それで、既得権益を有する人達や余所の国の皆さんと好きなように最後にのこった国の財産をむさぼり食い尽くし続けたい。文句をいわれることなく。。。
国民・市民・住民のための政治・政策・政府こそが、世界の民主主義国家、日本の憲法の第一原則である主権在民の原点です。政府が私たちに諦めさせようとするのであれば、私たちは諦めてはならないと思います。
政治は変えられる。
いや、変えねばならない。
そして、与党やメディアもふくめ、市民の声をどんどん届け、教育する必要があるのです。
彼らもまた変われる、変わるべき存在。
それを忘れず、声をあげていきましょうね。
*なお介護施設は所得に応じて入れる施設と入れない施設があり、また負担額も個々人の事情に応じてまったく違います。義母は年金と持ち家があったので、探すのも、入るのも、月々の負担もそれなりに大変だったようです。そして、私たち家族は、1年の大半をバラバラに世界のあちこちで過ごすので、現実的には在宅介護は不可能な選択なので、ここから施設との調整になっていくと思います。そこらへんもまた続報でお伝えします。
写真は4年に1度、ある農村コミュニティが主宰して開く「じゃがいも祭り」の様子。終了間近にいったので閑散としていますが、日中は人でいっぱい。村の子どもたちがゴミチームを結成し、7歳ぐらいから9歳までが一生懸命ゴミ拾いしてました。
伝統的な織物やカゴも販売されていた。
執筆: この記事は舩田クラーセンさやかさんのブログ『Lifestyle&平和&アフリカ&教育&Others』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2018年10月21日時点のものです。
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