今回は森戸やすみさんのブログ『Jasmine Cafe』からご寄稿いただきました。
ワクチンツーリズムについて(Jasmine Cafe)
中国で22万人の子どもに不適切なワクチンを打ってしまったという事件がありました。
「中国、不正ワクチン流通 「国産不信」に拍車」2018年07月25日 『日本経済新聞』
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33391180V20C18A7910M00/
「中国、不正ワクチン流通 「国産不信」に拍車(archive)」『archive.today』
https://archive.is/H6QwW
中国では、ずっと以前から何度も基準に満たないワクチンや横流しされたワクチン、管理が悪く効果が不明なワクチンが出回って問題になっています。
「中国を揺るがした欠陥ワクチン事件の全貌」2018年08月03日 『日経ビジネス』
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/101059/080100168/
今回のニュースは、長生生物社が三種混合ワクチンが基準に満たないことを知っていながら、回収命令に従わず21.5万人以上の子どもに打ってしまったというものです。
事件の悪質さと被害人数の多さに比べ、罰金はわずか。地方自治体である吉林省食品薬品監督管理局や中国政府は、この事実を隠蔽していました。
長生生物社の代わりに武漢生物という会社の三種混合ワクチンを使おうとしたところ、これも不適合であることが発覚。なのに、そちらも40万本がすでに流通済。
その上、中国共産党中央宣伝部は、2018年7月下旬に国内メディアに対して「ワクチン関連報道停止」の通達を出しました。ネット上に掲載されていたワクチン関連のニュースは軒並み削除、国内メディアの大部分はワクチン関連ニュースの報道を差し控えています。
ひどい事件とその後の処理。中国の普通の国民は、子どもを病気から守るためのワクチンを信用できないし、メラミン入りミルク事件もあり食品の安全性も心配、偽のC肝炎治療薬の件もあり薬にも不安なことでしょう。
ところで、私のクリニックは、海外に赴任する人が多いんです。「仕事の都合で急に家族で○○国に行くことになって、このワクチンを打ちたい」とか、「この子は海外で予防接種を受けてきたので、続きはどのようにしたらいいですか」と言ったことがよくあります。今、夏休みなので日本に一時帰国中のご家族もワクチンの続きを受けにいらっしゃいます。駐在員のご家族は、中国で予防接種を受けたくないだろうな。
当院をかかりつけにしていない人からも問い合わせがあります。「今は中国にいますが、そちらで○○ワクチンを受けられますか?」というように。それが、日本人で一時的に中国に長期滞在している人なのか、中国人で旅行のついでにワクチンを受けたいのかはわかりません。
日本での定期予防接種の費用は、市区町村が負担しています。だから住民票があれば個人でお金を払うことはせずに、定期接種のワクチンを受けることができます。定期予防接種の期間外であれば、有料になりますがどこに住民票のある誰でも打つことができます。
しかし、定期接種以外のものはなかなか受けに来てくれる人はいません。実は従来言われていたよりもおたふく風邪で難聴になる人が多いことがわかったという報道や、各地で麻疹感染者が増えたという報道があると一時的に受ける人が増えます。先日もMRワクチンはたちまちなくなり、「まだ1度も受けていない1歳児が優先です」なんて接種制限があったくらいでした。でも、喉元過ぎれば熱さを忘れる。
「麻疹ワクチンのレキシ」2018年05月11日 『Jasmine Cafe』
http://yasumi-08.hatenablog.com/entry/2018/05/11/120000
こんな記事を書いてみましたが、↑今大人でMRワクチンを受けたいという問い合わせはゼロ。千葉県などでまた風疹感染者が出ているようですね。麻疹が流行した時にMRワクチンを打っていたら安心だけど。
「風疹が流行する兆し 厚労省、予防接種の徹底を呼びかけ」2018年08月14日 『朝日新聞デジタル』
https://www.asahi.com/articles/ASL8G6G0CL8GULBJ00Q.html
もしも、中国の人が来て、自費であることを承知した上でワクチンを受けたいと言ったら、私は打ちます。
だって、説明しても面倒がったり、そもそもアンチワクチンだという人に説得を試みるより、よほどやりがいのある仕事。
ワクチンの製造会社は、厚労省に来年は何本このワクチンを作りますということを届け出ています。その計画を無視することはできないし、製造工程上急に増産もできません。自国のワクチンが信用出来ないという中国人が、ワクチンを受けるためだけに来日する、あるいは旅行のついでにワクチンも受けるということになったら、日本人が受けるべきワクチンが足りなくなるかもしれません。
「日本人の分しか作っていないから受けられませんよ」と断るほど使用されずに余るし、インバウンド人口が増えているので、海外から病気が持ち込まれて日本で感染症が広がるより、ワクチンツーリズムはいいことだと思います。
大事なことなので繰り返します。日本でワクチンをいつか打たなきゃと思っている人、早くしないと無くなるかもしれない。自分が今、何を打つべきなのかわからない人は、お近くの医療機関に問い合わせてみてください。
麻疹・風疹(MR)ワクチンは覚えがなければ検査なしに2回打ちましょう。
水疱瘡にかかったことがなければ、水痘ワクチンを2回打ちます。
おたふく風邪も同様です。
B型肝炎も2016年から定期予防接種になっています。2016年以前に生まれた子ども、他人の体液に触れる危険性のある大人などは自費でも打ちましょう。
災害時などに問題になる破傷風は、ジフテリア・破傷風(DT)ワクチンで予防できます。
他にもたくさんあるんだけれど、こちらに詳しいのでぜひ見てください。
『こどもとおとなのワクチンサイト』
https://www.vaccine4all.jp/
なんでも小児科へ行かなくても大丈夫! ほとんどの場合は自宅でケアできます。
「小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK ~いつものケアから不調のときの対処法まで (専門家ママ・パパの本)」2018年07月13日 『Amazon』
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862573886/jasminjoy-22/
執筆: この記事は森戸やすみさんのブログ『Jasmine Cafe』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2018年08月20日時点のものです。
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