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『新感染 ファイナル・エクスプレス』ヨン・サンホ監督インタビュー 「クラシカルなゾンビ映画であり、誰でも楽しめる普遍的な物語」[ホラー通信]



映画批評サイトで批評家レビュー満足度95%を叩き出し、スティーブン・キングやギレルモ・デル・トロ、イーライ・ロスなどの名だたるホラーの名手から絶賛された、韓国発のゾンビパニックムービー『新感染 ファイナル・エクスプレス』(英題:Train to Busan)がいよいよ9/1より公開となります。


今作は、韓国の高速鉄道KTX内で人間が凶暴なゾンビと化す感染パニックが巻き起こり、偶然乗り合わせた乗客たちがサバイバルを繰り広げる物語。当時ゾンビ映画というジャンルがまだ一般的ではなかった韓国で今作は異例の大ヒット。しかも今作のヨン・サンホ監督は元々アニメーション映画の監督であり、なんと今作が実写初監督作。それで圧倒的な完成度の作品を作り上げ、絶大な支持を集めたのですから驚かされます。



そんなヨン・サンホ監督が来日、ホラー通信もインタビューを行うことができました。特徴的なゾンビの演技はどうして生まれたのか? ゾンビ映画を観ない人でも楽しめる物語を作るポイントとは? 貴重な話を聞けたのでぜひご覧あれ。


<ストーリー>

ソウル発プサン行きの高速鉄道KTXの車内で突如起こった感染爆発。疾走する密室と化した列車の中で凶暴化する感染者たち。そんな列車に偶然乗り合わせたのは、妻のもとへ向かう父と幼い娘、出産間近の妻とその夫、そして高校生の恋人同士・・・果たして彼らは安全な終着駅にたどり着くことができるのか―?目的地まではあと2時間、時速300km、絶体絶命のサバイバル。愛するものを守るため、決死の闘いが今はじまる。


ヨン・サンホ監督インタビュー


――監督はアニメーション映画の出身ですが、実写映画を撮るという構想は最初から無かったのでしょうか。アニメーションと違って、撮影に難しさはありませんでしたか。


ヨン・サンホ監督:もともとアニメーションが好きで、中学生になる頃にはアニメーターを志していましたし、ずっとアニメに関わる仕事をしていて、実写を撮ろうと思ったことはありませんでしたね。長編アニメ映画を撮るうちに実写映画の話を持ちかけられることもありましたが、乗り気ではなかったんです。ゾンビ・パンデミックを題材にしたアニメ映画『ソウル・ステーション パンデミック』(9/30日本公開)を撮ったときに実写化を提案され、そこでようやく興味を持ち、どうせ撮るならばその続きの物語をと思い、作ったのが『新感染~』です。


初めての実写映画でしたが、実は私の場合とても撮りやすかったんです。スタッフもキャストも元々私のアニメ作品を好きでいてくださった方がほとんどで、初めての実写撮影にあたって皆がサポートしてくれました。最近ではCGも非常に発達しているので、空模様を描き換えたり、そこにない高速鉄道の車両を描くこともできてしまう。なのであまり困ることはありませんでしたね。



――今作でも、その前日譚である『ソウル・ステーションパンデミック』でも、ホームレスのキャラクターがキーになっていますね。


ヨン:『ソウル・ステーションパンデミック』はソウル駅が舞台ですが、ソウル駅というのは経済発展の象徴であり、その経済発展の道からはみ出してしまった人がホームレスになって、ソウル駅にいるのです。ソウル駅に行くと、一般の人はホームレスの人が見えていても見えていないふりをします。ゾンビの身なりや歩き方はホームレスに似ているものがあります。だとしたら、ソウル駅でホームレスを無視していた一般の人達は、ソンビが現れたときに果たしてその存在に気付くのか、というところからアイデアが広がっているのです。


『新感染~』でもホームレスのキャラクターは非常に大切な存在でした。ホームレス以外の登場人物はみな普通の人々です。公権力から阻害されている一般の人達がいて、ゾンビではないけれど一般の人でもないホームレスがいる。そういった状況で、果たして一般の人はホームレスを受け入れられるのか、また、それによってホームレス側の態度がどう変わっていくかを描きたかったんです。


――ゾンビの動きも特徴的でした。何かこだわりがあったのでしょうか。


ヨン:まず、ゾンビの外見が悩ましいポイントでした。ゾンビというと特殊メイクをしますよね。アメリカのゾンビ映画のように濃い目のメイクを試してみたんですが、そうするとゾンビがモンスターのように見えてしまった。それは私のイメージのものではなかったので、メイクは人間に近い、ごく薄いものにしました。そうすると、ゾンビとしての特徴がなくなってしまいますから、代わりに動きを特徴的にすることにしたのです。撮影当時、ナ・ホンジン監督の『哭声/コクソン』で振付をした振り付け師が、同作に出てくるひとりのゾンビのためにたくさんの振り付けを用意していました。使われなかった振り付けのなかにあったのが、骨が折れたような動きをする“ボーンブレイク・ダンス”を取り入れた振り付けで、それを使わせてもらうことにしたのです。



――今作はドラマもアクションも手を抜くことなく盛り込んだところが大きな魅力だと感じました。


ヨン:私は「一つの世代が次の世代に何が残せるか」というのをモチーフに、世代論を語るような映画にしたいと思いました。なので、父親と娘のストーリーを軸にした、家族からスタートするドラマにしたんです。今作のもう一つの軸である“アクション”の見せ方もこだわりました。KTXというのはとても狭い空間です。その中でできるアクションは限られていますから、どうしても平坦なものになってしまいますよね。できるだけ変化をつけて、色んな形のアクションを見せたかった。実際に何度もKTXに乗って、それぞれの停車駅の構造をチェックしました。物語の序盤、ゾンビの動きは車内を移動する水平のものしかありませんが、駅の構造をうまく使って、垂直の動きも取り入れました。そして後半にも大きな変化を起こしています。私の中で“アクションに変化をつける”ということは大きなポイントだったんです。


――今作はゾンビ映画が一般的でなかった韓国で“ゾンビ映画を初めて観る人”のために作ったという話を聞きました。ゾンビ映画を観ない人でも楽しませるポイントとして、何を重要視していましたか。


ヨン:この映画は「普遍的な映画であってほしい」という願いを込めて作ったのです。そして、「クラシックなゾンビ映画にしたい」という想いもありました。最近ではゾンビ映画はスプラッターの典型のように思われていますよね。しかし本来ならば社会的なメッセージが込められている映画ジャンルだと思うんです。そしてクラシカルなゾンビ映画の持つ“恐怖”、それは、「愛する人が別のものに変わってしまうのを、この目で見なければいけないという恐怖」、そして「自分自身が別のものに変わってしまって、愛する者を攻撃してしまうかもしれないという恐怖」です。この2つをしっかりと描くことで、ゾンビ映画ファンではない人でも楽しめる普遍的な物語になったと思います。


――ゾンビ映画ファンやホラーマニアでなくても楽しめる映画を作った結果、今作はマニアにも楽しめる映画になっているところが凄いと思いました。名だたる映画監督が今作を絶賛しているのもそうですが、過去にホラー映画の監督に“人生のホラー映画ベスト3”を伺った際に今作を選んだ方もいました。(参考記事)こういった反応は予想できましたか?


ヨン:いえいえ、まったくそんなことは想像できなかったです! 私は『地獄』という短編アニメーションでデビューしたのですが、これはホラー作品だったんです。ホラーでデビューしたくらいですから、ホラージャンルにはとても思い入れがあります。ホラーというのは色々と変化がつけられるジャンルですよね。ホラー映画の中に別のジャンルを取り入れたり、常に新しいものを作っていきたいと思っていますし、そういった挑戦でホラー映画の未来の活路を見いだせればいいなと思っています。


――今後もホラー作品の予定はあるのでしょうか。


ヨン:撮影を終えたばかりの次回作は超能力を扱ったブラックコメディで、あまりホラーっぽい作品ではないのですが、その次はやはりホラー性の強い作品になると思いますよ。


――期待しています! 本日はありがとうございました。



ドラマ、アクション、スリルが余すことなく盛り込まれた今作。乗り込んだが最後、新幹線のごとく圧倒的スピードでラストまで駆け抜けていきます。怖さを求めて観るも良し、ドラマを求めて観るも良し、感動を求めて観るも良し、とにかくゾンビ観たさに観るも良し。観終わったらきっと誰かと共有したくなるこの物語、是非スクリーンでお楽しみあれ。



ホラー映画・ホラー系エンタメ情報『ホラー通信』 –horror2.jp


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