DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進度合いは業界ごとに大きな差がありますが、医療業界は特にDXが進んでいる業界として知られています。
そんな中、デジタルと人の力を結集し「予防医療」というジャンルで医療の新しい可能性を切り拓いている企業があります。「データ×予防医療」で戦略的な予防医療を提供するプラットフォーム「パーソナルドクター」を提供する株式会社ウェルネス(以下:ウェルネス社)です。
同社の代表取締役である中田航太郎氏(以下:中田氏)には、当DXportal®でも過去にインタビューをさせていただいており、その際はウェルネス社の成り立ちと予防医療に対する並々ならぬ想いをお伺いしました。
今回は、中田氏に加えて、同社で営業を担当する吉本菜々子氏(以下:吉本氏)を交えてお話を伺い、同社サービス「パーソナルドクター」に関してより詳しくご紹介いただきました。
データとデジタルを活かした医療の未来を切り拓く、人生100年時代を生きるための「予防医療」の最先端に興味をお持ちの方は、どうぞご注目ください。
「人」が作るソリューション
これまでの当メディアのインタビューシリーズでは、企業が提供しているソリューションにも着目させていただきますが、それよりもそのソリューションを作る「人」にフォーカスした記事でおかげさまでご好評をいただいています。
ウェルネス社代表の中田氏の人となりや起業にかけた想いなどは、前回のインタビュー記事でお聞かせいただきました。
そこで、今回はウェルネス社の予防医療ソリューションに関しての詳しいお話を伺う前に、吉本さんのお話を聞かせていただけないでしょうか。
まずは、吉本さんが担当されているお仕事を教えてください。
吉本氏
「私が担当しているのは、いわゆる会社のセールス業務の全てです。特に新規顧客の獲得であったり、ご紹介いただいたお客様のご相談を受けたりといった、フロント的な立場としての動きです。」
吉本さんはX(元Twitter)などでも積極的に発信をされていますが、その発信活動は会社の広報として、いわゆるインフルエンスな業務を担当しているということなのでしょうか。
吉本氏
「あれは、元々私がXでポストするのが好きでやっていたものを、中田社長から『会社のこともそのまま書いていいよ』といってもらったので、たまに呟いている感じですかね。基本的にウェルネスの知名度を少しでも上げられればとは思っていますが、仕事という感じでもないですね。」
吉本さんは看護師の資格をお持ちと伺いました。看護師からウェルネス社の営業担当になったきっかけを教えてください。
吉本氏
「当社のことを知る前から、私自身も看護学生の頃から予防医療を広めていきたいと思っていました。そう思ったきっかけは、医療を勉強する中で日本では医療費が年々かさんでいて、医療従事者も不足しており、医師も患者さんもどちらもが大変になっている現状を知ったことでした。
こうした状況を改善するには、そもそも人が病気にならない状態を作るのが一番です。そのためには予防医療が重要だと思ったのですが、看護師として病院に勤めるだけではそれは実現ができません。
そこで、予防医療を世の中に効果的に広めていくには、営業職が一番ふさわしいのでは?と考えました。
ただ、具体的にどうしていけばいいのかがわからず悩んでいました。たまたまそのタイミングで中田社長から声をかけてもらったので、この会社であれば自分の思い描いていた『予防医療を世に広める』という取り組みができると考えて今に至っています。」
中田社長が吉本さんに声をかけたきっかけや決め手はなんだったのでしょう。
中田氏
「もともとは吉本がXで「予防医療に関わりたい」ということを書いているのを見かけて、私からコンタクトを取ったのがはじまりです。
当社は元々『ビジョンドリブン(企業のビジョンを最優先にして経営方針や従業員の行動指針を定め、意思決定を行う考え方)』な会社で、『儲かる領域はどこだろう?』というような発想でビジネスを立ち上げたわけではないんですね。それよりも『こういう会社になったらいいよね』と思って会社を作っているので、やはり『想いやビジョン』を持った人材を採用したいというのがありました。そういう意味では、吉本の存在は『まさに』といった感じでしたね。
それで『一度話をしてみませんか?』と声をかけて直接会ったのですが、吉本としてもちょうど働き方を変えようと考えているタイミングだったのもあり、『じゃあ、うちにおいでよ』となった感じですね。
吉本は看護師という仕事に就いていながら、医療関係以外の方とも交流が深いという医療従事者の中では珍しいタイプでもあったので、非常にポテンシャルを感じました。」
吉本さんもご自身の人脈の広さは意識されていたのでしょうか。
吉本氏
「基本的に人と関わることが好きで、人に興味を持つことが多かったんです。社会人になって、コミュニティが仕事の現場という狭い世界だけになっていくことに抵抗がありました。ですので、意識的に業界以外の人との関わりを持とうとは意識していました。それが気づくと今のお客様に繋がっていった感じです。」
吉本さんにとっては、まさに営業職が天職のようなタイプだったのですね。
予防医療の重要性
吉本さんにとってのウェルネス社の魅力は、なんでしょうか。
吉本氏「私にとっての当社の特に大きな魅力は主に二つあります。
一つは働く側として、医療者が場所にとらわれない働き方ができる環境を提供している点です。医師や看護師といった職種は、これまで病院とかクリニックとかでしか働けない状況がありましたが、ウェルネスでは医療資格や専門性を活かして、オンラインを含めて働くことができるというのは大きな魅力ですね。
もう一つ、何よりも大きいのは『予防医療』という、今まで具体的なプロダクトとして成り立っていなかったものを具現化しているところです。これまでも国や一部の医療従事者などが漠然と『予防医療は大切ですよ』と訴えかけてはいましたが、なかなか行動変容には繋がっていませんでした。
当社はしっかりとしたエビデンスに基づく予防医療を体現し、具体的なプロダクトとして予防医療を提供しています。この点が最大の魅力だと思っています。」
ウェルネス社のnoteで書かれたキックオフイベントレポートを拝見させていただきましたが、その中で印象的な言葉がありました。
我々の事業は、病気を予防することだけで終わらず、データを活用し一人ひとりに最適なアドバイスや検査を提供していくことです。最終的には、世界の70億人全員の人生を豊かにし、70億人全員が防ぎえた後悔をなくせる世界を目指しています。
海外だと10年前からホットな事業でして、GAFAなど大きい企業は医療に積極的に参画しています。カギを握っているのが、医療だけではなく、テクノロジーも絡めること。医療×technologyが今後は必要不可欠になります。
GAFAが医療事業に参画する背景としては、健康データを一般企業に提供する方が少なくなっていることがあります。自分の健康データを医者に提供するという人は約7割、それに対してGAFAに提供するという人は約1割です。こういう背景から、GAFAは医療会社を買収しているんです。
一方、我々は医療人材が豊富であり、医者がテクノロジーを活用するという切り口で進めているので、そこに勝ち筋があると思っています。
中田氏
「海外ではGAFAなどの大手企業が予防医療に取り組んでいます。しかし、医療者が主導している予防医療とビジネスパーソンが主導する予防医療では、医療者の主導するほうが当然ながらエビデンスは整っており、『医療』という点では人々の信頼度も高いのではないでしょうか。
とはいえ日本では、まだまだ医療者主導の予防医療への取り組み自体が少ないのが現状です。」
元医師の中田社長が立ち上げたウェルネス社は、医療とビジネスを掛け合わせた稀有な例でしょう。やはり、医学的なエビデンスに基づき、しっかりとした仕組みとして届けられるというのは、他社との違いなのでしょうか。
中田氏
「そこは大きな違いだと思います。以前から、いわゆる日本の富裕層向けの『健康サービス』というのはありましたが、どちらかというとIT企業やホスピタリティ提携の企業、会員制ホテルを経営している会社などがクロスセル的に医療サービスを作っているだけでした、発案している人間は医師や医療職の人間ではありません。そうすると、おしゃれな空間やリラックスできる豪華な施設などはあるんですが、本質的な意味で質の高い予防医療を提供できているかというと疑問が残るケースも少なくないんです。
『予防』って、『あらかじめ防ぐ』という意味ですよね。だとすると敵を理解しなければあらかじめ防ぐなんてできないわけで、病気に対する専門的な理解のない人がプロダクトを作っても、そもそも予防なんてできないのでは?と思います。
ですので、そこはやはり医師がやるべき領域だと思っています。もちろんそこにITを絡めるとか、ホスピタリティの要素を入れたりとかも重要なんですが、やはり最も重要なポイントは医学的エビデンスではないかと考えています。
我々ももっとこのサービスを改善していかなければなりませんが、このパーソナルドクターの最もコアとなる『人の死を防ぐ』という部分に関しては、市場のどのプロダクトよりも優れているという強い自信を持っています。ここだけは、医療の専門家である我々だからこそできるものだと思っています。」
学生時代から予防医療に興味を持っていたという、吉本さんにとっての予防医療とはなんでしょうか。
吉本氏
「予防医療とは、簡単に言ってしまえば『防ぎ得た病気などを防ぐことができる』ということなのですが、それはつまり、防ぎ得た『後悔』をなくすということだとと思います。病気そのものを防げるし、重症化することも防げる。もちろん、早期発見できるということもあります。何よりも本当に病気で後悔したり悲しむ人をなくすことができる。そういう経験をする人をなくしたいという想いが一番強いです。」
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