日本では持続可能な社会の構築を背景に、コンビニの時短営業や企業のフレックスタイム制など、企業レベルで「働き方改革」の取り組みが活発化しています。

企業がこうした改革を進めていく上で重要な視点は、企業活動の維持や「ワークライフバランス」の実現に従業員の健康がなによりも欠かせないということです。

そこで「働き方改革」の一環として注目が集まる「健康経営」の考え方をわかりやすく紹介していきます。

健康経営とは

健康経営のための社内健康イベント

健康経営とは、従業員の健康維持・増進に向けた取り組みが将来的な企業の収益性等を高めるための投資であるという考え方のもと、従業員の健康を経営的視点でとらえ、その管理に戦略的に取り組むことです。

健康経営は、アメリカの臨床心理学者・ロバート・ローゼン博士が提唱した「ヘルシーカンパニー」という概念に基づいています。ヘルシーカンパニーは、従来分断されてきた「経営管理」と「健康管理」を統合的に捉え、従業員の健康管理に投資することで企業の業績向上つなげる考え方です。

健康経営を取り入れ、従業員の健康管理に積極的に関与する姿勢は多くの企業で広がりつつあります。

 

健康経営が注目される理由とは?背景にある社会問題

健康経営に注目が集まる背景には、日本と日本の企業が抱える様々な問題があります。

 

増加する社会保障費

日本は少子高齢化で増加する社会保障費に悩まされています。

2000年は約78兆円だった国の社会保障給付費は2018年には約121兆円にまで膨み、18年間で約1.6に膨れ上がっています

国は社会保障費の増大を解決するために、健康寿命を延伸による「生涯現役社会」の構築を掲げているのです。

 

求められる健康寿命の延伸

健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を意味しています。健康寿命と平均寿命の差は「不健康な期間」であり、この期間が長ければ長いほど多くの医療費や介護給付費がかかります。そのため、健康寿命を延ばすことは現役で働くことのできる高齢者を増やし、社会保障費を軽減する観点から非常に重要です。

国は「生涯現役社会」の構築を実現するには、国民が健康的に働くことが健康寿命に大きく影響すると考え、企業に「健康経営」の導入を推奨しています。

 

ブラック企業への厳しい視線

長時間労働やハラスメントが横行する「ブラック企業」も社会問題化しています。

過度な業務負荷やストレスが従業員の心身コンディションを悪化させることで、休職者・離職者の増加、さらには労災・自殺を引き起こすこともあります。

不健全な労働環境が社会に露呈すれば、消費者や就活生からの企業イメージの悪化はさけられません。少子高齢化でさらなる労働人口の減少が見込まれるなか、人材確保や企業価値向上の観点から健康経営の必要性が広がっているのです。

 

健康経営銘柄

政府は健康経営を推進するためには官民一体となった取り組みが不可欠と考え、健康経営に意欲的に取り組む企業が社会的に評価される仕組みを設けています。

健康経営銘柄とは、経済産業省が東証・上場企業を対象に健康経営に優れた企業を「健康経営銘柄」に選定・公表している制度です。健康経営銘柄に選定した企業を投資家にとって魅力的な企業として紹介することで、企業の「健康経営」を後押ししています。

 

健康経営優良法人制度

健康経営優良法人認定制度とは、健康経営に取り組む優良法人を「見える化」することで社会的に評価を受けることのできる環境整備を目的とした制度です。

健康経営銘柄と比べ、未上場の中小企業や医療法人にまで認定対象を広げているのが特徴です。「中小規模法人部門」と「大規模法人部門」の2部門に分けて認定し、2020年には大規模法人部門で1480法人が、中小規模法人部門では4816法人が「健康経営優良法人」として選ばれました。

 

健康経営ホワイト500

また2020年からは、大規模法人部門で健康経営優良法人に認定された企業のうち、上位500法人が「ホワイト500」として認定されることになりました。

 

健康経営アドバイザー

健康経営アドバイザーとは、健康経営の必要性を普及し、実践へのきっかけを作る推進者です。東京商工会議所が経済産業省から委託を受けて研修・認定を行っています。

東京商工会議所は、特に健康経営を実践的に支援する役割を担う専門人材を健康経営エキスパートアドバイザーとして認定し、東京23区内の企業に派遣する制度を行っています。

 

企業が健康経営に取り組むメリット

企業が健康経営に戦略的に取り組むことで様々なメリットが期待されます。

 

①組織の活性化

心身ともに働きやすい環境を整備することで、従業員のモチベージョンやパフォーマンスが上がります。また、一人ひとりが活き活きと働くことで組織全体の離職率・休職率の低下や、生産性向上にもつながります。

 

②人手不足の解消

不健全な職場環境は休職者や離職者を生み出します。すると、必然的に残りの従業員の業務負荷が増えるので体調不良や現状不満から職場を離れる人を増やしかねません。

また、現代の就活生は福利厚生や「ワークライフバランス」などを重視して会社選びをする傾向にあります。

今いる人材を定着させる上でも、新たな人材を確保する上でも健康経営に取り組むことは効果的です。

 

③企業が負担する医療費の削減

従業員が良い健康状態を維持することで病院を利用する機会が減少します。そのため、健康的な従業員が多いほど企業が負担する医療費を抑えることができます。

 

④業績・企業価値の向上

健康経営を実践し「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」に認定されれば、投資家から高評価を受けることで自社株価の上昇につなげることができます。

また、「ホワイト企業」としてブランディングすることで、消費者やクライアントに対してのイメージアップも期待されます。米国においては、職場における健康と安全性に対する取り組みが高く評価された企業群は市場においても高い評価を得ており、健康経営への取り組みが市場競争力を高めると考えられます。

 

「健康経営」導入から実践までのステップ

①経営戦略・理念にて健康経営を宣言する

まず、組織のトップである経営者が健康経営について理解を深め、これから取り組んでいくことを社内外に表明する必要があります。そのために、従業員の健康推進を経営理念・経営戦略として明文化します。

また、長期的視点に基づいた戦略構想や、経営者自身が模範的な健康状態であることも重要です。

 

②組織体制を構築する

健康経営を実践するには、取り組みを現場で主導する責任者や専門部署の設置が不可欠になります。企業の方針に基づいた具体的な施策を講じ、職場に健康づくり推進の風土を生み出す役割を担います。

 

③具体的な取り組み=「健康投資」を実行する

健康経営の考え方に基づいた具体的な取り組みのことを「健康投資」と言います。

企業の間では様々な施策が行われていますが、大切なのは健康課題を踏まえつつ従業員に配慮して取り組むことです。

 

取り組み課題を決めるために…

各種施策を打ち出すためには、まず従業員の健康状態を調べる必要があります。

定期健康診断の結果や、従業員に歩数計を配布して日頃の活動量を計測するなど、様々なデータを分析して従業員の健康状態を把握します。

得られた情報から「40代以上の社員の肥満率が高い。」「特定の部署にストレスの多い従業員が集中している。」などの具体的な健康課題が浮かび上がり、それをふまえて必要な取り組みの計画・立案に移ります。

 

④取り組みを評価・改善する

健康経営に実効性をもたせるには、社内での取り組みを評価・改善することが重要です。

 

「従業員の健康診断結果に改善は見られるのか。」

「改善されたことと施策に相関関係はあるのか。」

 

というように施策の効果を検証することで、取り組み内容を改善したり新たに有効な施策を打ち出したりします。従業員の健康づくりは短期間で効果が出にくいので、継続して取り組めるようにPDCAが正常に機能する組織体制が不可欠です。

 

最後に、①~④を行う中では労働基準法等の法令順守とリスクマネジメントを欠かさないようにしましょう。

 

具体的な健康経営の取り組みとは?

従業員の健康課題の改善や健康増進を実現するには設備や制度を設ける以外にも様々な方法があります。例えばセミナーを開催することで従業員自ら健康に気を使えるように意識改革を行うのも効果的な取り組みの一つです。

 

健康リテラシー向上のための取り組み

  • 食や運動にかかわる社内セミナーの開催
  • 社内報の発行

企業内の設備投資

  • 健康的な社員食堂、ジム、仮眠室などの設置

  • 観葉植物を置く、空調の温度・湿度を調整する、リラクゼーションBGMを流すなどのオフィス環境の整備。

勤務時間・勤務形態に関する取り組み

  • フレックスタイム制やリモートワークの導入
  • 育児休暇や介護休暇を取得しやすい環境整備

従業員向けの社内健康イベント

  • マインドフルネスやストレッチを実施

※詳しい取り組み例はこちらの記事もチェック↓

健康経営に欠かせない社内イベントとは? 社員のメンタルヘルス・体調をケアして組織を活性化

 

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まとめ:健康経営は社会貢献のひとつ

企業にとっての健康経営は企業の生産性向上や業績向上のための経営手法の一つです。しかし、日本人が長い人生の多くを労働に費やしていることを考えると、従業員の健康づくりへの取り組みは個人のQOL(生活の質)や 健康寿命の延伸に大きく貢献します。

 

健康経営の重要性や意義をしっかりと理解し、健康経営の第一歩を踏み出しましょう。

参考文献
  • 岡田邦夫『「健康経営」推進ガイドブック』(2015)経団連出版
  • 上村紀夫『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?』(2020)クロスメディア・パブリッシング

情報提供元:BUSINESS LIFE
記事名:「健康経営とは?メリットや導入ステップをわかりやすく解説!