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女性のがん罹患者数は特に働き盛りの現役世代である30代〜40代においては男性よりも多く、仕事と治療の両立が今、課題となっているそうです。
そんな中、がん治療によって脱毛が起きることは良く知られていますが、皮膚障害が生じ、肌トラブルを抱える方も多いといいます。
このような悩みに対して、セルフでできる肌のマッサージ方法などを実演しながら紹介する「肌ケアセミナー」が第一三共ヘルスケア株式会社主催で行われました。
今回で8回目を迎える、がん患者のQOL向上を目的としたセミナーの内容をご紹介します。
「肌ケア」を行うことで外見だけではなく内面にもポジティブな変化が生じることが明らかに
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セミナーのはじめに、今回の主催者である第一三共ヘルスケアの広報部 薬剤師の上吉川奈央さんより、現在または過去にがん罹患経験のある働く女性を対象にした「がん治療中の肌ケアに関する意識調査」の結果が紹介されました。
がん治療でつらかった症状として、約5人に1人が「肌トラブル」と回答。その内「何か対策をしたいと思うものの、どんな情報が自分に適しているかわからなかった」という人が約6割もいることがわかったそうです。
さらに治療中の肌ケアで効果を実感できた人の内、約8割が人とのコミュニケーションや治療により「前向きになれた」「QOLが向上した」と回答。
肌ケアには外見だけではなく、内面にもポジティブな変化をもたらすことがわかったそう。
治療中から取り入れたい「肌ケア」の3つの重要ポイントとは?
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続いてスキンケアサポート看護師として活躍する東島愛美さんが、『抗がん剤治療中から取り入れたいスキンケア』について、肌ケアのポイントを語ってくれました。
抗がん剤治療中は、皮膚の中で最も新陳代謝が活発な表皮の一番下にある「基底層」がダメージを受けることで皮膚の新陳代謝が鈍くなり、皮膚トラブルの原因に。特に皮脂や汗の分泌が悪くなることで乾燥肌になりやすいそう。
こうしたトラブルを予防するために、治療開始次第なるべく早くスキンケアをはじめることが大事で、中でも「保清・保湿・保護」の3つのポイントをおさえることが重要だといいます。
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保清は洗うケアのこと。低刺激な弱酸性、アルコールフリーの洗浄剤を用いて泡で洗うことが基本ですが、皮脂の多い部位や軟膏を塗っている部分は洗い残しが刺激の原因になることがあります。
そのため、柔らかいタオルなどで優しく洗いつつしっかりと汚れを落とすことも肌のためになるのだとか。
保湿剤は水気を拭き終えたらできるだけ早く塗ることが大事で、季節や肌状態に合わせてローションやクリームなどを使い分けるといいそう。また、保湿剤を塗る際には縦方向ではなく、肌のキメに沿って十分な量を横方向に塗り広げるのが正解。
保護としては、一年を通して紫外線対策を行うことが必要だそうで、ノンケミカルの製品を選び、できるだけ日焼け止めを塗ることが肌のバリア機能を守ることに繋がるそうです。
肌の状態を健やかに、心の安定も得られる「肌ケア」とセルフエステ体験
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治療による副作用で起こる様々な外見変化の悩みをケアする活動を行っている、アピアランス・サポート東京 アピアランス・サポート相談室 室長の村橋紀有子さんは、『治療と仕事を両立するための肌ケア』をテーマに語ってくれました。
肌ケアによって治療生活の快適度向上に繋がるだけではなく、自信や安心感、また心の余裕や人間関係の充実が図れるそう。
また肌ケアで自分をいたわる時間を持つことで、心身のリフレッシュになり、ストレス軽減効果も得られるといいます。
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さらに静脈とリンパの流れを正常に促す、医師が考えた解剖医学に基づいた施術「巡活マッサージ」の実践も行われました。
このマッサージを行うことで、むくみの改善や、血行が促進されるなどの効果が期待できるとのこと。
注意点として、まず手を十分に保湿し、柔らかい手にしてからフェイスケアを行うこと、たっぷり保湿剤を使うこと、力加減はゴムのチューブを押すくらいに留め、三指(人差し指、中指、薬指)を肌に密着させて顔の左右片側ずつ行うことなどが解説されました。
肌(身体)をいたわることが、心をいたわることにも繋がり、改めて心身は切っては切り離せないもので、共に大切にしなければならないということを実感。参加者の皆さんは熱心にお話を聞いたり、メモを取ったり、じっくりとマッサージに取り組んでいる姿が印象的でした。
がんは決して他人事の病気ではありません。健康を自認している方も、肌ケアを通して自分と向き合う時間を持ってみてはいかがでしょうか。