人生で「何かを学んだ」「気づきを得た」という瞬間はお持ちだろうか?
もしお持ちなら、きっとその瞬間は、あなたにとって何か印象的な出来事を体験した時だったのではないだろうか。
他の人間から繰り返し繰り返し注意されても、まったく身につかなかったことでも、自分自身の身に何らかの出来事が起きた瞬間、すんなり理解できてしまう。
人がこうした性質を持っているからこそ、架空の出来事を「自分ごと」として体感可能なVRは、教育と親和性が高いといえる。
このため、教育現場へのVR普及はもう始まっている。
この記事では、そんな事例をご紹介しよう。
仮想のことを現実として体感させられるのがVR教育の強み
筆者は専門学校でゲーム企画やゲームプログラミングの講師をすることもあり、義務教育の現場ではないものの、教育現場の一員といっても差し支えない存在だ。
そんな筆者が講義の際に「難しいな…」と思うことが、実物を見せずに言葉で説明しなければならない…というシチュエーション。
たとえばこの記事でもそうなのだが、言葉(文章)で「VRでどんな体験ができるのか?」という説明したとしても、実際に「VR」を体験してもらうことには敵わない。
だから、講義の場では極力、実物や実物に近いものを用いるよう努力する。
でも、努力ではどうにもならないというケースもある。
ゲーム企画やゲームプログラミングの授業ではさすが出てこないが、例えば「ニューヨークにある自由の女神」の実物を授業で見せろといっても、それは無理な話だ。
だが、そんな無理を可能にしてしまえることが、VRの強みだ。
見ることが難しい現象や物体を3Dモデルで学習!「zSpace」
実物を見せることが現実的ではない…まさにそんな状況を覆せるのが、「zSpace」の提供する教育向けのVRツールだ。
独自のコンピューターとメガネ、スタイラスペンとアプリを組み合わせることによって、ホログラム的に3Dモデルを表示できる。
このツールによって、自国には存在しないような生物を観察することもできるし、科学実験のように危険が伴う授業を、一切の危険なく体験させることも可能だ。
授業で教えられる情報の量が圧倒的に増えるため、より豊かな教育ができるようになる。
海外の光景をリアルに体験できるバーチャルトリップGoogle「Expeditions」
実物を見せることが難しいといえば、海外の風景もそのひとつだ。
「リアス式海岸」に「砂丘」、「熱帯雨林」などなど、授業として出てきたので単語としては記憶しているものの、実際にこれらを体感したという人はどれだけいるだろう。
または、「ピラミッド」に「ピサの斜塔」、「サグラダファミリア」に「アンコールワット」など様々な遺跡についても同様だ。
地理や歴史の授業などで習ってきたものの多くは、言葉と写真では知っているものの、体感しているという人は少ない。
だがVRであれば、体感することが可能だ。
Googleの「Expeditions」は、まるでその場所にいるかのように世界のさまざまな場所を体感できる教育向けVRアプリ。
このアプリによって、生徒たちは世界にある自然や史跡について、より深く学ぶことが可能になる。
「これから生徒になる子たちはズルい!」と思ってしまったあなた、大丈夫!「Expeditions」はスマホアプリとしてリリースされているので、スマホとスマホVRゴーグルがあれば誰でも利用可能だ。
何かを学ぶのに、年齢は関係ない!
バーチャル空間にある教室で遠隔授業!Immersive VR Education「Engage」
教材として作られている「zSpace」や「Expeditions」に対し、教育環境という面から作られているのが、Immersive VR Educationの「Engage」だ。
「Engage」は、VRを使ってバーチャル空間に教室を作りだす。
生徒たちはVRデバイスを用いることで、家にいながらにして、教室での授業が受けられるというわけだ。
インターネットを使って、遠隔で学校教育を受けられるようにしようという試みはこれまでもあった。
ただ、教育には学問を教える「学習指導」と生活習慣や生活態度などを教える「生活指導」という2つの側面があり、「生活指導」の面で遠隔授業には課題が残されていた。
主な課題のひとつは「集団生活に必要なコミュニケーションスキルが育成できないのではないか」という点だ。
しかし「Engage」であれば、バーチャル空間とはいえ教室が再現され、教室内での出来事を自分事として体験できるため、「生活指導」の面でも期待が持てるのではないだろうか。
なお、Immersive VR Educationは、「アポロ11号の月面着陸」など、歴史上の出来事を歴史上の人物の視点から体験できるVRコンテンツも配信している。
ただ歴史上の出来事の内容と年号を覚えろと言われてもなかなか記憶できないが、実際に自分が主人公として歴史上の出来事を体験できれば、確実に理解が深まるだろう。
疑似的に再現した状況で言語学習!ATi Studios A.P.P.S.「Learn Languages VR by Mondly」
机の上で学ぶより、実際に体験した方が効果が高いというものは多いが、中でもとりわけ効果が見込めるものがコミュニケーションだろう。
クライアントへのプレゼンにせよ、セミナーの講師にせよ、恋人との初デートにせよ事前にどれだけ練習していても、やはり実際の体験には敵わない。
このため、他国の言語を学ぶのであれば、実際にその言語が必要なシチュエーションを再現するのが一番だ。
とはいえ、外国語の教師に架空の役割を演じてもらう…というスタイルでは、どうしても没入できない気恥ずかしさを感じてしまう。
そこで、ホテルやレストランなど、外国語が必要となるシチュエーションをVRによって再現しようというのが「Learn Languages VR by Mondly」だ。
VRによって会話相手だけでなく、空間まで再現されているため、現実のシチュエーションに近いシチュエーションで言語を学ぶことができる。
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新たな世代は、どんな価値を生み出していくのか?
現在、コンピューターがあるのは当たり前という時代に育った世代が、VR技術によって様々な革新を起こしつつある。
このままVRが普及すれば、教育はVRで疑似体験するのが当たり前という世代がいずれ出現するだろう。
その世代はどんなサービスやプロダクトを生み出し、世界をどう変えていくのか?
先の話かもしれないが、とても楽しみでならない。
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