4月11日、Greenlight InsightsとRoad to VRがVR業界の情報をまとめたレポートを新しく発売した。『2017年春のバーチャルリアリティ業界レポート』(”Virtual Reality Industry Report, Spring 2017″)と題されたこのレポートの全文はGreenlight Insightsのサイトで販売されている。
108ページのレポート全文は2,495ドル、予測部分のみを抜き出した23ページの要約は995ドルとなっている。VR業界のエグゼクティブ向けとされる情報が掲載されているだけあって高価だが、このレポートの執筆にも参加している海外メディアRoad to VRがその内容を一部公開している。
その記事によれば、短期分析ではVR産業全体の市場規模が2017年の末までに72億ドル(7,859億円)にまで成長するという。
予測されるVR産業全体の成長
VR産業全体は成長を続けると予測されているものの、Greenlight Insightsは2017年のVR産業が急激に大きくなるとは考えていないようだ。短期の予測は控えめであり、2017年末の段階でVR産業全体が72億ドルの規模と予想している。
そのうち47億ドルがVRヘッドセットに由来するものだ。その他のVR関連市場はまだ未成熟であり、全て合わせてもVRヘッドセットの半分程度と予測されている。
しかし、中長期的な視点ではVR産業がグローバルでメジャーな市場になると考えている。2021年までの予測になると、世界での収益は748億ドル(8.2兆円)になるとされている。
この段階になると、VRはヘッドセットだけのものではなくなっている。消費者向けのVRヘッドセットを用いた家庭でのVRだけでなく、企業が取り入れているVRやロケーションベースのVRアトラクションも含んでの数字だ。
Greenlight Insightsの予測通りならば、堅実にVRヘッドセットを売り上げながらVRが使われる場面が増えていくようだ。市場規模の小さい2017年から2019年にかけては年ごとにほぼ倍の規模にまで成長し、その後はやや伸びが鈍化する見込みとなっている。
そうは言っても、年間20億ドル程度の成長という非常に前向きな予測だ。ここ数年のVR産業の成長から見ると、甘すぎるとも言えない妥当な数字ではないだろうか。
Greenlight InsightsのCEO、Clifton Dawsonは2016年のVRヘッドセットの売上についてこう話している。
「2016年の世界でのVR業界を見ると、いくつかのハイエンドメーカーが発売したVRヘッドセットの初期売上は期待されていたほどには多くありませんでした。一方で、PSVR、Gear VR、そして各種の低価格なヘッドセットの売上は順調に推移しました」
また、今後の動きについても語った。Dawsonが言及したクリティカル・マスとは、商品の普及率が跳ね上がるための分岐点となる普及率のことだ。
ある一定のラインまでVRユーザが増えればコンテンツも充実するので、普及はより加速していくだろう。Greenlight Insightsがどの程度の台数をVR機器のクリティカル・マスと考えているのかは、この記事では明らかになっていない。
「この先に、激動のときが近づいていると思います。それでも、私たちの分析では多くの市場で2019年までにVRのクリティカル・マスが達成されると見ています。2019年から爆発的な普及が始まり、5年後には規模の大きなグローバル市場へと成長するでしょう」
各分野の予測
このレポートでは、VR業界全体の成長に関する予測以外にも分野ごとの細かな予測が行われている。また、2017年のVRに影響を与えそうな事柄についての分析も掲載されている。
例としては、以下のようなものがある。
業界の活性化
Windows 10を搭載したマイクロソフトの新しいVRヘッドセットが、様々な需要を呼び起こす。VR関連のハードウェア、ソフトウェア、そして各種サービスが発展する。
VRデバイス価格の下落
2017年の後半には、トップPCメーカーが新しいハードウェアプラットフォームを提供する。これによって手頃な価格でヘッドセットやVR対応PCが購入できるようになるだろう。
消費者にとって手を出しやすい価格設定をする助けとなるため、デバイス価格の下落は業界のステークホルダー全体にとってメリットがある。
ロケーションベースVRの発展
2015年に登場したロケーションベースのVRが消費者に人気だ。稼働率が上昇しており、2021年にはロケーションベースのVRだけで12億ドルの規模になると見込まれる。
ロケーションベースのVRについては特に、Greenlight Insightsで中国市場の分析を行うアナリスト、Eddie Louがコメントしている。
「VRの新規ユーザは、デバイスを購入するのに数百ドルから数千ドルを使うことになります。彼らはその前に、ロケーションベースのVRアトラクションを通してVRに触れることもできます。ロケーションベースでの体験は家庭用のVRシステムを購入するよりも安く楽しめて、しかも質の高いものです。
全身を覆うタイプのハプティックスーツ、感覚を再現するシミュレーター、乗り物を運転するための特殊なコントローラーといったニッチなアクセサリー類はロケーションベースのVRで活用されていくのではないでしょうか。一般の消費者はあまり高価なハードウェアを購入しないからです。
VRコンテンツスタジオとハードウェアベンダーの双方にとって、ロケーションベースのVRはビジネスのチャンスとなります」
2017年にはマイクロソフトの技術が使われたヘッドセットが各メーカーから発売されるはずなので、その影響はかなり大きいだろう。他のプラットフォームからも対抗の動きが出ることが予想されるので、業界全体の活性化に繋がるに違いない。
また、ショッピングセンターやアミューズメント施設にロケーションベースのVRが開設される例も出てきている。これらは多くの消費者がVRに触れるきっかけになり、同時に個人では購入しにくいような関連デバイス(本格的なハプティックスーツや歩行型デバイスなど)の販売先ともなる。
2017年も、VRを巡っては面白い動きが出てきそうだ。
参照元サイト名:Greenlight Insights
URL:http://www.greenlightinsights.com/reports/2017-virtual-reality-industry-report
参照元サイト名:Road to VR
URL:http://www.roadtovr.com/global-virtual-reality-industry-reach-7-2-billion-revenues-2017/
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