スマートフォンを使っていながら、「LINE」や「Twitter」、「Facebook」といったSNSをまったく使わないという人は多くない。
もはや、SNSを使っているという意識すらなくなっているという人が大半ではないだろうか。
つまりSNSは、人々にとって当たり前の存在となった。
そんな当たり前の存在が、VR技術によって変化しようとしている。
この記事では、これまでのSNSの歴史を踏まえつつ、SNSがVRによってどう変わっていくかをご紹介したい。
人間関係をインターネットで再現する仕組み「SNS」とは?
そもそも「SNS」とはどういうものかというと、社会的(=ソーシャル)なネットワークを作ることができるサービスのこと。
Social Networking Service(=ソーシャルネットワーキングサービス)の頭文字をとって「SNS」と呼ばれている。
社会的なネットワークというとちょっとピンとこないかもしれないが、要するに「人間関係」のこと。
なので、友達だとか恋人だとか、社員、サークルメンバー、知り合い…等々といった人と人との関係を、コンピュータとインターネットを使って管理したり作ったりできるようにしましょう…というサービスが「SNS」といえる。
このため「SNS」には「友達リスト」や「グループ作成機能」といった、誰と誰がどういう関係にあるかを登録するための機能が用意されている。
足跡機能からソーシャルゲームまで~これまでのSNS
「GREE」と「mixi」が開始!日本でSNSが話題となった2004年
日本においてSNSが話題に上ったのは2004年のこと。
この年、現在もSNSとして提供され続けている「GREE」と「mixi」が開始された。
とはいえ、これが初のSNSかというとそういうわけではなく、2002年にはSNSの主要機能である友達同士のリンク機能やプロフィール機能などを持ったサービスとして「myprofile.jp」が生まれている。
また、海外においては友人リストを管理可能なサービスとして「SixDegrees.com」が1997年には提供開始、さらに友人リスト機能は持たないまでも、それ以前から人との関わりや交流について、コンピュータとインターネットを使った仕組みが模索されていた。
アバターとセカンドライフ
「友達リスト」をはじめとする人間関係登録機能にならぶSNSの重要機能として「アバター」機能が挙げられる。
現実世界で人間関係を築くとき、自分が相手にどのような印象を与えるかは非常に重要だ。
だからこそ人は服や髪型に気を使い、身だしなみを整える。
これはSNSの中においても同様。
そして、SNSの中においてファッションや身だしなみに該当するのが「アバター」だ。
「アバター」という言葉はもともとサンスクリット語の「アヴァターラ」で、「(神や仏の)化身」という意味を持つ。
この「アヴァターラ」が転用され、SNS内で「アバター」として使われている。
その起源は古く1985年、「ルーカスフィルムズ・ハビタット」から。
つまりインターネット以前、パソコン通信の時代から存在していた機能なのだ。
ところで「アバター」といえば、2009年に「タイタニック」のジェームズ・キャメロン監督によって作られた3D映画作品のタイトルでもある。
映画「アバター」には、別の惑星で活動するための仮の肉体を用い、別の自分として振る舞う…という設定があるのだが、これはまさに「化身」という「アバター」本来の使い方になっている。
この映画「アバター」のように、アバター機能を極限まで進化させたSNSが、「セカンドライフ(Second Life)」だ。
「セカンドライフ(Second Life)」は、リンデンラボ社によって作られたサービスで、人間や背景など世界を丸ごと3DCGで作り上げた“インターネット上の仮想世界”で生活を送れるというもの。
「仮想世界で暮らせる」というコンセプトだけ見ると、「ウルティマオンライン」をはじめとするオンラインRPGと同じもののように思える。
しかしオンラインRPGと違ってゲーム側から要請される目的は存在せず、「セカンドライフ(Second Life)」上のあらゆる品物をユーザーがデザインしてアップロードでき、さらには販売することもできる…など、自由度の面で圧倒的な違いがある。
アバターからソーシャルゲームへ
「アバター」は機能として人々に受け入れられただけでなく、ビジネスモデルとしても優秀な実績を残している。
PCよりもよりも携帯電話(フィーチャーフォン)の方でインターネットを使うユーザーの方が多かった日本においては、次第にSNSの主戦場がPCから携帯電話(フィーチャーフォン)へと移り変わっていったが、ここで成功を収めたビジネスモデルが「アバター」だ。
2006年にスタートした「モバゲータウン(現モバゲー(Mobage))」は、無料でミニゲームを提供し、収益化手段として「アバター」の販売を取り入れた。
ゲームのスコアランキング上に「アバター」と自分の名前が表示、スコアランキングを通じて攻略方法の共有をはじめとするコミュニケーションが生まれるように設計することで、「アバター」での収益化に成功。
「GREE」をはじめとする他SNSも、この手法を収益化手段として取り入れていった。
また、「モバゲータウン(現モバゲー(Mobage))」が開始した「ミニゲームのスコアとSNSを絡めて収益化する」という方向性は、徐々に変化しつつ、2009年「怪盗ロワイヤル」というゲームのヒットによって「ソーシャルゲーム」というジャンルに至る。
それまでの「モバゲータウン(現モバゲー(Mobage))」のゲームは、あくまで個人のゲームスコアを元に人間関係やコミュニケーションが発生する…という形態だったが、「ソーシャルゲーム」はその名の通り「ソーシャル」…人間関係がゲームプレイにとって重要。
「ソーシャルゲーム」はコミュニケーションそのものをゲームシステムに組み込んでおり、具体的には沢山の仲間がいて協力しあった方が、よりゲームが有利に展開する…という形で設計されているのだ。
「ソーシャルゲーム」は一時期社会現象を引き起こすレベルで流行したが、現在はブームが去った状態にある。
VRがSNSをどう変えるのか?未来のSNS
現在のSNSは「LINE」や「Twitter」、「Facebook」といった大手SNSが大量のユーザーを抱えていて、大きな動きのない状態…停滞期といっていいだろう。
そんな中、新しい動きとして発生しつつあるのがVRを使ったSNSだ。
Facebookと連携!FacebookのVRデモンストレーション
まずは、現SNS市場にとって大手の一角である「Facebook」の取り組みから。
「Facebook」は2016年10月6日、カンファレンスにてVRシステムのデモンストレーションを行った。
このデモンストレーションではVR空間でチャットをしたり、トランプのようなカジュアルなゲームをしたり、チャンバラごっこをしたり…といった他、VR空間にいない人との動画通話も行われた。
「Facebook」が提供しているサービスなので、VR空間内のスクリーンショットを即座に「Facebook」へ投稿…ということも当然のように可能な模様。
「Facebook」は「Oculus Rift」を販売するOculus社を傘下に収めているため、ヘッドセットには「Oculus Rift」が用いられている。
今すぐにでも体験可能!Altspace VR
既に提供済みのVRSNSには「Altspace VR」が存在している。
「Altspace VR」は「HTC Vive」と「Oculus Rift」の両方に対応しており、Steamから無料でダウンロード可能だ。
VR空間でのチャットや、ミニゲーム、自撮りといった機能を提供している。
既にリリースされているサービスなので、VRデバイスさえ所有していれば今すぐ体験可能!
ただ、海外初のサービスということもあって現在は海外ユーザーが多いため、英語を話せないと楽しむことは難しいかもしれない…。
セカンドライフのリンデン・ラボが放つSansar
これまでのSNSの歴史の流れで触れた「セカンドライフ(Second Life)」を作ったリンデン・ラボ社がリリースしようとしているVRSNSが「サンサール(Sansar)」。
クリエイターが自由に仮想世界を作り、販売できる…というコンセプトを聞くと「VRに対応したセカンドライフか?」と思ってしまうものの、「サンサール(Sansar)」は「セカンドライフ(Second Life)」と違いプラットフォームとして位置づけられている。
つまりSteamやApp StoreやGoogle Playといったプラットフォームと同じ位置づけなので、ゲームやアプリを作るのと同様に、クリエイターがそれぞれ好きな仮想世界を作れるようだ。
「ウチは原始時代を楽しめるジュラシックパーク的な世界を作る」「それなら私はモンスターがうろつく剣と魔法のファンタジー世界を作る」…といったことが可能ということだろう。
「セカンドライフ(Second Life)」はひとつの世界をクリエイターが共有して作っていったので、大きな違いがあるといえる。
「サンサール(Sansar)」は現在クローズドテスト中だが、2017年上半期にはすべてのユーザーがアクセスできるようになるとのこと。
VRSNSヒットの可能性~コミュニケーションの重要性がより高まる未来
先進国の経済が停滞しつつある中、生活に必要なモノをお金で調達するのではなく、シェアリングエコノミーのように人と人との繋がりや評価をベースにして調達する…というコンセプトのものが普及しつつある。
このままシェアリングエコノミーが普及を進めていくとしたら、コミュニケーションの重要性が高まっていくのは間違いないだろう。
そんな中、新しいコミュニケーションのあり方を提案できるVRSNSには、まだまだ多くの可能性が秘められている。
TwitterやFacebookなどこれまでのSNS同様ビジネスに活用される可能性も高いので、今後目が離せない存在といえるだろう。
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