
“Gardens of the Anthropocene”Tamiko Thiel(2016)
上記の画像は、タミコ・ティエルの作品だ。2016年、シアトル美術館での展示用に制作された。
この作品では、実際の気候変動を元に想像された未来の植物の姿を見ることができる。実在する植物が実際の気候変動に基いて進化を遂げているため、イェール気候連合からも注目されている。
気候からの影響も考慮されてはいるのだが、実際にはSFチックな様相を呈している。どのような植物が作り出されたのか、確認していこう。
登場する植物
海藻のムチを持つドローン
海藻には、120mにもなるものがある。かつて、ネイティブ・アメリカンはこの植物を釣り糸やロープの代わりに使ったという。その植物は深海で成長するのだが、未来では水陸両用のドローンのように進化している。
ドローンとなった植物が公園を飛び出して構造物を破壊し、交通標識を捕食しているシーンが上の画像だ。一つめからインパクトが強すぎて何を言っているのかわからないと思うが、芸術とはそんなものである。
モデルとなった海藻は実在するが、どういう進化をすればこんなものが登場するのかは説明されていない。この植物は繁殖力が強いらしく、他の植物を写した画像にも写り込んでいる。
https://themarinedetective.com/category/algaeseaweed/
http://www.primitiveways.com/bull_whip_kelp.html
アンテナを持つゴデチア
この植物は、春よさらばという別名を持つ花、ゴデチアが乾燥に適応して進化した種だ。水が少ない環境でも生きられるように、葉は多肉植物のように分厚くなり、水分を蓄えられるようになった。
一方で、雌しべと雄しべは一体化してアンテナ状の構造を持つに至った。この植物は携帯端末の存在を感知する能力を持っており、そのアンテナで電波を受信して栄養とするらしい。不気味な挙動だが、今のところ人間に悪影響を及ぼすことはないようだ。
レーダーカマッシア
この花は、カマッシア属の一種だと思われる。ゴデチア同様に水の少ない環境に適応し、葉は分厚い灰白色の塊となっている。しかし、それ以上にこの種を特長付けているのはその「動き」だ。
この植物は近づく物体を感知し、まるでレーダーアンテナのように回転を始める。この動きによって、他の青いカマッシア属の花と区別できる。
カマッシア属には有毒なものがあるため、この種も毒を持っているかもしれない。
巨大赤潮
温暖化した海面上に発生する赤潮。漁業、特に養殖に大打撃を与えるこの現象は、プランクトンの大発生によって引き起こされる。原因となるプランクトンには強い毒性があることも見逃せない。
この作品に登場する植物の中でもひときわグロテスクなこの赤潮は、進化したプランクトンによって発生する。海面から浮遊して移動し、上の画像のように地上にもその生息域を広げるという。
成長した群体は球状の塊となり、多くの胞子を撒き散らして増殖する。その祖先と同様に猛毒を持つため、傷つけることは避けなくてはいけない。
作品の持つメッセージ
この作品では、気候変動、中でも地球温暖化とそれに伴う海面の上昇を警告しているようだ。どこにそのメッセージが隠されているのかよく分からない部分もあるが、見るものを驚かせる効果はあったのではないだろうか。シアトル美術館での展示は2016年に終了してしまっているが、地球温暖化を警告する作品として1月にイェール気候連合が取り上げた。
タミコ・ティエルのオンラインポートフォリオでは、動いている映像も見ることができる。海藻ドローンの物理法則を無視した機敏な動きと、赤潮のグロテスクさは必見だ。
参照元サイト名:タミコ・ティエル オンラインポートフォリオ
URL:http://tamikothiel.com/gota/index.html
参照元サイト名:Yale Climate Connections
URL:http://www.yaleclimateconnections.org/2017/01/artist-exhibits-dystopian-vision-in-seattle/
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