学校法人電子学園情報経営イノベーション専門職大学(iU)は、同大が研究してきた「ラーニング・アナリティクス」に基づき、日本電気株式会社(NEC)のXR技術および「NEC感情分析ソリューション」を活用することで、”学生個人ごとの最適な学びと新しい教育手法の提供”を目指すため、「仮想空間授業の実証実験」を実施しました。
メタバース時代における新しい「学び方」へ
受動から能動へ「学び方」が変化!実証実験が実施された背景
今回、電子学園情報経営イノベーション専門職大学(iU)と日本電気株式会社(NEC)が共同で、メタバース時代の新しい教育方法を模索する「仮想空間授業の実証実験」を実施しています。
iUでは、学習とそれが生じる環境を理解し最適化することを目的として、学習者とその状況についてのデータを測定・収集・分析・報告するという「ラーニング・アナリティクス」に取り組んでおり、その中で特に大学の学士課程教育では、従来の”知識伝達”に重きを置く「受動的な学修」から、教員と学生が”対話”し知的に成長する場を作ることで、学生が”主体的”に問題を発見し、解を見出していく「能動的学修(アクティブ・ラーニング)」への転換が求められていることが明らかになっています。
この「アクティブ・ラーニング」とは、学生を学習過程に従事させる全ての教育方法、また学生が有意味な学習活動に参加し、自身の学習活動について考えることを求めるものと定義されています。
このような学習を取り巻く環境の変化から、高等教育機関において「主体的・対話的で深い学び」に関する実践が様々になされているものの、”「主体的な学び」と「対話的な学び」から「深い学び」へつなげる”という「学び方」の転換は、新しい学習指導要領でも重視されています。
これは高等教育機関だけでなく、初等中等教育機関などの幅広い教育現場で、新しい「学び方」が求められているということを示しており、このような「主体的・対話的で深い学び」を指導するためには、
・学生が学習に対して興味をもって参画しているのか?
・対話にどの程度関与しているか?
といったことを、教員が”迅速かつ定量的に把握する”ことが必要となることから、今回の実証実験が実施されています。
仮想空間授業の実証実験とは?
実証実験の概要について
今回の実証実験では、「仮想空間の構築」と「行動データやバイタルデータの取得および分析」をNECが、「仮想空間での学生参加型授業の実施」と「取得データの有効性の評価」をiUが担当しています。
「仮想空間」で実施される授業には、物理的制約が少ないというメリットがあり、そのような環境で実施された授業の内容は
・論理的思考力
・問題解決力
・数量的スキル
・情報リテラシー
・コミュニケーションスキル
などを育成することに焦点を絞ったものとなっています。
実証実験の評価について
今回の実証実験では、
・VRゴーグルから取得した視線や会話などの行動データ
・ウェアラブルデバイスから取得した心拍変動データ
を「NEC 感情分析ソリューション」を活用し、”感情変化”や、”覚醒度”、”会話量”を時系列に表示させることで、学生個々の”授業への集中度”や”興味を持ったポイント”などを「可視化」することに成功しています。
これらの可視化されたデータは、進行中の授業で学生指導に活用できる可能性も確認されています。
ここで使われた「NEC 感情分析ソリューション」は、NECが展開する、ウェアラブルデバイスを用いて生体情報を取得し、実証協力者の感情推移をグループ単位、個人単位でグラフィカルに表示するクラウドサービスです。
授業を実施したiUの寺脇 由紀 准教授、片桐 雅二 教授、鎌谷 修 教授による評価
汎用的技能、態度・志向性、創造的思考力などの育成のために、高等教育では、学生が主体的に取り組める活動や、教員や他の学生との対話の機会を用意するといった取り組みが活発化しています。
しかしながら、学生は多様であり、個々の学生の関心や意欲を引き出せているのかを把握することは難しく、その指導方法も教員の経験則に依存していました。
本実証における行動データやバイタルデータからの分析は、多様な学生への適切な指導の支援となり、より進化したアクティブラーニングへ客観的な指標を与えることができるだけでなく、学生個人に適した教育や教材を提供するアダプティブラーニング(※)へ寄与すると考えられます。
また、教員自身の教育実践への振り返りとして、講義内容や教材が教師の意図した通りの効果を発揮できているか、個々の教員の教育改善へ活用できる可能性があります。
今後の展開
今回の実証実験で得た結果をふまえ、iUおよびNECでは、さらなる実証を重ね、
・学生個々の分析に有用となるデータを特定する
・XRコンテンツとデータ分析を活かす授業設計の枠組みを開発する
・ローカル5Gを活用しさらに高度なXRコンテンツを利用する
・仮想空間における多人数の同時体験を実現する
・遠隔地とのシームレスな授業参画を実現する
といったことが計画されています。
これにより、”教員の負荷軽減”や”学生の学習意欲および学習理解度の向上”に寄与するだけでなく、将来は初中等学校の教育へ展開することで、「学びの多様化・最適化」へ向け、XR技術やローカル5Gなどの先進技術を活用し仮想空間を用いた協働的な学びの機会の提供や、データ活用による個別最適な学びの支援につなげたいとしています。
まとめ
iUおよびNECは共同で、学生個人ごとの最適な学びと新しい教育手法の提供を目的とした、仮想空間授業の実証実験を実施しました。
この実証実験で、学生個々の授業への集中度や興味を持ったポイントを迅速かつ定量的に把握することに成功しています。
両者はさらなる実証実験を重ね、メタバース時代における新しい学び方の提供を目指すとしています。
先生が、各生徒の集中度を数値で把握できる時代がくるなんて、これからの子供たちはどういう学習環境が広がるのかなとワクワクするような気持と、自分が生徒の時でなくて良かったとちょっと安心するような気持が複雑に交差するようなニュースですね。
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