2016年9月26日に株式会社VRデザイン研究所 株式会社WinWinWonder12主催のもと開催された「第2回VRビジネスフォーラム2016」に参加してきました。
参加者はこれからVRを絡めた何かを始めたいと考える各社が集結。50名の定員に対してほぼほぼ満席で、比較的年齢層の高い方々が集まった。
イベント概要
VRコンテンツの体験会と合わせ、株式会社エクシング、株式会社DMM.com、FAMIKU社のVR事業担当者たちが登壇。
モデレーターにはD4DR株式会社の藤元氏が務めた。
タイムテーブル
18:00開場 | VRコンテンツ体験会とライトニングトーク |
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18:45 開会 | 【1部・Report&Techコーナー】 東京ゲームショウ2016 &日本バーチャルリアリティ学会大会 (20周年記念)の最新VRリポートと☆噂のMR機器ソフト開発リポート 【2部・特別講演】 中国のVRビジネスの現状とFAMIKU社の取り組み 【3部・講演&VR先進企業事例紹介】 ゲーム以外のVRエンタメコンテンツの可能性と企画の重要性 DMM.のVR動画プラットフォーム戦略 【4部・パネルディスカッション】 中国と日本におけるVRの新ビジネス&サービスのヒント |
登壇内容
月田直樹氏から最近のVR事情のまとめ
まずは株式会社VRデザイン研究所の月田直樹氏から最近のVR業界の動向について解説。
日本VR学会の舌の動きを認識する研究では、口の動きと舌の動きのトラッキングをVRに応用できるのではないか、など可能性を探った。
東京ゲームショウのVRブースの雰囲気や、Hololensの仕様、PSVRの年内販売予測数(260万台)やVR対応スマホゲーム「オルタナティブガールズ」が配信から2ヶ月で50万DL以上を突破したことなど、既に世に出ている情報を丁寧にまとめて話した。
おすすめのVRハードとして「UnlimitedHand」を紹介しており、筋肉に刺激を入れて「疑似的な重さ」を再現できるので今後コンテンツに応用したら面白いのではないかと語っていた。
ちなみに、UnlimitedHandにはジャイロ機能が搭載されていますが、同様の機能を使ったものでゲーム化している事例もあります。
詳しくはこちらの取材記事をご覧ください:ジャイロ機能を持つMYO(マイヨ)を使ったスマホゲーム
また、DayDreamに関する最新情報がGoogleから10月5日午前1時の発表で明らかになることや10月6日のにあるOculus conn3ct(オキュラスの公式開発会議)でOculus Touchに関する発売日が告知されるかもしれないことなども改めて話した。
FAMIKU社/CEO楊金鑫:中国のVRビジネスの現状とFAMIKU社の取り組み
FAMIKU社はVR体験施設からコンテンツ開発まで手がける中国VR事業の先駆企業。
CEOの楊金鑫氏は「2015年の7月あたりからショッピングスペースの空いてるスペースに体験施設が増えてきた。
ショッピングモール側は集客効果のあるVRを空いてるスペースに導入していくことを積極的に研究しているようで、日本のVRを施設には視察にきている。
モール内に映画館があるので、待ち時間に暇つぶしとして利用していることが多い。
ただ、コンテンツはデモに近いものがほとんどで、物珍しさから集客効果はあるものの、一度体験したらもう一度やりたいコンテンツがなくリピートユーザは少ないのが現状。」
と中国のVRの現状を語った。
2016年9月18日に中国文化部の政府文書から出された発表では「エンタテイメント製品・サービスの開発でVR、ARを取り入れるように」という内容が記述されていたそうで、国を上げてVR事業に積極的だ。
特に、VRは体験重視ということでEスポーツとの相性が非常に良いと考えているようだ。
Eスポーツはスポーツとゲームの融合。この要素をVRに取り入れることで、長年の課題であるコンテンツの品質向上・リピーターの増加につながるのではないかと考えている。
Eスポーツ体験の場として、練習をネットカフェで行うことが多くネットカフェ離れの抑制にもつながるとうだ。
中国ではEスポーツがさかんで、試合中継があったり年間で何百万ドルもの巨額契約を結ぶプロゲーマーも存在する。
Eスポーツが中国で広まったのは生配信で、バーチャルギフトの一部を収益源に活動するユーザも多いそうだ。
FAMIKU社は今後、「マルチコンテンツ+Eスポーツ」要素を取り入れたコンテンツを作っていく方針。
また、日本のコンテンツを中国に輸入する窓口にもなりたいとも考えているようだ。
株式会社エクシング/寺田幸司:JOYSOUND VRの立ち上げからリリースにこぎつけるまで
JOYSOUND VRをPSVRから配信する株式会社エクシング。立ち上げ時は社内で企画を承認してもらうにも一苦労で、「投資」ということで初年度赤字の事業計画を通したそうだ。
2014年初めにプロジェクトがスタートし、当初はVRでゲームを作りたい思いもあったが、ゲーム会社でないためVRのカラオケを作ることに方針を決定し、3名体制で2015年9月にプロトタイプが完成させた。
そこから約1年をかけてチューニングを行ってきた。
「360度映像+カラオケ=VRのカラオケ」と位置づけ、映像はユーザにどういう疑似体験を提供するかコンセプトを明確に決めて撮影に取り組んだ。
360度動画作成も全て自社で行っており、この分野の第一人者として2年間の研究ノウハウもお披露目された。
面白い360度動画を撮るためのノウハウとして、VR酔いを抑えるため基本は定点撮影&シーン切り替えを細かく行うことで飽きのこない状態を作り、かつストーリーに連動性ももたせること。
またパーソナルスペースを意識したキャストの動きなど、体験者に提供する価値に合わせて演出をいれていくことの重要性に触れた。
没入感を高めるため重要なのは「音」で、パノラマ空間で1秒単位で「この位置にこの音を配置する」という手作業を行い、圧倒的な没入感を実現した。
当面はカラオケVRのを成功させることに注力、その後はカラオケVRのを応用した小説VRのようなものを考えたりしているようだ。
なお、描画のパフォーマンスの面で実現がむずかしかったJOYSOUND VRへの採点機能などもハードの進化に合わせて実現させていくことだろう。
DMM.com/宇都 修二:VR動画プラットフォーム戦略
DMMでは2014年11月にVRプロジェクトがスタート。
DMM.VR動画サービスのリリースを10月中旬に控える。データ容量を考え、開設時はダウンロード販売のみ。
まずはスマホ向け(Android・iOS)に対応し、ゆくゆくはGear VR、PC接続デバイスにも対応していく予定。
その他、HMD市場には注視しており、適宜対応していくことも検討していた。
VR動画はMP4形式で視聴するため、どのハードにも対応できることをメリットと考えており、さまざまなVR事業の中でも比較的マネタイズの面でも早く回収できる分野でもありそうだ。
ハードの成長に合わせ、将来的にはVRでライブ配信も検討しているようだ。
なお、DMM.VR動画サービスの初回配信本数は100本(アダルト・一般で半々)を予定。
今後の展開に注目だ。
パネルディスカッション
最後は本日登壇した方たちとモデレーター・一般参加者でパネルディスカッション。
以下内容です。
Q 中国でヒットしてるVRのコンテンツを教えてください。
楊氏:空中で歩いたりする体験型に近いコンテンツが人気。ただ、リピーターがつかないのが問題です。
Q 個人向けのVRゲームはありますか?
楊氏:VRゲームを個人で楽しむ文化はまだできていない。スマホを使う場合は未婚の男性がアダルトコンテンツを見ることが多く、大半は海賊版なので健全ではない。
Q 360度映像で、見えてはいけないものをどう消していますか?
寺田氏:室内の場合、動きのない固定のものはモノをどかしたパターンでもう一回撮って、後から合成して消したり、CGで消したりします。
また、できるだけ余計な映り込みのないように朝のはやい時間帯などに撮影をします。
Q カラオケ店舗でのVR対応は?
社内的には今すぐやりたいが、オペレーターがベタつきにならないといけない問題を解決できてない。
要望が多いだけにできるだけ早期に応えたいと思っています。
Q PC専用機とスマホの住み分けはどうされていますか?
寺田氏:ユーザがどういった体験をしたいかによりますが、お手軽な体験はスマホ、ハイエンドな体験はPCは系で、ハイエンドはある程度コストを払ってもらい、スマホはそれなりの価格でそれなりにお手軽なもの、という流れが自然かなと思います。
弊社はプラットフォーム選択時、PSの普及やPSVRの価格を他ハードと比較したとき、投資価格が非常に抑えられたので参入している。
宇都氏:ハイエンドな分野は日本ではPSVRが圧倒的にシェアをとると思いますね。
Q 今後のVR業界はどのように進化していきますか?
寺田氏:PSVRでもハイエンドだが、その中でもスペック的に足りていないところがあるので、まずはそこが解決されていけばいいなと思います。
宇都氏:そうですね、特にハード面のブラッシュアップ的な流れは続いてだろうと思います。
Q ゲーム以外でVRはどういう領域に広がっていきますか?
寺田氏:動画に限って言うと、撮影機材の問題で一般のクリエイターが簡単に手を出せず、本来面白い企画に注力したいけどできないけどそうできない課題があります。
一般のクリエイターが参入しやすい環境が出来たとき、例えば2時間のVRドラマなど、いろんなコンテンツビジネスが広がっていく気がします。
宇都氏:スマホは映像系・エンターテインメント系が続くのかなと思っています。
Q VRが当たり前になる時代はどのくらい?
宇都氏:くるとしたら遠くない未来には。高級車など費用をかけられるものに関してはVRを使ったPRは当たり前になると思います。
寺田氏:5年以内にはくるんじゃないかと思います。
VR体験会
今回、体験できたのはBotsNew VRプレイヤーだけ。
先端コンテンツ技術展ではマーカーを使って手の動きを読み込み遊ぶゲームを体験したが、今回はプレイヤーを使って通常のYoutube動画を360度動画に変換して視聴してみた。
テロップなども360度丸くなるので読みにくくはなるものの、映像だけを簡易の360度で楽しむ場合は面白い。
アプリ側で簡単に360度動画にしてしまうのには恐れいりました。一人VRシアターモードとして活用してはどうでしょうか。
また、マーカーを読み込むことで距離を計測することができ、マーカーに近づくとズームイン、離れるとズームアウトになります。
アプリはオープンマーケットで公開されているので是非落としてみてください。
BotsNew VR公式サイト
http://botsnew.com/
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