海外メディアEngadgetは、ナイアンティックCEOのARに関する発言を報じた。
モバイルARには留まらないナイアンティック
同メディアによると、2017年10月17日、アメリカ・ラグナビーチで海外メディアウォール・ストリート・ジャーナルが開催したカンファレンス「WSJ D.Live Conference 2017」に、モバイルARゲーム「ポケモンGO」の開発会社ナイアンティック社のCEOであるJohn Hanke氏が招かれた。
同イベントにおいて、同氏は自身のARについての考え、およびナイアンティック社の今後の動向について発言した。
進化の途上にあるモバイルAR
同社が開発した「ポケモンGO」は、モバイルARゲームというジャンルを一躍世界に知らしめたのだが、同氏はモバイルARがもたらす体験に対する不満を表明した。その内容は、以下の通り。
スマホは(ARデバイスとして)偉大です。しかし、UI(ユーザ・インタフェース)が完璧ではありません。
スマホは、わたしたちが情報をえる手段として、理想的なインタフェースとはなっていません。その一方で、ARはわたしたちがより自然なしかたで情報をえることができるインタフェースとなるポテンシャルを秘めているのです。
同氏はモバイルARのUIが完璧ではないことを、スマホによるナビゲーションを例にして説明した。スマホのディスプレイに表示された地図を使って目的地に行く場合、ディスプレイの地図と現実の光景を繰り返し見比べなければならない。この例は現在では当たり前のことではあるが、改めて考えると非常に不便である。
完全なARを実現するのはARグラス
同氏はモバイルARの限界を指摘したうえで、以下のように述べた。
私が思うに、モバイルARは真のARに至る巨大な旋回軸となるテクノロジーであるという意味において、とても素晴らしいものなのです。
…モバイルARは、真のARに至る踏み石(stepping stone)なのです。そして、ARの未来はARグラスにあるのです。
以上のように述べたうえで、同氏は現在モバイルARのプラットフォームとして期待が寄せられているARKitとARCoreにも言及した。
もしみなさんがARアプリを開発するのであれば、現実にある(ARKitとARCoreのような)プラットフォームを使うのがよいでしょう。
ハイエンド型ARデバイスへの期待
同氏が「ARの未来」と位置づけているARグラスは、ご存知の通り、一度大きな挫折を経験している。その挫折とは、初期のGoogle Glassの失敗である。
同氏は、Google GlassはARグラスとしては不完全だったと考えている。そのうえで、現在スマホを使わずともAR体験ができるデバイスであるHoloLensやMagic Leapに大きな期待を寄せている、とのこと。
海外メディアVarietyは、「真のARグラス」になるかも知れないMagic Leapに関して、同氏の以下のような発言も報じている。
わが社のアプリをMagic Leap向けに開発する可能性もあるのです。
以上の発言だけでは単にモバイルARアプリではないARアプリの例えとしてMagic Leapという単語を使っているのか、あるいは実際に水面下でMagic Leap対応アプリを開発しているうえで発言しているのかどうか、その真意は分かりかねる。
ただ同氏の今回の発言から分かるのは、ナイアンティック社が目指しているのはモバイルARアプリ開発に留まるものではなく、その先の「真のAR体験・ARデバイス」をもビジネス・フィールドとして捉えている、ということではないだろうか。
「モバイルARの次」を見すえるナイアンティック
実のところ、以上のような「真のAR」を見すえた同氏の考えは、今回の発言で初めて披露されたわけではない。
ちょうどARKitが正式リリースされた直後の2017年9月、同氏は長文メディアMediumに「拡張現実の未来はどのように捉えられてきたか?」という記事を投稿し、本メディアでもその内容を報じた。
その投稿記事は、ARの未来を担うARグラスのことはもちろんのこと、同氏が考える真のARが普及した未来についての描写もあった。その箇所を以下に引用する。
言いたいのは、スマホARカメラビューはクールな第一歩であるが、その一歩はARをより重要かつ強力にする過程にすぎない、ということだ。
…ARグラスはやって来る。ARグラスに至る道は困難をきわめ、しばらく時間がかかるだろうが、ついにARグラスを実現し、それを一度体験してしまったら、わたしたちはもはやARグラスのない時代へは戻れなくなるだろう。
Google Glassは、へまを犯してしまったが、確かにそうした未来を垣間見せてくれたのだ。
…ARグラスが当たり前になった世界では何が起こるだろうか。そうした世界では、わたしたちが見るものすべてがインタラクティブになるだろう。
建物、オフィス、家、そして街そのもの、さらには移動手段のすべてが生き生きとしてダイナミックに動くインターフェースとなり、ひとりひとりのヒトのためにカスタマイズされ、ヒトが望むように動作することを想像してみるとよい。
現在毎年何十億ドルもかけている物理的な標識、案内、スケジュール表といったリアルな世界をナビゲートしているすべてのものがもはや不要となり、リアルに存在していたモノよりはるかに機能的に優れているオーバーレイされたデジタルARに置き換えられるのだ。
もちろん、(「ポケモンGO」のモンスターのように)カラフルに色付けされたモンスターが裏庭や公園に生息し、見つけられるのを待っている。未来ではわたしたちが想像できるものをはるかに超えたゲームがプレイされているだろう。
だがそのゲームは映画「マトリックス」のようにポッドにつながれているのではなく、ヒトがリアルに歩き、走り、探検し、話し、そして何より現実の世界とつながっているものなのだ。
今後モバイルAR市場およびモバイルAR文化が開花することが確実視されているが、その開花は「真のAR世界」に至る序章に過ぎないのかも知れない。
ソース:Engadget、Variety
https://www.engadget.com/2017/10/17/niantic-ceo-ar-will-reach-full-potential-when-we-get-the-glass/
http://variety.com/2017/digital/news/pokemon-go-magic-leap-1202592544/
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