
Level Exのリアルなバーチャル手術アプリ
ゲームとして手術を体験できるようなアプリもあるが、Level ExがiPhone/Androidに提供する無料アプリ『Airway EX Virtual Surgery』は本物の医師がバーチャルな手術によってトレーニングするためのアプリだ。Airwayとアプリ名に入っている通り、このアプリでは難易度の高い気管の処置に挑戦できる。
一般のユーザが遊ぶためのゲームアプリではなく専門家として実際に呼吸器にトラブルを抱える患者を扱う麻酔科や耳鼻咽喉科の医師、あるいは救急治療に携わる医師をターゲットとして開発されているアプリなので非常にリアルだ。
このアプリを作成したLevel Exは、VR/ARを含めたより多くのアプリを開発するために1,100万ドル(12億円)の資金調達を発表した。
Airway EX Virtual Surgery

リアルなCGで再現された患者の体内
リアルなCG
スコープを覗いた映像として表示される患者の体内はCG映像だが、まるで本物のように濡れた質感も再現されている。Level Exの公式サイトでは、実際に内視鏡で撮影された気管や声帯の写真と、アプリで見ることができるCGの比較も用意されている。
近年のCG技術の発展もあってその再現度は非常に高く、遠目に見ただけではどちらがCGでどちらが写真なのか区別するのが難しいほどだ。これならば、ゲーム感覚ではなく本物の患者を相手に手術をするような感覚でトレーニングを重ねることができるだろう。
スコアの評価
主目的はトレーニングだがゲーム的な要素も用意されており、各ステージでのプレイヤーの成績は操作の正確さを採点したスコアや完了までにかかった時間によって評価される。
内視鏡の操作を誤って患者の気道にぶつけてしまったり、処置時に正常な組織にダメージを与えてしまうと患者の状態が悪化する。ハイスコアを獲得するためにはなるべくダメージを与えることなく正確に器具を操り、かつ短時間で処置を済ませることが必要だ。
この二つは、本物の患者を治療するときにも心がけるべき要素だ。挿管時にぶつけられば患者は苦しいし、時間がかかれば開いたままにしている顎が疲れてしまうこともある。Airway EX Virtual Surgeryで高いスコアを獲得できる熟練の医師ならば、実際の処置もスムーズに行うことができるはずだ。
新たなアプリの開発

Gastro EXの画面イメージ(開発中)
Gastro EX
Level Exが現在公開中のアプリはまだAirway EXだけだが、現在開発中でまもなくiOS/Androidを対象にリリースされる予定と発表されているのがGastro EXだ。Airway EXが気管を対象としたアプリだったのと同様に、こちらのアプリは胃腸を対象としている。胃や腸のトラブルを抱える患者を診断し、内視鏡を使ってバーチャルな手術を行うことができるアプリだ。
まだアプリ名やいくつかの画像を除いて詳細は公開されていないが、おそらくAirway EXと同様に各アプリストアで無料配信されるのではないだろうか。リリース時期についても明言されておらず、公式サイトにはComing soonとしか記載されていない。
VR/ARへの対応
Gastro EXはiPhoneやAndroidといったスマートフォンで利用できる一般的なアプリケーションになるようだが、Mobile World Liveが伝えるところによればLevel ExはVR/ARといった技術を用いたアプリの開発にも興味を示しているようだ。
また、リリース済みのAirway EXが対象とする呼吸器や現在開発中のGastro EXでカバーされる消化器の他にも循環器など他の臓器を対象とするアプリの開発も考えられているらしい。
現実のようにリアルな体験を可能にするVRの特性はリアルなバーチャル手術をウリにするAirway EX Virtual Surgeryと相性が良いはずだ。VRとAirway EXを開発したLevel Exの技術を組み合わせることで、よりリアルな手術体験を作ることが可能になるだろう。
また、モバイルVRではなくPCベースのVRプラットフォームでアプリを開発するならばハンドトラッキングコントローラーを使った操作ができることもポイントだ。ハンドトラッキングコントローラーを使えば、スマートフォンの画面をタップやスワイプするよりも本物の器具を操作するのに近い形で処置を行えるようになる。
ARの場合は、トレーニングだけでなく実際の手術を支援するようなアプリを作ることができるかもしれない。HoloLensを使って気管への挿管を補助するアプリは存在しており、こうしたツールによって処置に伴う患者の負担は少なくなっていくはずだ。
最先端技術を医療へ
Level Exの創業者でCEOのSam Glassenbergは、医師が最新の技術を活用できていないことを指摘する。
ゲーマーたちはVRのような最先端の技術と人間心理の研究成果を組み合わせて生み出されたゲームをプレイしているのに、医師が使っている技術はゲーム業界から20年も遅れたものだというのだ。
ゲームに使われる技術が全て医療に応用できるわけではないが、有効だと考えられるものも多い。積極的に採用が進むことで、医師の仕事も変化していきそうだ。
参照元サイト:Mobile World Live
参照元サイト:Level Ex
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