VRへの没入感を左右するデバイスは多数あるが、その中でも特に影響力が大きいのはVRヘッドセットだろう。ヘッドセットのディスプレイに表示されるVR映像の解像度が高くなれば、それだけ没入感も増すはずだ。
Varjoが目指す超高解像度のVRが実現すれば、見た目では現実と区別がすることができない映像になるかもしれない。その解像度70メガピクセルはOculus RiftやHTC Viveの70倍近いのだ。
そんなVarjoが、820万ドル(9億円)を集めてエンタープライズ向けのVR/AR/XR製品のブランド立ち上げ支援を目指す資金調達ラウンドを終了したという。
VarjoのVR
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プロトタイプ(上)と標準的なVRヘッドセット(下)の画質比較
超高解像度VR
Varjoが開発をすすめるVRヘッドセットを特徴づけるのは、何と言ってもその高い解像度だ。現行のVRヘッドセットとしては解像度が高いHTC ViveやOculus Riftの70倍という超高解像度の実現を目指している。
同社が公開している比較画像を見ると、その差は一目瞭然だ。VRコンテンツに夢中になっていると気にならないこともあるが、標準的なVRヘッドセットレベルの画素数ではディスプレイを拡大するとピクセルの境目が気になってしまう。しかし、Varjoのプロトタイプのものとされる画像ではほとんどスクリーンドア効果が見られない。
エンタープライズ向けVRヘッドセット
これだけの高画質を実現するためには、それ相応のGPUが必要になりそうなものだ。しかし、VarjoのVRヘッドセットは現行の高性能グラフィックボードを搭載したパソコンで利用できるという。
VR映像全てを超高解像度で描画するのではなく、ユーザの目の動きをトラッキングして必要な場所だけを高解像度にすることでGPUへの負荷を低下させているようだ。仕組みはFoveatedレンダリングと変わらないが、こちらでは視野の中心をより高い解像度で描画する。
ただし、デバイス本体のコストは少々高くなりそうだ。家庭ではなく企業やプロフェッショナル向けのデバイスなので、HTC Viveなどよりは高価になるだろう。
過去にVRInsideが質問したメールに対しても、想定する顧客は「デザイン、建築や不動産、シミュレーションとトレーニング、エンターテイメント、そしてエンジニアリングといった業種に従事しているプロフェッショナルの方々、そして企業のお客様」だという回答が得られている。
価格についての質問では明確な回答を得られなかったが、「1000米ドル以上、1万米ドル以下」を予定しているという。1000ドルであれば個人でも十分購入が可能だが、かなりレンジが広い。性能を考えると1万ドルに近くてもおかしくないデバイスだ。
マイクロOLEDディスプレイ
Varjoのプロトタイプ「20|20」がこれほどの高解像度を実現できているのは、0.7インチの小さなディスプレイが理由だ。
このディスプレイは3,000PPI(1インチあたり3000ピクセル)というピクセル密度を誇っている。高く見積もっても470PPI程度のHTC ViveやOculus Riftのディスプレイと比較すると、その密度の高さがよく分かる。
また、同社のVRヘッドセットは視野角もまずまずだ。ViveやRiftは110度なのでそれらよりも少し劣るが、それでも100度を確保している。
視界の端に見える「画面外の領域」よりも解像度の高い映像に目が行く製品となるのではないだろうか。
VRの高解像度化
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8K解像度を実現するPimaxのVRヘッドセット
VRデバイスの高解像度化を目指す企業はVarjoだけではない。
Varjoほどの超高解像度ではないにしても、手の届きやすい高解像度VRヘッドセットを開発しているのがPimaxだ。
Pimax 4K
Pimaxが昨年発売したVRヘッドセットがPimax 4Kだ。
このデバイスは3860×2160の高い解像度を持ちながら比較的安価(350ドル)に設定されており、同時期のOculus Rift(当時600ドル)と比べても安い。
専用のコンテンツだけでなく、SteamからOculus Rift向けのVRゲームをダウンロードして利用可能なので対応コンテンツも豊富だ。
Pimax 8K
このPimax 4Kの後継機となるのが、現在クラウドファンディングを実施中のPimax 8Kだ。
3840×2160のデュアルLCDパネルが搭載され、既存のVRヘッドセットと比べて高い解像度を実現する。また、視野角も200度と広くなっているのでより人間の視野に近い。
Pimax 4Kに比べれば価格は上がってしまっているものの、499ドルの出資でPimax 8K本体を入手できる。解像度が落ちる廉価版のPimax 5Kならばさらに100ドル安い399ドルだ。この価格にはベースステーションやハンドトラッキングコントローラーが含まれていないが、既にViveやRiftを所有しているならばそれらを利用できる。
また、発送は12月を予定している。現実的な価格で、早ければ今年中に8K解像度のVRヘッドセットが入手できるのだ。Varjoも製品の出荷は今年中を目指しているので、計画通りに進めば同じ時期に家庭用とエンタープライズ用の高解像度ヘッドセットが発売されることになる。
競争のポイントに?
360度のVR映像を全て高解像度でレンダリングしていては、GPU性能の向上が追いつかない。しかし、Varjoが行っているように映像の一部のみを高解像度にするのであれば既存のグラフィックボードでも超高解像度のVR映像をレンダリングできるようだ。
これまでのVRシステムではトラッキングの精度やコンテンツの充実がポイントとされることが多かったが、第2世代ヘッドセットでは解像度での競争が激しくなるかもしれない。
参照元サイト名:Road To VR
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