高品質なVRコンテンツの制作にあたって高精細なグラフィック映像が重要であるとともに、没入感を高める要素として音も非常に重要な要素となる。
VRの登場、普及と共に注目を集めているのが立体音響技術で、前後左右上下から音が聴こえてくることによって、バーチャル空間での体験がよりリアルなものになる。
現在、Oculusは立体音響に対応した「Oculus Audio SDK」を公開しており、これによってUnityを用いて立体音響を作ることができるが、10月に開催するOculusの開発者カンファレンス、Oculus Connect 4では同社が開発した最新の立体音響技術が登場する予定だ。
立体音響について
VRコンテンツに没入度の高い立体感をもたらす立体音響技術について、簡単ではあるが触れてみると、それは「シーンベース・サウンド」と「オブジェクトベース・サウンド」の2つに分けられる。
シーンベースサウンド
シーンベースサウンドとは現在出回っている360度映像などに使われている技術で、動画を撮影する際、音場全体の音声を記録できる技術だ。
つまり、鳥の鳴き声や川のせせらぎ、木々のざわめきなど、様々な方向から聴こえてくる音を、音が発せられる方向も含めて記録できるので、サウンドに立体感を生み出すことができる。
ただし、シーンベース方式での録音は位置トラッキングに対応していないため、ヘッドセットを装着して様々な方向を見回すと、それぞれの音が発する場所も一緒に動いてしまうので、リアリティの再現に欠けるという点がある。また、音場全体をBGMとして録音するために、全体的にのっぺりとした印象のあるサウンドになり、立体感に乏しいという点もある。
オブジェクトベースサウンド
一方、オブジェクトベースサウンドではそれぞれのオブジェクトに個別にサウンドを配置するため、より立体感のあるサウンドを生み出すことができる。
位置トラッキングにも対応しているため、ヘッドセットを装着したままあちこち見回してみても音が発せられる場所は変わらないので、リアリティのあるサウンド環境を構築できる。
また、オブジェクトの移動と共に音の位置も変わるので、実際の物理空間で音を聴いているのと同じ環境を構築することができる。
このため、オブジェクトベース方式は、バーチャル空間内で自由に動き回ることができるVRコンテンツを制作する際には重要な技術だ。
Oculus Audio SDKについて
Oculusは独自の立体音響システム「Oculus Audio SDK」をリリースしており、これによってUnityなどのエンジンで3Dサウンドを作ることができる。
これはUnityに標準搭載している立体音響ツールをさらに拡張するもので、HTC Viveにも対応しているため、数多くのクリエイターをサポートするツールだ。
同社は立体音響を重要な技術とみなしており、10月に開催する開発者カンファレンス「Oculus Connect 4」で同社が開発した立体音響の最新バージョンを披露する予定だ。
セッションはOculusにて音響デザインマネージャーを務めるTom Smurdon氏と、ソフトウェアエンジニアリングマネージャーのPete Stirling氏によって行われ、「空間音響技術における2017年のブレイクスルー」というタイトルを予定している。
本セッションでは立体音響技術のキーとなる専門用語やコンセプトの説明をはじめ、Oculusが開発した最新の立体音響技術の内容を知ることができる等、初心者から専門家までを対象にした情報提供が行われる。
また、立体音響の最新技術、ツールの紹介も行う予定で、同社が提供するAudio SDKのアップデート内容も発表するとのこと。
詳細は現時点では不明だが、近々リリースされるであろうAudio SDKの最新版によって、立体音響を用いたコンテンツ制作がより容易になるだけでなく、よりリアリティと深い没入感をもたらす優れたVRコンテンツを制作するための環境が提供される。
Oculus Connect 4は10月11日に開催され、合計で30以上の開発者向けのセッションを行う予定で、セッション内容のすべてはまだ公開されてはいないが、現時点で公開されているセッション内容は公式サイトから確認することができる。
立体音響の普及
現在、立体音響技術にはOculusをはじめ様々な企業が対応を開始しており、YouTubeとFacebookは立体音響を用いたコンテンツの再生に対応している。
また、今年の3月にVimeoが360度映像の再生に対応したが、この際に同社のプラットフォームに対して立体音響への対応を求めるコメントが大量に寄せられ、同社の公式ブログにおいて声明を発表し、現在立体音響に対応すべく準備を進めており、近いうちに対応するとの意向を示している。
VRの普及と共に立体音響の需要も高まっており、同技術を用いたゲームや映画、音楽など、立体音響がもたらす新しいコンテンツには大きな期待ができる。
参照元:Road to VR
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