データレプリケーションは、あるシステム上のデータを別のシステムや拠点に複製し、同期させる技術です。災害対策や事業継続性の向上、負荷分散やレスポンスタイムの短縮など、さまざまな場面で活用されています。バックアップと異なるのは、リアルタイムまたは短い間隔で更新が行われる点にあります。万が一メインシステムに障害が発生しても、別の場所にあるコピーを使ってすぐに業務を再開できるため、ダウンタイムを最小限に抑えることが可能になります。
たとえば世界各地にデータセンターを持つ企業では、利用者の地理的な近くにある拠点へアクセスさせることで速度を改善すると同時に、自然災害や大規模障害に対してもリスクを分散できます。ただし、複数拠点間で同時にデータを書き換える場合は、どのタイミングで同期を取り、万が一の衝突（コンフリクト）が発生したときはどう処理するかといった課題に直面します。レプリケーションの方式や頻度、ネットワーク帯域をどう設計するかによって、システム全体のコストや可用性に大きな差が出るため、慎重な検討が欠かせません。
DXの文脈では、リアルタイム分析や機械学習のために大量のデータを別拠点へ送ったり、クラウドを含めたハイブリッド環境での可用性を高めるケースが増えています。こうした状況でデータレプリケーションが果たす役割はさらに重要性を増しています。単に災害対策だけではなく、ビジネスを止めずに新たな領域へ挑戦するための基盤として、レプリケーション技術の選択と運用を最適化することが企業の競争力向上につながるのです。
