責任ある役割を果たさなければならないリーダーは、自身の土台を築く心構えを持つことが大切です。どんな状況でも信念を貫き、自分を信じる心の拠り所こそ持つべきです。ではどんな心構えや拠り所を持つべきか。それが「道天地将法」です。ここでは「道天地将法」の1つ、「道」の意義について考えます。【週刊SUZUKI #118】
リーダーとして成功し続けるためには何が必要か。この問いに相応しい答えの1つが「道天地将法」です。これは孫氏が示した兵法で、今も経営や事業戦略を検討する際の基本的な考え方として使われています。リーダーとしての心構えを身に付ける上でも、「道天地将法」の考え方は有効です。
具体的にどう解釈すべきか。「道天地将法」の「道」は、大義を意味します。つまり兵法でいえば、戦で勝つためには人としての道義を守るべきということを表しています。
プロジェクトを主導するリーダーにとって「道」とは、人としての道を守り、踏み外さないようにすることを意味します。中には「人としての道から外れないなんて当たり前」と思う人もいるでしょう。しかし、プロジェクトを必ず成功させる責任を負い、プレッシャーを常に感じながら業務に取り組むリーダーの中には、正しい道を踏み外してしまう人も珍しくありません。難しい決断を迫られ、誤った判断を下してしまうこともあります。そのような状況で正しい判断を下す道標となるのが、各自が抱く大義、つまり「道」なのです。
人として一番大切にすること、社会で求められる意義、さらには自社で重んじられていること。これらを改めて考え、自身の確固たる「道」を築くことが大切です。築いた「道」はリーダーの礎となるのはもとより、あなたの人生を決め得る礎にもなります。さらに、あなたを理想に導くための礎にもなります。
リーダーとは孤独な立場です。誰にも頼ることなく、正しい判断を下し続けなければなりません。弱音を吐こうものなら、周囲の信頼をたちまちに失ってしまいます。しかし、どんなに厳しい状況でも先頭に立って歩み続けなければなりません。こうしたリーダーの心の拠り所となるのが「道」です。「道」を築けない人にリーダーというポジションは絶対務まりません。
あなたはどんな「道」を持っていますか。会社や社会に対してどんな「道」を果たそうと考えていますか。もし漠然としか「道」を描けないなら、大義を今一度作り直してください。どんな状況でも揺るぎない大義を掲げることが、リーダーとしてのあなたを強くするのです。
【リーダーの心得 その26】

筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。他に、日本オムニチャネル協会 会長、SBIホールディングス社外役員、東京都市大学特任教授を兼任。