リーダーたる者、時には厳しい態度でチームに接しなければなりません。和やかな雰囲気を築くだけではプロジェクトを成功に導くことはできないのです。では厳しい態度とは具体的にどんな言動で示せばよいのか。厳しい態度がチームにどんな影響をもたらすのか。リーダーが備えるべき「厳格さ」について考えます。【週刊SUZUKI #107】
チームを成功へ導くリーダーは、チームの和を重んじる一方で規律を守る厳しさを併せ持たなければなりません。穏やかなチームワークを醸成することが必ずしもリーダーの務めではありません。穏やかなチームワークがチームの目標到達を阻害するなら、穏やかさを拭い去るべきです。誤解を恐れずに言えば、どんな手段を駆使してでも成功を手繰り寄せるのがリーダーの役目です。
「時間を守らないメンバーが最近増えた」「仕事とは直接関係しない私語の時間が増えた」「だらだらした雰囲気がチームにまん延している」などを感じるなら、厳しさが足りないのかもしれません。これらが常態化すると、チームは機能不全に陥ります。その結果、チームは目標を到達できなくなります。
リーダーはこうした雰囲気を察したら、いち早く行動を起こすべきです。その行動こそが「規律を守る厳しさ」をチームに植え付けることです。「期日を守る」「私語を慎む」などは仕事に取り組むなら当たり前かもしれません。しかし規律を守るために必要だと判断したら、何度でも指摘し続けるべきです。これらの積み重ねがチームによい緊張感をもたらします。適度な緊張感は些細なミスを軽減し、生産性を引き上げる効果も見込めます。リーダーはチームの雰囲気に目を配り、必要ならメンバーと厳しく接しなければならないのです。
中には「チームワークが乱れてしまうのでは」「厳しく接するとメンバーが壁をつくってしまう」などを懸念するリーダーもいるでしょう。しかしそれでも、リーダーは厳しい態度で臨まなければなりません。たとえ周囲から嫌われようとも、チームに緊張感を与え続けなければなりません。チームの厳しさを醸成できるのは、リーダーしかいないのです。
もっとも緊張が常態化すると、メンバーは疲弊し、メンバーの離職さえ起きかねません。大切なのは、緊張と緩和のバランスです。和やかな雰囲気がある一方で、緊急時や非常時には緊張感がみなぎるチームであるべきです。状況に応じて緊張と緩和を切り替えられるチームを組成できるような計らいがリーダーには求められます。
当たり前と思えることさえできずにいるチームなら、明らかに規律が軽視されています。これは、規律をチームに植え付けられないリーダーの責任です。メンバー一人ひとりの生産性を高めてゴールを目指すには何が必要か。この答えと常に向き合っているなら、リーダーとして何をすべきかは自ずと決まるのです。
【リーダーの心得 その15】

筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。他に、日本オムニチャネル協会 会長、SBIホールディングス社外役員、東京都市大学特任教授を兼任。