リーダーとしてチームをけん引するには、先頭に立って模範を示すことが不可欠。どんな困難にも動じない強靭さと決断力が求められます。ではリーダーが率先垂範することで、チームにはどんな影響が現れるのか。先頭で切り込む姿勢はメンバーにどう映るのか。常に前進し続けるリーダーの役割について考えます。【週刊SUZUKI #96】
難題に立ち向かうプロジェクトの多くが、ゴールを迎えることなく途中で座礁してしまいます。プロジェクトを失速させないためには、プロジェクトメンバー各自のやる気はもちろん、リーダーのけん引力が何より求められます。
けん引力を発揮するには、メンバーの模範となるような行動が欠かせません。難解な局面では、何が正しいのか、何が最適解なのかを導き出せないことが多々あります。誰もが前進を躊躇う中でも、模範として一歩を踏み出す勇気と行動力がリーダーには必要です。先頭を歩く姿を周囲に示すことでメンバーを奮い立たせ、プロジェクトを座礁させずに突き進められるようにします。
不確定な情報しかない状況でも、どうすべきかを決断する強い意思も必要です。「このまま進めばどうなるか分からない」「もしかすると大きなリスクを負いかねない」などの危機が迫る中でも、「これを実行しよう!」「あれを選択しよう!」といった意思決定をできるようにならなければなりません。もちろんその決断が過ちを招くことがあるでしょう。大きな損失を被ることさえあるでしょう。しかし、そんなリスクを承知の上で判断する勇気がリーダーには求められます。すべての責任を負う覚悟でプロジェクトに臨む姿勢が、周囲のやる気を引き上げます。チーム全体の結束力が高まれば、目の前に立ちはだかる高い壁も容易に乗り越えられるようになります。こうした推進力をチームにもたらすためにも、リーダーには強い覚悟が必要です。
とはいえ、リーダーにももちろん不安はあります。迷いもあります。「失敗したら…」と怖気づくこともあるでしょう。そんな中でも覚悟を持って突き進むには、場数を踏むしかありません。失敗を何度も繰り返し、そこから何度も這い上がるしかありません。その経験と教訓が、不安や迷いを払しょくします。勇気をもたらす糧となるのです。
人は何も経験せずに周囲の模範にはなれません。経験なしに強い覚悟は養えません。模範となるためには、今目の前にある仕事一つひとつに強い覚悟で臨むべきです。些細な仕事でもチームを先導する姿勢を示すべきです。周囲のメンバーは、こうしたあなたの言動を必ず見ています。覚悟を感じ取っています。チーム一丸で難題に立ち向かえるようになったとき、あなたはリーダーとして周囲から認められることになるのです。
筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。他に、日本オムニチャネル協会 会長、SBIホールディングス社外役員、東京都市大学特任教授を兼任。