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CO₂から都市ガスをつくる。大阪ガスのSOECメタネーションが描く“脱炭素の一手”


再生可能エネルギーの利用が叫ばれるものの、コストや安定供給、さらにはエネルギー変換効率などの課題が山積しているのが現状です。そんな中、水素とCO2(二酸化炭素)から作られる未来の都市ガス「e-メタン(合成メタン)」の技術開発に関心が集まっています。具体的にどのように生成するのか。技術の進化でどんな効果を見込めるようになるのか。ここでは、e-メタンを生み出す「SOECメタネーション」という次世代技術にフォーカス。大阪ガスが主導して開発する「SOECメタネーション」の効果や、同社の今後の展開に迫ります。


2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向け、積極的な技術開発に取り組む大阪ガス。とりわけ注力するのが、水素とCO₂から都市ガスの主成分である「メタン」を合成するメタネーション技術です。都市ガスの原料である天然ガスをe-メタン(合成メタン)に置き換えることでカーボンニュートラル化を図ります。

大阪ガスが取り組むメタネーション技術開発

大阪ガスはこれまで、2030年のe-メタン1%導入、さらには都市ガス業界で2050年の最大90%導入を実現する手段として、「サバティエメタネーション 」や「バイオメタネーション」といったメタネーション技術の開発を推進。水素 やCO₂からe-メタンを生成する方法を研究し、カーボンニュートラル化に取り組んできました。

「サバティエメタネーション」は、再生可能エネルギー由来の電力を使って水を電気分解し、水素を生成。その水素とCO₂を反応させてメタンを合成する技術です。エネルギー変換効率は55~60%と言われています。一方の「バイオメタネーション」は、下水汚泥や廃プラスチックなどの廃棄物からバイオガスを生成、そこからメタンを合成する技術です。

さらに、大阪ガスは次世代技術の研究開発も進めています、それが、「SOECメタネーション」です。これは、再生可能エネルギー由来の電力を投入し、水やCO₂を高温で直接電気分解することでe-メタンを合成するという技術。最大の特徴は、エネルギー変換効率が85~90%と極めて高いこと。従来のサバティエメタネーションの変換効率を大きく上回り、少ない再生可能エネルギーの投入量でe-メタンを効率的に製造することが可能です。

この高い変換効率は、SOEC(固体酸化物形電解セル)高温 電解装置による 電解に必要な電力の削減効果 と、メタン合成反応時に発生する排熱を活用することで実現します。これにより、製造コストの大半を占める再生可能エネルギー電力の投入量を大幅に削減でき、e -メタンの製造コストの低減が 見込めます。さらに、水とCO₂を直接電気分解するため、別途水素を調達する必要もありません。

SOECメタネーションの特徴と技術構成

なお大阪ガスは、優れた活性と耐久性を持つメタネーション触媒技術も保有。従来触媒より低温で高いメタン生成速度を有し、高温での劣化も抑制できるといいます。さらに、従来のSOECのセラミックス支持型 は割れやすく、大型化が困難でした。これに対して大阪ガスは金属板で強度を保ち、表面を薄いセラミックで覆う「金属支持型」のSOECを採 用。こうした技術を導入することで、SOECはコンパクトで耐衝撃性が向上、さらに低コストで大型化も見 込めるようになりました。

大阪ガスは2025年6月3日、大阪市此花区に「SOECメタネーションベンチスケール試験施設」と呼ぶe-メタンを合成する施設の竣工を発表し、SOECメタネーションの研究開発を加速させています。東芝エネルギーシステムズが製造 したSOEC水蒸気電解装置と大阪ガス開発の触媒が充填された メタン合成装置を組み合わせた設備を導入し、一般家庭約200戸相当のe-メタンを生成する試験を開始します。同施設は現在、SOEC水蒸気電解装置 を用いていますが、今後はより高効率が期待される水とCO₂を一緒に電解するSOEC共電解装置とメタン合成装置を組み合わせた設備の試験を計画。さらなる効率向上を図る考えです。

SOECメタネーションの試験設備と今後の試験予定

なお、SOECメタネーションに用いられるSOEC高温電解技術は、水素と一酸化炭素の混合ガス(合成ガス)の製造が可能な技術でもあります 。合成ガスは化学工業用の原料の1つとなることから、メタン以外のさまざまな燃料や化学品原料としての利用も期待されています。具体的には、e-ナフサ、e- メタノール、e- エタノールなどの燃料、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET樹脂、ポリスチレンなどのプラスチック原料の効率的な調達も見込めます。つまり、「SOECメタネーション」は再生可能エネルギーの投入量を削減するだけではなく、カーボンリサイクル産業を支える基幹技術としても重 要な役割を担っているのです。

大阪ガスは、要素技術の開発とラボスケールの試験を経て、2030年度までにベンチスケール、パイロットスケールの試験を実施 。2030年度の技術確立を目指します。その後は商用化を見据えた次期実証事業へとステップアップさせる予定で、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた道筋を突き進む考えです。

SOECメタネーションという技術開発を通じてカーボンニュートラル化を推進する大 阪ガス。同社が取り組む次世代技術の研究開発やそれらを駆使した研究成果に注目が集まります。

大阪ガス
https://www.osakagas.co.jp/

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