Cookieの利用が規制される中、企業はユーザーの行動をどう把握すべきか。第1回と第2回では、Cookieの役割やCookie規制に対する各国や主要企業の動向について触れてきました。最終回となる今回は、ユーザーの行動をCookieに依存せずに把握する主な手法を紹介します。ユーザーデータを活用するLINE公式アカウントの事例も合わせて解説します。
Cookie規制への対応_コンバージョンAPIとCDPの活用
Cookie規制が進む中、デジタルマーケティングでは新たな戦略が求められています。特に、主要な広告プラットフォームであるGoogle、Yahoo!、Meta、TikTok、X、LINEを最大限に活用するには、従来のサードパーティCookieに依存しない配信手法を導入することが重要です。
その中でも注目されているのが、コンバージョンAPI(以下、CAPI)とカスタマーデータプラットフォーム(以下、CDP)の活用です。CAPIは、Cookieに依存せずにWebサイト上のデータを計測する技術で、プライバシーに配慮しつつ広告効果を正確に測定できます。一方、CDPは企業が収集した顧客データを統合し、個々にパーソナライズされた体験を提供するためのプラットフォームです。ファーストパーティデータを中心に、顧客の行動や属性情報を一元管理するのに使われます。
CAPIとCDPを連携させることで、サードパーティCookieに依存せずに、ユーザーの行動データを、正確かつ安全に管理できます。MetaやTikTokの場合、CAPIをCDPと組み合わせることで、サーバーサイドから送信されたデータを基に、よりパーソナライズされた広告を提供でき、ターゲティング精度を高められます。
Googleの場合、サーバーサイドGTM(※1)や拡張コンバージョン(※2)とCDPの連携により、ユーザーデータの一元管理が可能で、プライバシー保護を強化しながら、広告効果を最大化する戦略を実現できます。Yahoo!やX、LINEも同様に、CAPIとCDPの統合により、より効果的な広告運用が可能です。Cookieレス時代でもユーザーのプライバシーを尊重した広告配信は十分可能です。
これらの手法を駆使することで、Cookie規制が強まる中でも広告効果を維持しつつ、ユーザーのプライバシーを保護しながら、ターゲティング精度を高めることができます。
オプトでは「ONE’s Data」というGoogle Cloud PlatformのBigQueryを最大活用した、データ活用プラットフォームを用いながら、CAPIとCDPを組み合わせたデータ活用をサポートしています。
「ONE’s Data」の詳細はこちら
https://onesdata.com/
※1 サーバーサイドGTM
Googleが提供するタグ管理システム(GTM)の一機能で、従来のクライアントサイド(ユーザーのブラウザ)でのタグ管理をサーバーサイド(サーバー側)で行うことを可能にする機能。
※2 拡張コンバージョン
Google広告におけるコンバージョントラッキングの精度を向上させる機能。
Cookie規制への対応とLINE公式アカウントの活用
サードパーティCookieの規制によってユーザー分析が難しくなる中、LINE公式アカウントは、事前にユーザーの同意を得た上でユーザーデータを活用できるようにしています。こうしたプラットフォームを用いれば、ユーザーとの接点を維持できます。
LINE公式アカウントは、コミュニケーションアプリ「LINE」に企業や店舗のアカウントを作成し、友だち追加(アカウントのフォロー)したユーザーに対して、情報を直接届けられるプラットフォームです。LINEにはプラットフォームが発行する独自の識別子(ユーザーID)が存在し、各ユーザーIDにユーザーの行動を紐づけることができます。ユーザーIDの取得にはユーザーの許諾が必要なため、セキュリティ面にも配慮しながらユーザーの行動を分析することが可能です。さらに、開発次第ではLINE公式アカウントを経由して、自社サイトに訪問したユーザーの購買行動を計測することも可能です。
自社のLINE公式アカウントや、自社サイト上の行動を計測することで、ユーザー一人ひとりに合わせたコミュニケーションが可能で、サードパーティCookie規制への対応策として活用できます。
【参考】
・ユーザーのアカウント作成時に参照したいLINEヤフー株式会社が定めている規約
1.LINEヤフー共通利用規約 https://terms.line.me/line_terms_notice
2.LINEヤフープライバシーポリシー https://www.lycorp.co.jp/ja/company/privacypolicy/
・LINEヤフー株式会社が提供するSDK/APIを利用する開発者が準拠すべきポリシー:
LINEユーザーデータポリシー https://terms2.line.me/LINE_Developers_user_data_policy?lang=ja
LINE公式アカウントを用いた配信事例
LINE独自のユーザーIDを活用すれば、自社サイトでユーザーの購買行動と紐づけた配信が可能です。実際にLINE公式アカウントを活用して売上拡大に貢献した例として、グラニフの「カート落ち配信 」があります。これは、 ユーザーがカートに商品を追加したもののそのまま離脱した際に、一定時間経過後、自動でメッセージを送信する用途で使われています。グラニフでは、ユーザーが購入しようとカートに入れたものの、買い忘れている状況に対し、ユーザーへリマインドを実施。ユーザーの買い忘れを防ぎ、企業としても商品の購買促進と、売上拡大に寄与しています。
グラニフの取り組みは通常のメッセージ配信と比較し、過去実績で10倍以上のコンバージョン率(CVR)向上が見られました。
今回紹介した事例のように、オプトイン型で利用可能な媒体を併用するなど、さまざまな方法を用いてユーザーとの接点を維持することが、Cookieレス時代に求められる対策として重要です。
著者プロフィール
石田健祐
株式会社オプト データテクノロジー企画部
2021年、株式会社オプトに新卒で入社。データテクノロジー領域でプロダクトセールスに従事する。ポストクッキー時代における統合データマネジメントプラットフォーム「ONE’s Data」のセールスをメインに、Google・Meta・LINEヤフーなどのメディアAPIの拡販を担う。2023年より、セミナーやメルマガの企画実行などBtoBマーケティングも担当。