日本オムニチャネル協会は2024年3月6日、年次イベント「オムニチャネルDay」を開催しました。今年のテーマは「成長の共創(CO-CREATION OF GROWTH)」。イベントでは、企業と企業がともに手を取り合い、支え合い、学び合いながら成長を加速させるこの必要性を終始訴求し続けました。ここでは、数あるセッションの中から基調講演の様子を紹介します。
「オムニチャネルDay」は日本オムニチャネル協会主催の年次イベント。2回目となる今回は、会場となった東京都港区にある「虎ノ門ヒルズフォーラム」に700人を超える聴衆が参加しました。「共創」や「成長」「変革」をテーマにした多数のセッションを実施し、会場では多くの聴衆が登壇者の言動を注意深く見入っていました。
イベント開始直後に実施した基調講演には、ジャパネットたかたの創業者で、A and Live 代表取締役の髙田明氏が登壇。「今を生きるが変革の第一歩」というテーマで講演しました。
髙田氏は冒頭、「今を生きる」を講演テーマに選んだ理由に言及。今に目を向ける大切さを聴衆に訴えました。「私は常々、夢を持ち続けることが大切だと言い続けている。しかし、夢を実現するには精進しなければならない。このとき、目の前の“今”に全力で取り組むことが何より必要だ。今に全力を注がなければ夢を叶えられないし、やり続けなければ成功もあり得ない」(髙田氏)と指摘。社会や経済が停滞しがちな状況に陥ったときこそ今と向き合い、夢を持つべきだと訴えました。
テレビショッピングなどの通信販売事業を展開する「ジャパネットたかた」も、「今を生きる」の姿勢を貫き、やり続けたから成長できたと同氏は振り返ります。「ジャパネットたかたはもともと、私の父が経営する長崎県平戸市にあるカメラ店が始まりだ。フィルムの現像やプリント事業を、当時4000人ほどが住む小さな街で展開していた。ここでもフィルムの現像をどれだけ請け負うかに全力を注いだ。当時の事業と徹底的に向き合い、受注増加につながる道を模索した」(髙田氏) といいます。このとき、市内に店舗を構える事業者と連携し、フィルムを受け取る“集配所”を各所に設置。その結果、100件200件とフィルム現像の注文が増え、売上増加につながったといいます。さらに、写真を頻繁に撮影する建設会社にフィルムを受け取りに行くサービスを開始。フィルム現像にとどまらず、顧客との接点を増やすことでカメラの購入機会も創出しました。「当時の状況でできることを徹底的に考え抜いた。フィルムの現像というたった1つの事業を成功に導くため、そのときの“今”に全力を傾けた」(髙田氏)と強調します。
もっとも、「今」とただ向き合うだけでは不十分だと髙田氏は指摘します。今に全力を注ぐには、本気度が何より問われると続けます。「頑張っただけでは何の意味もない。結果を伴わなければ、頑張っていないに等しい。本当に一生懸命に本気に取り組んでいるかどうか。こうした本質的な姿勢から変えない限り、いくら努力し、いくら『今』と向き合っても結果をもたらさない」(髙田氏)と述べます。さらに、一生懸命かつ本気で取り組めば、「結果として仲間が集まるようになる。もし『社員が言うことを聞いてくれない』と嘆く経営者や管理職の方がいれば、それは自身の『一生懸命』や『本気』が足りないからに他ならない。今に向き合う本気度が仲間を呼び、夢に向かって全社一丸で突き進むときの足掛かりとなる。自社にこうした土壌を築くべきだ」(髙田氏)と声高に訴えます。
では、「今を生きる」を実践する上で大切な姿勢とは何か。髙田氏は「今を生きる」を貫き通してきた自身の経験をもとに、実践のための勘所を指摘します。「多くの人が過去の過ちを憂い、未来を危惧している。しかし、これらにとらわれるべきではない。本当にとらえるのは『今』だ。今やれば明日は必ず変わる。ここだけに集中すべきだ。2割や3割の力を注ぐのではなく、『今』に10割の力を注いでほしい。やるべきことに優先順位を設け、上位3つだけを全社員で取り組むのが望ましい」(髙田氏)と強調します。
さらに、今の自分や自社を俯瞰する視点も必要だと髙田氏は続けます。「自分や自社の取り組みが周囲からどう見られているか、どう評価されているのかといった客観的な視野を持つことが大切だ。いくら『今』だけ見ても、自分や自社のことだけを見ても成果にはつながらない。そもそも『何のための仕事なのか』を常に考えることが必要だ。自社のミッションを考えながら仕事に向き合う姿勢も大切である」(髙田氏)といいます。
思いついたアイデアや考えを実現する行動力も大切だと言います。「行動力なしに明日は変わらない。良い施策やアイデアをいくら考え出しても実践しなければ意味はない。もっとも、実践すれば失敗もあるだろう。しかし、私に言わせれば失敗ではない。ただうまくいかなかっただけだ。うまくいかなかったことを試練と受け止め、多くの試練を積み上げられれば成功を必ず手繰り寄せられる」(髙田氏)と、行動ありきの姿勢を聴衆に訴えます。一方で、「成功したと受け止めるのは決して望ましくない。成功と思った瞬間、成長は止まる。成長意欲を常に抱き、今を確実に歩み続けて欲しい」(髙田氏)と述べました。
同氏は講演中、「一生懸命」や「本気」というメッセージを聴衆に何度も発信。情熱をどれだけ持って今と向き合えるかが大事であると訴え続けました。一方、時折ジョークを挟んで会場の笑いを誘うなど、終始和やかな50分間の講演でした。
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