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KDDIがツールの研修に一泊二日の合宿を開催、資格取得で学びを可視化する徹底ぶり


ITツールをせっかく導入したのに使われない…。IT導入による業務効率化を目指したにも関わらず、十分な効果を上げられずにいる企業は少なくありません。そんな中、導入したツールの理解度を高め、徹底的に使い倒そうと取り組む企業があります。その1社がKDDIです。ITを活用するために同社が打ち出す方策とは。同社の取り組みを紹介します。

気軽に質問できる合宿の雰囲気がツールの理解度を高める

業務にもっとも精通する現場自らがITを活用することを意味する「デジタルの民主化」。ビジネススピードが加速する中、情報システム部門に依存しないIT運用体制を打ち出す企業が増えています。プログラミングの知識なしに業務システムを開発できるノーコードツールが台頭したことも、企業の「デジタルの民主化」を大きく後押ししています。

とはいえ、現場がITを使い倒さなければ意味がありません。ツールさえ導入すればよしと考える企業は今なお多く、運用による効果をきちんと検証しないケースが目立ちます。「デジタルの民主化」が叫ばれる一方、上辺だけの民主化にとどまる企業がにわかに増えているのが現状です。

では、現場がITを徹底的に使い倒すためには何が必要か。この問いと向き合い、愚直な対策を打ち出す企業があります。それがKDDIです。同社はツールの活用方法を学ぶとともに活用コミュニティ形成のために1泊2日の合宿を実施。社員が2日間かけてツールを徹底的に学ぶ研修体制を打ち出します。なお、同社では現場の活用を想定したノーコードツール「SmartDB (スマートデービー)」を2021年に導入。部署や業務内容に応じたワークフローシステムなどを容易に開発できる環境を整備し、現場主導の業務改善と効率化を進めます。こうした利用環境をさらに促進するため、2024年より「SmartDB」専用の研修合宿を開始しました。

2025年2月12日13日には、第3回となる合宿を開催。会場となった東京都多摩市にある同社研修施設「LINK FOREST」には約20名の社員が参加し、「SmartDB」の使い方や操作方法を学びました。合宿参加者は自ら挙手して希望した社員のみ。「上司が合宿への参加を指示することなく、希望者のみで合宿を開催している。SmartDBを導入するコーポレート統括本部の社員約700名中、100名以上がすでに合宿を経験している」(KDDI コーポレート統括本部 コーポレートシェアード本部 コーポレートDX推進部 エキスパート 博士 横山拓郎氏)といい、社員のツール活用への意識の高さが窺えます。現在までにコーポレート統括本部のみで330以上の業務アプリを「SmartDB」で開発しているといいます。

写真:合宿の会場となった「LINK FOREST」。KDDIの研修施設として使われるほか、約170人が宿泊できる一般向けホテルとしても利用されている

合宿では、参加者一人ひとりに「SmartDB」が利用可能なPCを用意。参加者は講師が説明するスライドを見つつ、各自も実際に手を動かしながら「SmartDB」の使い方を学んでいました。特定のデータを探して「SmartDB」に読み込ませたり、課題を解決する業務システムをゼロから開発したりするなど、具体的な業務を想定した研修カリキュラムを受講していました。

合宿には「SmartDB」を提供するドリーム・アーツのスタッフも応援に駆け付け、参加者をサポートします。もっとも、講師を務めるのはKDDIの社員。「SmartDB」の導入や運用を主導するコーポレートDX推進部がスライドを用意するなど、自社で考案した独自のカリキュラムで研修を進めます。「どのような研修内容にすべきか手探りで開始した。過去のスライドをブラッシュアップするなどして、研修の質を高めている。普段の業務で課題に直面したとき、SmartDBを使ってどう解決するのかを自ら導き出せるスキルや思考の習得に主眼を置く」と、講師を務めたKDDI コーポレート統括本部 コーポレートシェアード本部 コーポレートDX推進部 システム企画グループ 新井ひとみ氏は述べます。

写真左:KDDI コーポレート統括本部 コーポレートシェアード本部 コーポレートDX推進部 エキスパート 博士 横山拓郎氏
写真右: KDDI コーポレート統括本部 コーポレートシェアード本部 コーポレートDX推進部 システム企画グループ  新井ひとみ氏
写真:研修中はドリーム・アーツのスタッフがフォロー。参加者からの質問に対し、補足して回答する場面も見られた

なお、1泊2日の合宿を実施する利点について横山氏は、「分からないことを質問するのが当たり前の環境がツールの理解を深める。周囲には当社やドリーム・アーツのスタッフがおり、2日間を通じていつでも気軽に質問できるのも合宿の利点だ。業務の合間に数時間程度の研修を実施しても理解を十分深められないだろう。2日間のカリキュラムを全8回などに分割すれば、途中から出席しなくなる参加者も増えるだろう。業務からいったん離れ、いつものオフィスとは違う場所でSmartDBを学ぶ時間を1日単位で確保することが、研修効果を最大化する」と強調しました。

もっとも、合宿で学んだことがどれだけ参加者の身になっているかは不透明。そこでKDDIでは学びを可視化するため、全参加者に「SmartDB」のスキルや習熟度を判定する資格の受験を課しています。合宿2日目の午後に試験対策となる直前講座を2時間実施。その後、全参加者が1時間の試験に臨むようにしています。KDDIは参加者の資格取得を通して、参加者の理解度が一定以上なのかを把握できるようにします。ちなみに前回(第2回)の合宿時に実施した試験では、「参加者の8割以上が合格した。2日間かけて使い方を集中的に習得したからこその結果と受け止めている」(横山氏)と評価。これまでに約130名が資格を取得し、業務に役立てているといいます。

今後は社員のIT活用への意欲をさらに引き出す仕組みづくりも視野に入れます。「当社ではSmattDBのほかに、RPAやBI、Excelの関数を学ぶ勉強会などを随時開催している。希望すればこれらの勉強会に参加でき、これまで多くの社員がツールの使い方を自主的に学んできた。こうした社員の意欲を育む風土を今後も醸成し続けなければならない。そのためには例えば、勉強会に参加する社員をきちんと評価する仕組みも検討しなければならない。勉強会の実施状況や効果を経営層と共有し、会社として社員のモチベーションや向上心を損なわない制度づくりにも目を向けるべきと考える」(横山氏)と述べました。

デジタルの民主化の成否を見極める基準と成り得る資格認定制度「SCS」

では、KDDIが合宿参加者に課した試験とはどのようなものか。資格を取得することで「デジタルの民主化」を担う人材と本当に呼べるようになるのか…。

今回の合宿参加者が受験したのは、「SmartDB Certified Specialist(SCS)」という資格。「SmartDB」を提供するドリーム・アーツが2023年より実施する資格認定制度で、「SmartDB」に関する専門知識や技術を有していることをドリーム・アーツが証明します。「SCSは『デジタルの民主化』を推進、実現できる人材であることを証明する資格と位置付ける。これまで多くの企業が社員のSCS取得に取り組み、結果として『デジタルの民主化』を成し遂げている。現場主導の業務改革の成否を見極める基準の1つとして、SCSという制度が受け入れられつつある」」(ドリーム・アーツマーケティング本部 EC2グループ マネージャー 當間鈴奈氏)と、SCSの意義を強調します。

ドリーム・アーツでは2023年2月から制度を開始し、2024年12月時点の資格取得者は1735名。KDDIのほか、大和ハウスグループ、積水化成品工業、日本航空などの大企業を中心に資格取得者は増えているといいます。「資格取得者の7割をユーザー企業の社員が占めているのが特徴だ。この割合は、SCSが現場に根付いた資格であることを裏付けている。一般的な認定資格の場合、ツールの販売を代行するパートナー企業の社員が取得するケースが少なくない。SCSはこうした認定資格と一線を画す。デジタル人材を育成したいと考える企業はもとより、社内の業務改革の意識醸成の手段としてSCSの取得を検討する企業は増えている」(當間氏)と述べます。

もともとはユーザー企業の声を参考に制度を立ち上げたといいます。「現場がITを使いこなそうと頑張っているものの、その取り組みを評価する仕組みや基準を持たない企業が多かった。さらに、ツールの使い方を段階的に教えようとしても、何をどこまで教えるべきか分からない企業も少なくなかった。こうした課題を解消する手段として資格制度を設けてほしいという声が次第に増えていったのが、制度立ち上げのきっかけである」(ドリーム・アーツ セールス統括本部 CSXグループ マネージャー 小坂麻里子氏)といいます。さらに最近は、「DX推進の機運が高まる中、中期経営計画にDX人材の輩出を明示する企業が増えた。こうした取り組みの進捗を可視化する手段としてもSCSは使われている」(小坂氏)と続けます。

なおSCSには、「SmartDB」の基本を習得し業務アプリが開発できることを認定する「BRONZE」、応用機能により高度な業務アプリが開発できる「SILVER」。「デジタルの民主化」の推進に関する知識を有する「SAPPHIRE」、他システムとの連携に関する知識を有する「GOLD」。さらに「デジタルの民主化」を主導した実績がある「DIAMOND」、他システムとの連携で効果を創出した実績がある「PLATINUM」の6グレードを用意します。

出題範囲や回答方式、合格基準、1ヵ月の受験可能回数などがグレードごとに異なり、「「BRONZE」から「PLATINUM」にかけて取得の難度が上がります。今回のKDDIが実施した合宿は「BRONZE」の取得を前提としたもので、「BRONZE」を取得済の社員向けに「SILVER」を取得するための研修も実施しているといいます。

写真:「SCS」の認定グレードの種類

大企業を中心に人的資本経営に取り組む動きが加速する中、SCSの役割はさらに高まると當間氏は指摘します。「社員のスキルや経歴を可視化し、適正な部門に配置するタレントマネジメントのニーズが高まっている。一方、社員の能力を最大限引き出す人的資本経営では、能力を定量的に見極める仕組みも求められるようになっている。このとき、社員の能力を表す指標の1つとして使われるのがSCSだ。企業にとっては人的資本経営を確立する手段として、社員にとってはモチベーションアップやキャリア形成の手段として、SCSの重要性はさらに増すだろう」と述べます。SCSへの関心が高まる中、ドリーム・アーツでは2025年度中にSCS資格取得者を3000名まで増やす目標を掲げます。

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