運送・輸送業界でのWarehouse Management System(WMS)導入に関する調査結果をもとに、失敗の原因や担当者の経験談を深掘りします。現場との連携不足がもたらす影響とは?
近年、デジタル化の波が運送・輸送業界を襲っています。特に、Warehouse Management System(WMS)の導入が推進され、業務の効率化や在庫管理の最適化が期待されています。しかし、実際には多くの運送業者がWMSの導入に失敗しているのが現状です。本記事では、株式会社ダイアログによる実態調査をもとに、WMS導入失敗の原因やその影響について探ります。
株式会社ダイアログは、WMS選定の失敗経験を持つ運送・輸送業の会社員111名を対象に調査を実施しました。この調査から、主な失敗要因やそれに伴うリスクが明らかになりました。
調査結果によると、「取引先や現場との連携が取れていなかった」という回答が39.6%に達し、最も多い結果となりました(図1)。次いで、「現場のニーズと機能が合っていなかった」(37.8%)、「WMSの機能が自社のサービスに合っていなかった」(32.4%)という意見が挙げられました。
調査結果から、WMS導入に失敗した要因として最も多かったのは「現場側の意見を取り入れていなかった」と「既存システムとの相性を考慮できていなかった」という意見です(図2)。これらは共に42.3%という高い割合を示しています。さらには、情報収集が不足していたことが41.4%で続きました。これらの要因は、WMS導入が「机上の空論」となり、実際の業務に適応できていない現実を浮き彫りにしています。
特に、「現場側の意見を取り入れていなかった」という点は、導入時に業務の実情を無視してシステムを選定してしまった結果といえるでしょう。現場のニーズを把握し、システムを柔軟にカスタマイズすることが求められます。
WMSの導入に失敗した企業では、様々な問題が発生しています。調査によると、最も多い問題は「出荷ミスや遅延」が49.5%を占め、次いで「業務フローの複雑化」が37.8%、さらに「業務効率の低下」が36.0%と続きました(図3)。これらの問題は、顧客満足度の低下やコスト増に直結し、さらに企業全体の信頼性にも影響を与える可能性があります。
WMS導入の失敗は単なるITシステムの問題ではなく、業務全体に悪影響を及ぼす分野横断的な課題であることを企業は認識しなければなりません。興味深いことに、調査ではWMS選定の失敗を感じた後でも、54.1%の企業が「そのまま使い続けた」と回答しました(図4)。
この選択の裏には、リプレイスにかかる高いコストや手間を避けたいという意図があることが伺えます。「リプレイスには高い費用がかかるため」という理由でも65.0%が同じシステムを使用する現状に、多くの担当者が悩んでいることがわかります(図5)。
運送・輸送業界においてWMS導入は効率化の鍵とされていますが、実際には多くの企業が失敗を経験しています。その主な理由は現場との連携不足や既存システムとの不整合にあります。導入時には現場の意見を大切にし、ニーズに合ったシステム選定が求められます。
今回の調査結果は、WMS選定の際の注意すべきポイントを示しており、失敗から学ぶことがどれだけ重要かを再確認させてくれます。企業は柔軟なシステムの選定とカスタマイズを行うことで、より良いWMSの活用につなげていく必要があるでしょう。