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小売業界の商品企画開発に特化したPLMソリューション。消費財の特性踏まえた商品設計や開発のデジタル化が小売DXを加速させる起爆剤に


商品の設計や資材調達、開発などの業務を一気通貫で支援するPLMソリューションを提供するセントリックソフトウエア。海外では当たり前になりつつある消費財向けPLMの必要性とソリューションの価値を国内で訴求し続けています。海外で豊富な実績を持つ同社から見た日本企業の課題とは。PLMソリューション導入で得られる利点とは。日本の小売企業が成長のために必要な施策とは。同社コンサルティング部門 責任者のキャリー・パン氏と、ソリューション部 統括マネージャーのテレサ・ジャン氏に話を聞きました。(聞き手:デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長 鈴木康弘氏)

日本企業特有の慎重なIT投資への姿勢、根深いDX人材不足や現場教育の欠如を憂慮

――セントリックソフトウエアの事業内容を教えてください。

パン:当社はPLM(プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)ソリューションである「Centric PLM」を開発、提供する企業です。PLMと聞くと一般的には製造業向けと思われがちですが、当社のソリューションは消費財を取り扱うメーカーのほか、PB(プライベートブランド)を展開する小売企業などの利用を想定しているのが特徴です。小売企業が仕入れる商品はもちろん、OEMやODM、家具、雑貨、化粧品、食品、衣料品、家電などを扱う企業の商品企画・開発・調達業務を支援します。世界50ヵ国以上で850以上の企業が導入し、1万8500以上のブランドが当社のソリューションを活用しています。

ジャン:当社は米シリコンバレーで創業しましたが、創業メンバーは製造業向けのPLMソリューション開発に携わってきた者です。主に自動車や旅客機などの設計書や部品表、開発ワークフローなどを管理するPLMソリューションに長く関わってきました。しかし、消費財を取り扱う業界に目を向けると、当時は同様のソリューションがありませんでした。消費財は自動車や旅客機と違って企画から製造、廃棄までのサイクルが早いのが特徴で、日々変化する消費者ニーズに追随する商品を短サイクルで効率的に開発することも求められます。そこで、消費財の企画や開発全体を支援するPLMソリューションに価値を見出し、消費財を取り扱う企業向けに特化した「Centric PLM」の開発に踏み切ったのです。当初はアパレル企業向けにソリューションを展開していましたが、現在は消費財を扱うあらゆる企業にソリューションの価値を提供しています。

――キャリーさんはどういった経緯でセントリックソフトウエアに参画したのでしょうか。これまでの経歴を教えてください。

パン:私は中国の大学でコンピュータサイエンスを専攻し、その後、日本でスクラッチ開発のプログラムを書くエンジニアとして働き始めました。それからコンサルティング会社に転職し、コンサルタントとして生産管理系システムの構築を支援するプロジェクトに多数関わりました。その後、PLM業界に入り、現在はセントリックソフトウエアでコンサルティング部門を統括しています。

――テレサさんの経歴も教えてください。

ジャン:私は米国の大学で経済学を専攻したのち、日本に来て就職しました。最初に入社したのはSAPジャパンで、プリセールスコンサルタントとしてソリューション提案に従事しました。主にサプライチェーン計画や調達業務の支援に関わっていました。その後、大手小売企業のIT部門で業務改革などのプロジェクトを経験し、セントリックソフトウエアに参画しました。現在はプリセールス部門を統括しています。

セントリックソフトウエア コンサルティング部門 責任者のキャリー・パン氏(写真左)と、ソリューション部 統括マネージャーのテレサ・ジャン氏

――数多くの海外企業を見てきた2人から見ると、日本企業のDXが進まない理由はどんな点にあると考えますか。

パン:日本企業が抱える課題は主に3つです。1つは、これまで人海戦術や現場の踏ん張りで仕事を乗り切ったことが成功体験となり、改革することに意味を見出せない、もしくは改革しても効果が薄いと考えている点です。経営者の意識から変えなければこうした課題は解消できないのではないでしょうか。

2つめは、DXに取り組みたいものの、何をすべきか分からない、どう変えればいいのか分からない点です。DXに取り組むプロセスを描いたり、効果を示したりするスキルを持ったリーダーが社内に少ないことに起因すると考えます。日本では海外と比べ、CIOやCTOといったポジションで活躍できる人材が少ないのも理由ではないでしょうか。その結果、多くの企業がITベンダー任せになり、自分で考えないし、ITベンダーからの提案をただ待つだけの状態になっていると感じます。

3つめは、経営層がDXの必要性を認識するものの現場が動かない点です。現場は目の前の業務で手一杯の状況であり、広い視野で新たな施策に取り組む余裕がないのが原因と考えられます。

ジャン:古いITシステムを使い続けているのも、DXを進められずにいる理由の1つです。何十年前に開発したシステムでは、機能の拡張や更新をしない限り、業務改革で新たな事業やプロセスを生み出してもそれらを支えるシステムとして活用するのは難しいでしょう。ITに対し、継続的に投資する文化がない点も課題ではないでしょうか。

――ITシステムは本来、「5年で償却」などのサイクルを想定して導入・運用しているはず。にもかかわらず、経営者の中には「問題なく稼働しているシステムをなぜリプレースするのか」と意義を唱える人が少なくありません。その結果、従来のシステムを使い続ける企業が多くなってしまったように感じます。

日本企業のDXの現状について、自身の考察を交えながら対談したデジタルシフトウェーブ 代表取締役社長の鈴木康弘氏

ジャン:海外では継続的なIT投資は常識で、日本企業とは考え方の大きく異なる点です。日本の経営者は「ITに投資しなければ」という意識が圧倒的に欠如しています。海外では、ITを駆使しなければ業務改革は成しえないと考えられています。この意識の差が投資に対する考え方に差を生む要因となっています。海外ではデータを日々の業務で活用したり、意思決定に役立てたりという考え方や、データアナリストという職種も当たり前に根付いています。こうした海外のような環境が定着していない点も日本と海外の大きな差ではないでしょうか。

海外の顧客と話をすると、IT投資そのものに何ら疑問を抱きません。IT投資するなら、どんなシステムをどう使うのかといった議論になるのが一般的です。しかし日本企業の中には、「エクセルと違って何ができる?」というレベルの会話から話を切り出すケースさえあります。なぜITが必要なのかを説かなければ話は進まないのです。日本ならではのITに対する考え方が、多くの企業で根深く残っているのを痛感します。

――日本企業の場合、経営者がいろいろな役割を担いすぎているのかもしれません。経営や財務、ITに至るまであらゆる業務に精通しなければという意識が根底にあるのかもしれません。しかし、海外企業の場合、経営者は経営、財務はCFO、ITはCIOといった具合に役割分担しています。こうした体制に切り替えない限り、DXはもとより業務改革も成しえないのと感じます。

パン:経営層や組織全体の意識改革が必要であるほか、現場の教育にも注力すべきではないでしょうか。現場のマインドセットを変えない限り、DXは成功しません。特に多くの人が変化やチャレンジを恐れているようにすら感じます。こうした考えを捨て去り、挑戦する姿勢を育み、励ます環境が必要です。

ジャン:国内・海外の他社の取り組みをもっと参考することも大事だと思います。ただし、他者を真似すべきと言っているわけではありません。自社と他社の類似点、異なる点は何かを分析し、自社だったらどう取り組めば成功できるのか模索すべきです。海外企業の経営者の多くが、こうした積極的な姿勢を示しています。

特にアジア地域の企業では成長への意欲が高く、経営者同士が集まり、他社を見学したり勉強会を頻繁に開催したりしています。他社はどんなことに取り組んでいるのかを常に探っているのです。知識や勉強に対する高い意欲も感じられます。こうした姿勢を学ぶだけでも、日本企業にとっては意味があるのではないでしょうか。

IT部門の役割も変わるべきと考えます。日本企業のIT部門は、システムを保守するだけのコストセンターであるケースが少なくありません。しかしIT部門は企業の成長を担う戦略的な組織であるべきです。つまり、利益を生み出すプロフィットセンターでなければならないのです。システムを使った業務改革を全面に立って主導し、IT部門の業務への貢献を高めるとともにデジタルの重要性を社内に理解させることが大切です。

消費財のMD業務、商品設計や原価管理、品揃えなどの適正化を支援

――御社のソリューションについてお聞きします。「Centric PLM」は消費財を扱う企業の用途に特化しているとのこと。具体的にどんな業務向けの機能を備えているのかを教えてください。

ジャン:企業のマーチャンダイジングにフォーカスした管理機能を備えているのが特徴です。具体的には、消費者のニーズに合わせてどんな商品を開発すべきか、どんな材料を使って製造すべきか、どの仕入先からどのくらいのコストで材料と製品を調達すべきかなどを管理する機能を備えます。さらに、生産管理や調達、マーケティング、商品企画、品質管理などの各部門が管理するデータを一元化し、商品の企画やコンセプトから終売するまでに携わる部署を一気通貫で支援します。もちろんデータを活用しやすくするため、必要なプロセス構築やワークフロー作成などの機能も内包します。

――PLMソリューションを導入しない企業はこれまで、これらの業務向けに別々のシステムを導入していたのでしょうか。

ジャン:その通りです。関わる部署が多いため、調達部門やR&D部門、生産部門、マーケティング部門などがそれぞれ必要なシステムを導入するケースが少なくありませんでした。例えば生産部門なら原材料を管理するデータベースを構築し、食品を扱う企業のR&D部門ならレシピを管理するデータベースを構築するといった具合です。部署ごとの要件を満たすシステムが乱立すると他部署と連携しにくく、データの利便性も損なわれてしまいます。こうした縦割りのシステムが持つ課題を解消するのが「Centric PLM」です。

――消費財を扱う日本企業が「Centric PLM」を導入するとどんな効果を見込めるのかを教えてください。

パン:さまざまな効果を見込めますが、例えば、集約したデータをもとに消費者ニーズを満たす商品を設計、開発しやすくなります。過去の販売実績はもちろん、コンセプトや企画にまつわる文書や画像、過去の社内関係者と取引先とのやり取りや変更履歴、外部の市場トレンド情報などの情報を集約することで、必要なデータを参考しながら理想的な商品像を膨らますことが可能です。こうした商品の開発体制を構築すれば、販売する商品の品揃えを最適化することも可能です。無駄な商品を開発せずに済むため、余剰在庫解消のためのマークダウンの発生を防ぎ、収益率も高められるようになります。商品の品質向上による消費者の満足度向上なども当然期待できるわけです。

業務を標準化できるのも利点の1つです。これまでの商品の企画やコンセプトづくりなどの管理業務には適したツールがなく、業務が属人的になりがちでした。「Centric PLM」を使えば、誰でもどこでも同じ作業をできるようになります。つまり、作業内容を高いレベルで均一化することで商品の品質が不安定になるのを防ぎます。属人的な業務を排除して標準化を定着すれば、膨らみ続けるIT投資の抑止にもなります。

ジャン:生産性を高め、より付加価値の高い業務に時間を割けられるようになるのも利点です。具体的には、エクセルファイルをバケツリレーするような業務は一切なくなります。さらに必要な情報を探したり、問い合わせ対応したり、資料を作ったりするために費やした時間も削減します。こうして空いた時間を、消費者に寄り添った商品づくりに費やせるようになるのです。ある会社では90もの管理用エクセルファイルをPLM導入によりなくすことができました。

――「Centric PLM」を導入にはどのくらいの期間がかかるのでしょうか。

パン:企業規模によりますが、6ヵ月から8ヵ月で本番稼働するケースが一般的です。ただし、企業規模の小さい企業への導入なら、数週間から数ヶ月で稼働するケースもあります。

――どんな企業が「Centric PLM」を導入しているのかを教えてください。

ジャン:アパレル企業が導入効果を高める一方、最近は小売企業の導入が増えています。直近ではドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)やイオントップバリュといったPBを展開する企業が相次ぎ導入しています。PPIHはPBを扱うオリジナルブランド事業に注力するものの、商品企画や調達などの業務は製品カテゴリーによりバラバラでした。そこで、それらの業務を効率化する手段として「Centric PLM」導入に踏み切りました。1つひとつの業務をゼロから考えるよりも、「Centric PLM」を導入する方が圧倒的に早く体制を構築できると判断したのです。

――PBは今後、小売企業だけではなく、さまざまな業界の企業に参入する余地があります。「Centric PLM」導入で効果を上げる企業もさらに増えることが見込まれます。

ジャン:PBが市場に多く出回るようになると、今後はPBの差異化戦略が重視されるようになるでしょう。このとき大切なのが、ブランドイメージを棄損しない商品づくりです。つまり、小売企業が打ち出すブランドのイメージを踏襲する商品開発力が求められるようになるのです。商品の仕入れが主業務だった小売企業であっても、ブランドイメージを前提にコンセプトを打ち出したり企画を立案したりしなければなりません。こうしたときに強みを発揮するのが「Centric PLM」です。

パン:例えばPBのパッケージを考える場合、ブランドイメージを踏まえつつ、消費者ニーズや調達コストなども加味しなければなりません。単にデザインするだけでは差異化できませんし、ブランドイメージとの結びつきも薄くなりかねません。「Centric PLM」を使えば設計や調達など、最新で正確な商品企画情報をチーム全体で共有し、どんなコンセプトで、どんな意図を汲んだ商品なのかなどの経緯を遡って把握することができます。パッケージを制作するデザイナーは、商品のコンセプトづくりに使った資料に目を通したうえでパッケージを制作できるようになるわけです。

ジャン:海外の小売企業の場合、自社に製品開発者を抱えるケースも見られます。小売企業であってもPBの品質管理を内製化しようとしているのです。つまり、小売企業でありながら、モノづくりのノウハウを自社で蓄積していこうというのです。こうしたノウハウを貯め、自社主導でPBを開発できるようにする手段として「Centric PLM」を導入する企業もあります。

2024年9月19日には都内で年次カンファレンスを開催
オンワード樫山とyutoriがCentric導入事例を発表

――セントリックソフトウエアとして今後の展開やソリューションの機能拡張などの予定があれば教えてください。

ジャン:「Centric PLM」は現在、商品の設計や開発に主眼を置いたデータ管理を強みにしています。しかし今後、売上計画や販売計画といった販売前から販売期中の計画業務を管理するソリューションを日本で展開していく予定です。具体的には過去の販売実績や、外部市場トレンドデータ、気象データなどを使った需要予測に基づき、精度の高い商品販売計画や仕入計画の立案を実現できるようにします。

パン:さらに多くの業界に導入してもらえるよう営業活動も強化していく考えです。これまでアパレルを中心に導入されていましたが、今後は食品や化粧品を扱う企業への導入を図っていきたいと考えます。さらに、ライフスタイルを提案したり関連商品を展開したりする企業も「Centric PLM」の価値を存分に引き出せると考えています。「Centric PLM」はさまざまな消費財を管理できる柔軟性を備えているのが特徴です。こうした利点を訴求し、広い業界に対して価値を伝えられるようにしたいと思います。

なお、当社は顧客と一緒に成長することをゴールに掲げています。「Centric PLM」のロードマップには、顧客の声を存分に反映した開発計画が盛り込まれています。当社から顧客に提案するだけではなく、顧客からの提案を製品づくりに生かしているのが当社の強みです。今後も顧客との関係をさらに深め、双方がともに成長し続けられたらと思います。

ジャン:当社は年に一度、導入企業の経営者やIT部門の責任者が集まる交流会を開催しています。そこでは当社が今後、どんな分野に注力するのかを発表しています。ソリューションをどのように強化する計画なのかを説明する機会も設けています。さらに、参加者にアンケートを実施し、今後開発してほしい機能を投票してもらっています。そこで多くの票を集めた機能を優先的に開発するようにしています。それだけ顧客の声を大切にし、顧客に寄り添ったソリューション開発をしているとも言えます。

――交流会といえば、2024年9月19日に都内でカンファレンス「Centric Connect Tokyo 2024」を開催するとのこと。どんな内容になるのかを教えてください。

ジャン:「Centric Connect Tokyo 2024」では、小売業界のDX推進にフォーカスしたセッションを用意しています。もっとも、小売業向けのPLMについて十分理解していない人は多いと思います。そこでカンファレンスでは、「Centric PLM」の基礎から今後のビジョンまでの全体を俯瞰するプログラムを用意します。もし自社の現状とビジョンが大きく乖離していると感じたなら、最初に何から取り組めばよいのかの具体的な方策も明示します。「Centric PLM」を使うとどんな世界を描けるようになるのかを1日で体験できる内容となっています。

基調講演では、オンワードの樫山様とyutori様に「Centric PLM」の導入事例をお話しいただく予定です。「Centric PLM」導入時の課題やプロジェクトで苦労したこと、どんな手順で導入を進めるべきかのアドバイスなどもお話しいただく予定となっています。もちろん海外の先進的な事例も紹介します。AIを駆使してマーチャンダイジング業務をどう変えたのか、「Centric PLM」を使って業務をどのように刷新したのかの具体例も示します。鈴木さんにも特別講演として小売DXについて、お話しいただきますよね。どんな講演になるのか、今から楽しみにしています。

パン:カンファレンス当日、最後のセッションは17時前に終了する予定ですが、17時から懇親会も実施します。PLMに関心を持つ参加者同士で交流を図れるようにしています。PLM導入や運用などの課題を共有し、自社に役立つヒントや気づきを得られる貴重な機会になると思います。小売業界の未来を考察する場として、「Centric Connect Tokyo 2024」をご活用いただければ幸いです。皆様のご来場をお待ちしております。

日本企業や小売業界の課題など、さまざまなテーマで対談は進んだ

【カンファレンス概要】
カンファレンス名:Centric Connect Tokyo 2024
開催日時:2024年9月19日(木) 10時20分~16時40分(別途懇親会あり)
会場:九段会館 コンファレンス&バンケット302-茜(東京都千代田区九段南1-6-5 九段会館テラス3階)

※当日のセッションや参加申し込みは下記の公式サイトをご確認ください。

セントリックソフトウエア
https://www.centricsoftware.com/ja/

カンファレンス「Centric Connect Tokyo 2024」
https://www.centricsoftware.com/ja/events/centric-connect-tokyo-2024/

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