渋谷区は、教員が教育活動に専念できる環境を整備し、教育の質を高めることを目指す「校務DX計画」を推進しています。ICTの活用やデジタル化により業務負担を軽減し、効率的な校務運営を実現することで教員の働き方改革を進め、柔軟でやりがいのある職場環境を構築します。これにより教員は子どもとより多くの時間を持ち、一人ひとりの学びのペースや興味に応じた指導が可能になります。子どもたちに合った支援を通じて互いに学び合う活気ある教育環境が育まれ、教員もに学び成長する喜びを感じられる学校の実現を目指します。
現状として、渋谷区は令和5年度の文部科学省の校務DXチェックリストで全国的に高水準の655.5点を獲得しており、これまでの取り組みの成果が評価されています。具体的には、児童生徒および教員用に端末を1人1台配布し、LTE回線対応で「いつでもどこでも学べる」環境を整備しています。Microsoft 365を導入し、教員はBYODの利用も可能にしており、校務と授業の環境を1台の端末で完結できる体制を整えています。また、Microsoft Azureを基軸としたデータ利活用基盤を構築し、教育ダッシュボードを運用することで学習状況の把握と指導への活用を進めています。保護者連絡ツールの活用により欠席・遅刻連絡や保護者とのやり取りをデジタル化し、情報のやり取りを迅速化しています。テレワークも導入し、特定条件下で在宅勤務ができるようにし、勤怠管理システムを整備して柔軟な働き方を支援しています。さらに、渋谷区専用の安全な環境で教員用の生成AIシステムを構築し、校務に係る文書作成や教材づくりに役立てています。
一方で、解決すべき課題も明確になっています。現在、校務DXチェックリストにおいて押印文書の廃止、次世代型校務支援システムへの移行、文書のデジタル化拡大、教員への個人メールアドレス付与の四つが課題として挙げられており、渋谷区は令和7年度中に全項目を達成することを目標としています。このため、クラウド環境の活用を進め、次世代型校務支援システムの導入やネットワーク統合、汎用クラウドツールの活用を推進します。教員に個人メールアドレスを付与し、アカウント管理の自動化を進めることで登録負荷を低減し、データの管理と共有を効率化します。また高性能端末の導入により業務効率を向上させ、教員のより柔軟な働き方を支援します。
文書事務のデジタル完結を図るため、電子決裁システムの導入と規程の改定を行い押印を求める書類の廃止を進め、ペーパーレス化を推進します。青山キャンパスではアナログ電話の代替としてTeams電話を試験導入し、場所を問わず働けるロケーションフリーの環境を実現する取り組みも進めています。運用支援ではICT支援員の訪問数を増やし、端末などの運用管理業務を担うことで教員の負担を軽減します。生成AIについては渋谷区専用環境に構築した機能をさらに拡張し、文書作成や教材作りのさらなる効率化を図ることで教育の質向上につなげていきます。
渋谷区はこれらの施策を総合的に進めることで、教員の働き方改革を実現し、児童生徒一人ひとりに寄り添う教育環境の構築を目指しています。令和7年度中の全項目達成に向けて、段階的かつ実務に即した運用を進めていく方針です。
詳しくは「渋谷区役所」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部小松