人間医療と動物医療、なぜこんなに違うの?保険制度の大きな壁
私たちが病院を受診する際、通常は健康保険証を提示し、自己負担は医療費の1割から3割程度で済みます。これは、日本が「国民皆保険制度」という素晴らしい仕組みを持っているからです(例えば、米国ではこんな制度ありえません!)。
国民全員が何らかの公的医療保険に加入することで、医療費の一部を国や自治体、そして保険組合が負担し、誰もが安心して医療を受けられるようになっています。
しかし、動物医療には、残念ながらこの国民皆保険制度がありません。動物の医療費は、完全に自由診療であり、獣医師が設定した料金に対して、飼い主さんが全額を支払うことになります。これが、人間と比較してペットの診療費が「高い」と感じる最大の理由です。
「うちの子にも保険があれば…」と思う飼い主さんも多いでしょう。実際、近年は民間のペット保険もさらに増えてきており、その利用者は増えています。
ペット保険に加入していれば、契約内容に応じて診療費の一部(50%〜70%など)が保険から支払われるため、飼い主さんの経済的負担を軽減することができます。しかし、これはあくまで任意の民間保険であり、全てのペットが加入しているわけではありません。
加入していても、保険の適用範囲外の治療費や、保険会社が定める免責金額、年間補償額の上限などがあり、全額がカバーされるわけではありません。
このように、人間医療が公的な支援の上に成り立っているのに対し、動物医療は基本的に飼い主さんの自己負担に大きく依存しているため、一回の診療にかかる費用が大きく感じられるのは当然のことなのです。
「儲かっている」は誤解?動物病院の知られざる経営実態
「自由診療だから動物病院は儲かっているはず」というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、現実は必ずしもそうではありません。
動物病院の経営には、飼い主さんからは見えにくい多くのコストがかかっており、獣医師もまた、多額の投資と日々の努力によって病院を維持しています。
まず、開院・開業にかかる費用は莫大です。土地の購入や賃貸、建物の建設や内装工事、そして何よりも高額なのが医療機器の購入です。超音波診断装置、レントゲン撮影装置、手術器具、麻酔器、血液検査機器、そして近年ではCTやMRIといった高度な画像診断装置を導入する病院も増えています。
これらの機器は、一台数百万円から数億円もするものもあり、多くの獣医師が、開業のために金融機関から多額の借入をしています。これらの借入の返済は、病院経営の大きな負担となります。
次に、人件費をはじめ、薬剤費・消耗品費、光熱費、医療廃棄物処理費用、設備維持費・保守費用、感染症対策費などのランニングコストも決して少なくありません。
これらのコストを考えると、診察料や治療費が高くなるのは、病院を維持し、質の高い医療を提供するためにどうしても必要なことなのです。
獣医師が単に「儲けたい」と考えているわけではなく、医療の質を維持・向上させるために、これらの費用を捻出しているのが実情と言えます。
なぜ獣医として働き続けるのか?そこに獣医療の「やりがい」があるから
これほど多くの経済的負担や責任を背負いながらも、なぜ多くの獣医師は獣医療の現場で働き続けるのでしょうか。それは、”動物が好きで、動物とそのご家族を救い続けたい”という強い情熱と使命感を持っているからです。
獣医師という職業は、単に動物の病気を治すだけでなく、飼い主さんの心のケアも担う、非常にやりがいのある仕事です。愛犬や愛猫とそのご家族の健康を守ることこそが、獣医師にとって何物にも代えがたい喜びであり、この仕事を続ける原動力となっています。
もちろん、動物医療の世界も日々進化しています。新しい治療法や診断技術が次々と開発され、獣医師は常に最新の知識や技術を学び続ける必要があります。
学会への参加、専門書での勉強、実習など、自己投資も惜しみません。これらは全て、目の前の動物とその家族のために、より良い医療を提供したいという強い思いからくるものです。
まとめ
動物医療費が高いのは、国民皆保険制度がなく自由診療であるため、飼い主負担が大きいからです。その背景には、動物たちの命と健康を守るための、獣医療に携わる人々の献身的な努力と情熱があることをご理解いただけると幸いです。
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