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犬の食欲が止まらない時、どうしたらいい?判断の目安から病気の可能性まで【現役獣医が解説】


犬の食欲はその健康状態を知る手がかりとなります。食事を完食するか、食べるスピード、食べ物を催促するかなどが食欲の指標です。食事量を適切に管理し、普段と異なる様子があれば病気の兆候を疑いましょう。食欲が旺盛過ぎても問題があります。消化機能を超える食事は下痢や嘔吐につながり、肥満も懸念されます。また、異常に食欲が増した場合、糖尿病や副腎皮質機能亢進症といった疾患が原因の可能性があるため、定期検診や専門家のアドバイスが重要です。普段から犬の食欲を観察する習慣をつけ、健康管理に役立てましょう。

犬の食欲って何で判断するの?

食事中の犬

動物病院を受診する際に、「食欲はありますか?いかがですか?」という質問をされることが多いと思います。

この質問からもわかるように、食欲の有無や食べるスピードは健康状態に大きく関係します。言葉の話せない動物の普段との変化の有意義な指標となり得ます。

しかし、食欲って何で判断したらいいのかという疑問も同時に生じるかもしれません。普段からこんなことに気を付けてみてください。

ごはんを完食するかどうか

まず、ごはんを完食するかどうかということが大切です。

きちんと完食をするということはその子が必要な栄養を充分に摂取して、健康な体作りをすることにもつながります。

ただし、ごはんは適当な量を毎回与えていると、食欲の指標にならないと同時に太りすぎや栄養不良などにもつながる危険性があります。

パッケージやフードメーカーのサイトを見ると、体格によって、そのフードをどのくらいの量を食べるべきかという目安が表記されていることが一般的です。

ダイエットをしているかどうか、よく動いてカロリーを消費するタイプかなどによって、その目安から少し減らしたり増やしたりする必要がある可能性もあります。

しかし、かならず毎日決めた量を与えるようにしましょう。

ごはんが欲しいというアピール

ごはんの時間になると、様々な形で飼い主さんにアピールするわんちゃんも多いのではないでしょうか。

中には催促が毎日のルーティンになってしまって、しつけの面で何とかしなくてはと悩んでいる飼い主さんもいるでしょう。

普段ごはんや食べ物が欲しいというアピールがあるのにない場合、食欲がいつもよりないのかもしれません。

いつもと様子が違うなと感じた場合に、お気に入りのおやつなどの好物を見せてみて、食べたいという反応があるかどうかを見てみても良いでしょう。

何かを食べたいときに、おうちのわんちゃんはどのような行動をとるかということを把握しておくと、普段と比較しやすいです。

ごはんを食べるスピード

診察時に、よく見落としがちだとお話することが多いのが、ご飯を食べるスピードです。

一応完食をしたので食欲があるとみなしがちですが、普段より食べるスピードが遅かったり、食べ始めるまでに時間がかかる場合は食欲不振ととらえても良いでしょう。

スピードの変化に気付けると、体調悪化の早期発見につながることも多いです。

あまり普段気にしていないという飼い主さんも多いかもしれません。健康な時はどのくらいの時間で完食できるかということを把握しておくと安心です。

中には遊びながら食べたり、一日を通してダラダラ食べの習慣をなくした方が、食欲が全くなくなるという状態の前に気づくことができる可能性が高いです。

犬の食欲が旺盛だとどんな悪いことがあるの?

ゴミ箱を漁った犬

食欲がなくなると病気や体調不良になっている可能性があるということに結びつけやすいですが、食欲旺盛だと良いことなのでは?と思う飼い主さんもいるでしょう。

実は食欲の旺盛さが、健康に害を与える場合もあります。

消化機能に見合わない食欲による消化器トラブル

特に消化器官が未熟なわんちゃんや、消化機能が低下している状態の時に起こりやすいトラブルです。

食欲の状態と消化機能の状態が見合わない場合、食べたがるものを食べたいままに与えると、下痢や嘔吐につながる場合があります。

食欲が旺盛であっても、消化機能の状態によっては、食餌量を制限したり、療法食などの消化にいいものを与えるなどのフードの質の見直しが必要なケースもあります。

もし疾患によって食欲が亢進してしまっているのであれば、消化器により負担がかかってしまうことが考えられるため、ケアする必要があります。

肥満

体格や運動する程度、年齢などによって一日に必要とされる熱量は決まっています。

摂取した熱量と消費する熱量が同じくらいでなければどんどん痩せてしまったり、どんどん太ってしまうことがあります。

食欲のままに与えてしまうとどんどん肥満になり、肥満から起こる二次的な問題になる場合があります。

問題として、例えば関節への負担や糖尿病、気管の圧迫による呼吸困難などが挙げられるでしょう。

健康的に過ごすために、適切な体形でいることはとても大切です。

ごみ箱あさりなどによる誤食

食欲が亢進して、飼い主さんが食事量を制御していると、どうしても食べたいという欲からごみ箱やキッチンの引き出しなどを漁ってしまう場合があります。

わんちゃんが食べてはいけないものを誤食してしまって中毒を起こしたり食べてよいものだったとしても、食べ過ぎて胃拡張を起こしたり、消化不良を起こす危険性があるため、注意が必要です。

食べ物への執着がある子の場合、わずかなチャンスがあれば必死で食べ物をとろうとして、引き出しを開けてしまったり、ごみ箱の蓋を開けてしまうなどのまさかのケースもあり得ます。

食欲旺盛な子の場合、背の高いゲートによるキッチンへの行き来の遮断や、引き出しのロックなどのアイテムを使って工夫することをおすすめします。

犬の食欲が亢進したらどんな健康の問題を疑う?

ご飯を食べたそうな犬

普段よりも最近食欲が旺盛でどうしたんだろう?と思うこともあるかもしれません。

食欲が旺盛なことは良いことですが、病気によって旺盛になってしまうこともあります。

ではどんな病気が疑われるのでしょうか。

糖尿病

致命的なトラブルにつながり得るのが糖尿病です。

食欲は亢進するもののどんどん痩せていくのが特徴的です。

糖尿病はインスリンというホルモンの機能異常によって糖代謝が行われなくなる病気です。

食欲は増進しますが、糖を代謝するホルモンが機能しないため、どんどん痩せていきます。

最終的にはケトアシドーシスと呼ばれる状態に陥って死に至る危険性が高まります。

ケトアシドーシスとは、細胞の栄養源である糖が正常に代謝されないために、脂肪をエネルギー源として採用するようになり、その産物であるケトンが蓄積することで起こる状態を示します。

定期的な血液検査、飲水量の増加や食欲の増加、体重減少などで早期に発見することが大切です。

副腎皮質機能亢進症

加齢とともに起こりやすい内分泌疾患です。

副腎皮質と呼ばれる器官から分泌されるホルモンの機能亢進が起こる病気で、脱毛や感染の起こりやすさなどのトラブルにつながりやすい傾向があり、注意が必要です。

食欲亢進、多飲多尿、体形の変化、脱毛などで気付くケースが多いでしょう。

短期間で致命的な状態になってしまうことは少ないですが、感染症などの二次的なトラブルの起こりやすさなどにつながるため、最終的に致命的な状況に陥ってしまう危険性もあります。

また、異常な食欲亢進により誤食を行ない、腸閉塞にいたるなどの致命的なトラブルにつながる危険性もあるので注意が必要です。

早期に発見できるよう、定期的な健康診断や、食欲の変化などに気づいたらかかりつけの先生に相談するなど心がけましょう。

まとめ

ご飯を欲しがる犬

食欲があることは健康のためにも大切なことですが、旺盛過ぎてしまうとトラブルの原因にもなり、実はその旺盛さが病的なものである可能性もあります。

普段からおうちのわんちゃんの食欲がどの程度なのかということを把握し、健康管理のバロメーターにできるよう、観察する習慣をつけましょう。

そのためにも、適切な食事量や食事の習慣をつけて、条件を一定にすることも食欲を健康管理のための項目の一つにするために大切です。


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