人間とペットのワクチン接種へのためらいは関連しているという調査結果

ペットへのワクチン接種に関する新しい調査結果

注射を受けているジャックラッセルテリア

2023年春にアメリカで実施された飼い犬のワクチン接種に関するアンケート調査で、約半数の人がワクチンに対して何らかの懸念を抱いている傾向があるというショッキングな発表がありました。

「米国で愛犬へのワクチン接種をためらう人が増えているという調査結果」
https://wanchan.jp/column/detail/40236

この度、上記の調査とは別の研究機関によってペットへのワクチン接種についての調査が実施され、その結果が報告されました。

調査を行なったのはアメリカのテキサスA&M大学の公衆衛生の研究者です。この調査では自分自身がワクチン接種をためらう人が増えていることと、ペットに対するワクチン接種をためらうことが相互に関連しているのかどうかに焦点が当てられました。

注射を受けているネコ

この調査は2023年8月に、調査専門会社を通じてのオンラインアンケートによって行われました。調査範囲はアメリカ全域で、参加者は全部で3,958名でした。

調査では最初に犬、猫、またはその両方を飼っているかどうかが質問されました。犬を飼っていると答えた人は約2,000名、猫を飼っていると答えた人は約1,400名でした。

これら犬と猫の飼い主には、犬と猫それぞれ5種のワクチン接種状況が質問されました。犬は狂犬病、イヌパルボウイルス、ジステンパー、インフルエンザ、ライム病で、猫は狂犬病、ネコパルボウイルス、ネコヘルペスウイルス、クラミジア、ボルデテラです。

さらにリストアップされた各疾患のワクチン接種義務に対する支持の度合いについても質問されました。

ペットへのワクチンに関する質問に加えて、科学者への信頼度、子どもへのワクチン接種義務化への支持、政治的イデオロギー、宗教、動物病院以外のペットへの出費、犬が家庭外で他の犬と接触する頻度、人間用のワクチンの安全性や重要性についての認識に関する質問もありました。

狂犬病ワクチン接種のイラスト

回答を分析したところ、圧倒的多数の飼い主が犬と猫に狂犬病ワクチンを接種していました。猫では犬よりも接種している人の割合がやや低くなっていました。

その他のコアワクチンについては狂犬病よりも接種率はやや低いものの、以前として接種率は高く、コアワクチン以外では接種をためらう人がやや増えていました。全体的にワクチン接種義務化を支持する人が多いこともわかったそうです。

人間へのワクチンの重要性、有効性、安全性に対する認識は、その人がワクチン接種をためらうかどうかを予測する妥当な因子であることもわかりました。全体的には、人間用とペット用どちらもワクチンの安全性や有効性に対する信頼が示されていました。

自分自身のワクチン接種をためらう人は、ペットへのワクチン接種もためらう傾向があり、ペットのワクチンの必要性を支持する人は、人間のワクチンについても必要性を支持しており、人間とペットのワクチンへの態度は強く関連していることがわかりました。

この調査結果を見て当たり前だと感じられるかもしれませんが、かつて人間とペットのワクチンへの認識が調査されたことはなく、この2つに相関があると確認することは公衆衛生の観点から非常に重要です。

ワクチン接種をためらう人が増えればペットへのワクチン接種率も低下する可能性が高いため、行政、医師団体、獣医師団体などが適切な対策を立てる必要があります。この調査結果はそのためのエビデンスのひとつとなります。

注射を受けているボーダーコリー

アメリカでの、人のワクチンとペットのワクチンについての認識を調査したところ、これら2つに対する認識は強く関連していたという結果をご紹介しました。

今回の調査結果では、幸いなことに大多数の人がペットのワクチン接種を行なっていましたが、人間のワクチン接種をためらう人が増えていることは、ペットのワクチン接種をためらう人も増えることを意味しており、研究者は懸念を抱いています。

ワクチンで予防可能な病気が大流行することは誰にとっても何一つ良いことがありません。このような調査が実施されることからも、専門家の危機感が伺えます。

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